café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

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第2章 カフェから巡る四季

第140話 ビールには、塩鶏唐揚げ!

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 本日、意外とあたたかい。
 そのせいか、夜に来店した連藤と三井はぐったりしおれている。

「朝が寒く、昼が暑いと、こう体温調節がうまくいかん……」
「俺もよ。なんだろな、このダルさ。莉子、どうにかしてくれ」
「無理です。私もめっちゃだるいので」

 3人で大きくため息をつきつつ、明日の天気を調べれば、どんより曇りが1日つづくそう。

「もう自律神経がおかしくなります、こんなの! 私、好きなもの食べますから、付き合ってください」

 そういって2人の前に出されたのはビールだ。
 しかも軽めのビール缶である。
 すでに店は閉店となった後だが、まさか缶ビールが出てくるとは思ってもみなかった。

「はい、かんぱーい! 4%しかないんで、ごくごくいけていいんですよ、これー」

 莉子はうれしそうにビールを缶から直接飲み込み、すぐにカウンターで調理を始めていく。
 その手際の良さに笑いながら、三井と連藤は缶で乾杯だ。

 たしかに喉ごしもよく、ほどよい苦味のため、飲みやすい。
 さらに言えば、ご飯を食べながら飲むのにちょうどいい味だ。
 ビールを飲んでいると思えるし、アルコールを飲んでいるという実感もあるが、料理の味を邪魔しない。
 下手にマリアージュを考えるより、邪魔にならない飲み物である方が、気楽だし、なにより、なんでも食べられるのがいい。

「で、莉子さん、何を作ってるんだ?」

 連藤の声に、莉子は即答だ。

「ビールといえば、鶏の唐揚げでしょう。今日は塩味です」

 莉子は一口大に切った鶏もも肉に、酒、鶏ガラスープの素、塩、醤油、牡蠣ソースを入れ、もみ込んでいく。

「塩は少し多めで、醤油は少なめにすると、色が白っぽい鶏唐揚げができるんです、たぶん」
「またお前、行き当たりばったりで作ってんのかよ」

 三井からのツッコミに、莉子は胸を張る。

「いえ。ちゃんと想像してます。こんな味だって」
「ほんとかよ」
「大丈夫です。間違いなく、この牡蠣ソース入れたら、なんでも美味しいので大丈夫です」
「牡蠣ソース唐揚げじゃねーかよ」
「なら食べなくていいです」
「食べないとはいってねぇだろ」

「それぐらいにしろ、2人とも」

 連藤からたしなめられ、2人はビールをあおり、くしゃりと潰す。
 2缶目だ。

 唐揚げは小麦粉を軽くまぶして揚げていく。
 2分揚げ、2分休ませ、2分揚げ……と、3~4回ほど繰り返せば、完成!

「できました! 塩鶏唐揚げ! めっちゃおいしそー」

 大皿に盛り付け、レモンのくし切りも添えてある。
 塩味にはやはり酸味が似合うので、莉子は自分の皿に1つ唐揚げを取ると、レモンを絞り、頬張った。

 サクッとした歯応えのあとに、すぐ、じゅわりと肉汁が溢れてくる。
 噛めば噛むほど、鶏の旨味が感じられる唐揚げだ。

「……今日もおいしくできました……はふっ」

 莉子は鶏の脂を堪能しながら、ビールで流し込んでいく。
 それは三井と連藤も同じで、熱々の唐揚げを頬張り、ビールを飲めば、優勝まちがいない。

「今、トマトサラダ、作りますね。あと、昼のナムルもあるので、それも」

 あまりものなのかもしれないが、トマトサラダはレタスとカッテージチーズ、茹でエビがあしらわれ、サウザンドレッシングがかけられている。ナムルはもやしと春雨だが、ちゃんと味を確かめてから皿に盛り直すのが、莉子らしい。

「莉子さん、こっちに座って飲んだらどうかな」

 連藤の誘いに、莉子は連藤の手を握って答える。

「この出来立てを食べながら飲むって、すごく合理的でいいんですよ」

 莉子のおつまみ作りは止まらないようだ。
 楽しんで作っているならと、連藤は笑顔で答える。

「莉子、もう1本くれよ」
「はいはい」

 冷えたビール缶を手渡しつつ、莉子も3缶目に突入だ。

「早く、春、来ないかなぁ……」

 莉子は寒い明日を思ってつぶやくが、

「莉子さん、まだ、冬も来ていないが」
「…………今、春巻き、揚がりますよ」

 雑な夜だが、体調が崩れそうな日こそ、いっぱい食べて、いっぱい元気にならなければ!
 莉子の食欲は、今日も止まらない。
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