café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

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第2章 カフェから巡る四季

第145話 じゃがいもの種類、ありすぎ問題

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 本日も段ボールが届いたわけで。
 見なくてもわかる。祖母からだ。

 箱の中にはナイロン袋に分けて、3種類のじゃがいもが入っている。
 小さな紙には、『メークイン』『キタアカリ』『インカのめざめ』と書いてある。

 どれも白っぽく、唯一メークインが細長く大きいぐらい。
 キタアカリは少し黄色味がかって丸く、インカのめざめも黄色っぽいが、思っていたよりも粒が大きく見える。

「……お隣の農家さんからいただきました。みんなで食べてね。ばあばよりって、みんなで食べる、しかないよね、この量は……」

 お店で出すには心もとなく、1人で食べるのは多すぎるという中途半端な量だ。
 莉子はさっそくと集合をかける。


『じゃがいもが届きました。食べ比べしましょう。20時集合』


 莉子としては何で食べ比べをしようか考える時間となる。
 ポテトサラダ、コロッケ、にっころがし……

「へー、芋の甘い匂いするー」

 言いながら入ってきたのは巧だ。
 上着を脱ぎ、カウンターに腰をおろすと、

「ほんとだー。いい匂いだね。ね、じゃがいもの種類、あんまし知らないんだけど、巧わかる?」

 瑞樹が巧のとなりに腰を下ろす。

「芋なんて、芋だろ」

 そういうのは三井だ。

「芋の種類はかなりある。スーパーに行っていないのが丸わかりだな」

 最後に連藤が腰をおろし、4人、到着だ。

「みなさん、お疲れ様でした。さっそくですけど、今日は素材の味が楽しめる、素揚げ、で、食べ比べを」
「それ、フライドポテトっていうやつだろ」
「三井さん、さすが。そうとも言います」

 莉子がドイツのリースリングワインを取り出した。

「スッキリの白は、じゃがいもと合うと思いますので……」

 冷やしておいたリースリングはキリッとした酸味がある。
 じゃがいもに粒マスタードをつけて食べれば、間違いなく合う!
 という、莉子の経験則での見切り発車だ。

 が、しっかり、ウィンナーやベーコンのソテーはもちろん、ミモザサラダも準備済みだ。

 とはいっても今回のメインは『じゃがいも』。
 しっかり味を堪能してもらいたいところではある。

「3種類、揚げてあるので、どーぞ」

 莉子は3種盛りにしたフライドポテトの皿を4人の前にさしだした。
 つけるものは、塩、マスタード、粒マスタード、ケチャップ、マヨネーズと、多彩に用意してある。

「やっぱ、最初は塩っしょ」

 そういいながら食べ始めた巧だが、表情が固まる。

「……なにこれ。じゃがいもってこんなに違うの……」

 それに食いついたのは瑞樹だ。

「じゃあ、おれもー」

 瑞樹が食べ始めたのはメークインだ。

「……ねっとりしてる……? これはあんまし好きじゃないかも」
「へぇ。どーちがうよ」

 三井がつられて手を伸ばしたのはキタアカリだ。

「ちょっと甘みとホクホク感があるな……これはアリかも」

 連藤は話を聞きながらつまみあげたのはインカのめざめになる。

「……これは甘みが強いな。……でんぷんのホクホクした感じもある……ナッツの風味も感じる……インカかな」
「あなたはジャガイモソムリエですか」

 莉子がツッコミを入れるが、それぐらい的確な答えに驚き半分、白けが半分だ。

「これでもジャガイモは、こだわりたいからな」

 連藤の言葉もわかる。
 莉子も同じ気持ちだ。

 なぜなら、じゃがいものによって煮崩れの仕方が半端ない!

 よく、カレーにしよう! と煮たけれど、出来上がったらじゃがいもがない、という経験はないだろうか?
 莉子はある。
 何度となく、ある!

 初めの頃、値段でじゃがいもを購入していたのだ。
 だが、形が残るものと、そうじゃないものがあることがすぐに判明。
 何が違うのか。

 ──品種だ。

 それからだ。品種によって料理を変えたりするようになったのは……
 なにごとも経験で学ぶ、とはいえ、これほど料理に影響するものも少ないのでは? と莉子は思う。

 ちなみに、煮物に強いのはメークイン!
 男爵やキタアカリは煮崩れしやすいので注意が必要だ。ポテトサラダやコロッケなど、潰して使う料理が向いてる。
 インカのめざめは味が濃いので、蒸したり、それこそ油との相性がいいのでフライドポテトはとてもよく合う。

「みなさんは、どれが好きです?」

 莉子は揚げたてをサクサク食べながら聞いてみる。

「おれは、このねっとりした感じ。食べてる感あるじゃん。なめらかにのどにつまるかんじが、芋! って感じで」

 巧はメークインがお好みのようだ。

「こっちのほくほくしたの! あっさりがいいよね!」

 瑞樹が選んだのはキタアカリになる。

「オレはこのホクアマだわ。これなら、赤ワインにも合うし」
「俺もこっちだな。やっぱりインカは甘さと香りが違う」

 年長組が選んだのはインカのめざめになる。

 それぞれよくて、それぞれの好みが出るのは間違いない。

「じゃあ、莉子さんは?」

 巧の質問に、莉子は首をひねる。

「巧くんと同じ、喉に詰まる感でいうと、男爵が好みなんですよ。あーじゃがいも食べてるーって、喉つまる感じがして。でもフライドポテトだと、インカになるかなぁ。インカは芋だけで旨味があるので」

 それに食いついたのは連藤だ。

「男爵か……男爵もホクホク感はかなり高いからな……」
「そんなにホクホクなの? マジ?」

 興奮ぎみの巧に笑いながら、じゃがいもひとつで会話が盛り上がるのも珍しいと、そっと眺める莉子だった。
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