140 / 153
第2章 カフェから巡る四季
第140話 ビールには、塩鶏唐揚げ!
しおりを挟む
本日、意外とあたたかい。
そのせいか、夜に来店した連藤と三井はぐったりしおれている。
「朝が寒く、昼が暑いと、こう体温調節がうまくいかん……」
「俺もよ。なんだろな、このダルさ。莉子、どうにかしてくれ」
「無理です。私もめっちゃだるいので」
3人で大きくため息をつきつつ、明日の天気を調べれば、どんより曇りが1日つづくそう。
「もう自律神経がおかしくなります、こんなの! 私、好きなもの食べますから、付き合ってください」
そういって2人の前に出されたのはビールだ。
しかも軽めのビール缶である。
すでに店は閉店となった後だが、まさか缶ビールが出てくるとは思ってもみなかった。
「はい、かんぱーい! 4%しかないんで、ごくごくいけていいんですよ、これー」
莉子はうれしそうにビールを缶から直接飲み込み、すぐにカウンターで調理を始めていく。
その手際の良さに笑いながら、三井と連藤は缶で乾杯だ。
たしかに喉ごしもよく、ほどよい苦味のため、飲みやすい。
さらに言えば、ご飯を食べながら飲むのにちょうどいい味だ。
ビールを飲んでいると思えるし、アルコールを飲んでいるという実感もあるが、料理の味を邪魔しない。
下手にマリアージュを考えるより、邪魔にならない飲み物である方が、気楽だし、なにより、なんでも食べられるのがいい。
「で、莉子さん、何を作ってるんだ?」
連藤の声に、莉子は即答だ。
「ビールといえば、鶏の唐揚げでしょう。今日は塩味です」
莉子は一口大に切った鶏もも肉に、酒、鶏ガラスープの素、塩、醤油、牡蠣ソースを入れ、もみ込んでいく。
「塩は少し多めで、醤油は少なめにすると、色が白っぽい鶏唐揚げができるんです、たぶん」
「またお前、行き当たりばったりで作ってんのかよ」
三井からのツッコミに、莉子は胸を張る。
「いえ。ちゃんと想像してます。こんな味だって」
「ほんとかよ」
「大丈夫です。間違いなく、この牡蠣ソース入れたら、なんでも美味しいので大丈夫です」
「牡蠣ソース唐揚げじゃねーかよ」
「なら食べなくていいです」
「食べないとはいってねぇだろ」
「それぐらいにしろ、2人とも」
連藤からたしなめられ、2人はビールをあおり、くしゃりと潰す。
2缶目だ。
唐揚げは小麦粉を軽くまぶして揚げていく。
2分揚げ、2分休ませ、2分揚げ……と、3~4回ほど繰り返せば、完成!
「できました! 塩鶏唐揚げ! めっちゃおいしそー」
大皿に盛り付け、レモンのくし切りも添えてある。
塩味にはやはり酸味が似合うので、莉子は自分の皿に1つ唐揚げを取ると、レモンを絞り、頬張った。
サクッとした歯応えのあとに、すぐ、じゅわりと肉汁が溢れてくる。
噛めば噛むほど、鶏の旨味が感じられる唐揚げだ。
「……今日もおいしくできました……はふっ」
莉子は鶏の脂を堪能しながら、ビールで流し込んでいく。
それは三井と連藤も同じで、熱々の唐揚げを頬張り、ビールを飲めば、優勝まちがいない。
「今、トマトサラダ、作りますね。あと、昼のナムルもあるので、それも」
あまりものなのかもしれないが、トマトサラダはレタスとカッテージチーズ、茹でエビがあしらわれ、サウザンドレッシングがかけられている。ナムルはもやしと春雨だが、ちゃんと味を確かめてから皿に盛り直すのが、莉子らしい。
「莉子さん、こっちに座って飲んだらどうかな」
連藤の誘いに、莉子は連藤の手を握って答える。
「この出来立てを食べながら飲むって、すごく合理的でいいんですよ」
莉子のおつまみ作りは止まらないようだ。
楽しんで作っているならと、連藤は笑顔で答える。
「莉子、もう1本くれよ」
「はいはい」
冷えたビール缶を手渡しつつ、莉子も3缶目に突入だ。
「早く、春、来ないかなぁ……」
莉子は寒い明日を思ってつぶやくが、
「莉子さん、まだ、冬も来ていないが」
「…………今、春巻き、揚がりますよ」
雑な夜だが、体調が崩れそうな日こそ、いっぱい食べて、いっぱい元気にならなければ!
莉子の食欲は、今日も止まらない。
そのせいか、夜に来店した連藤と三井はぐったりしおれている。
「朝が寒く、昼が暑いと、こう体温調節がうまくいかん……」
「俺もよ。なんだろな、このダルさ。莉子、どうにかしてくれ」
「無理です。私もめっちゃだるいので」
3人で大きくため息をつきつつ、明日の天気を調べれば、どんより曇りが1日つづくそう。
「もう自律神経がおかしくなります、こんなの! 私、好きなもの食べますから、付き合ってください」
そういって2人の前に出されたのはビールだ。
しかも軽めのビール缶である。
すでに店は閉店となった後だが、まさか缶ビールが出てくるとは思ってもみなかった。
「はい、かんぱーい! 4%しかないんで、ごくごくいけていいんですよ、これー」
莉子はうれしそうにビールを缶から直接飲み込み、すぐにカウンターで調理を始めていく。
その手際の良さに笑いながら、三井と連藤は缶で乾杯だ。
たしかに喉ごしもよく、ほどよい苦味のため、飲みやすい。
さらに言えば、ご飯を食べながら飲むのにちょうどいい味だ。
ビールを飲んでいると思えるし、アルコールを飲んでいるという実感もあるが、料理の味を邪魔しない。
下手にマリアージュを考えるより、邪魔にならない飲み物である方が、気楽だし、なにより、なんでも食べられるのがいい。
「で、莉子さん、何を作ってるんだ?」
連藤の声に、莉子は即答だ。
「ビールといえば、鶏の唐揚げでしょう。今日は塩味です」
莉子は一口大に切った鶏もも肉に、酒、鶏ガラスープの素、塩、醤油、牡蠣ソースを入れ、もみ込んでいく。
「塩は少し多めで、醤油は少なめにすると、色が白っぽい鶏唐揚げができるんです、たぶん」
「またお前、行き当たりばったりで作ってんのかよ」
三井からのツッコミに、莉子は胸を張る。
「いえ。ちゃんと想像してます。こんな味だって」
「ほんとかよ」
「大丈夫です。間違いなく、この牡蠣ソース入れたら、なんでも美味しいので大丈夫です」
「牡蠣ソース唐揚げじゃねーかよ」
「なら食べなくていいです」
「食べないとはいってねぇだろ」
「それぐらいにしろ、2人とも」
連藤からたしなめられ、2人はビールをあおり、くしゃりと潰す。
2缶目だ。
唐揚げは小麦粉を軽くまぶして揚げていく。
2分揚げ、2分休ませ、2分揚げ……と、3~4回ほど繰り返せば、完成!
「できました! 塩鶏唐揚げ! めっちゃおいしそー」
大皿に盛り付け、レモンのくし切りも添えてある。
塩味にはやはり酸味が似合うので、莉子は自分の皿に1つ唐揚げを取ると、レモンを絞り、頬張った。
サクッとした歯応えのあとに、すぐ、じゅわりと肉汁が溢れてくる。
噛めば噛むほど、鶏の旨味が感じられる唐揚げだ。
「……今日もおいしくできました……はふっ」
莉子は鶏の脂を堪能しながら、ビールで流し込んでいく。
それは三井と連藤も同じで、熱々の唐揚げを頬張り、ビールを飲めば、優勝まちがいない。
「今、トマトサラダ、作りますね。あと、昼のナムルもあるので、それも」
あまりものなのかもしれないが、トマトサラダはレタスとカッテージチーズ、茹でエビがあしらわれ、サウザンドレッシングがかけられている。ナムルはもやしと春雨だが、ちゃんと味を確かめてから皿に盛り直すのが、莉子らしい。
「莉子さん、こっちに座って飲んだらどうかな」
連藤の誘いに、莉子は連藤の手を握って答える。
「この出来立てを食べながら飲むって、すごく合理的でいいんですよ」
莉子のおつまみ作りは止まらないようだ。
楽しんで作っているならと、連藤は笑顔で答える。
「莉子、もう1本くれよ」
「はいはい」
冷えたビール缶を手渡しつつ、莉子も3缶目に突入だ。
「早く、春、来ないかなぁ……」
莉子は寒い明日を思ってつぶやくが、
「莉子さん、まだ、冬も来ていないが」
「…………今、春巻き、揚がりますよ」
雑な夜だが、体調が崩れそうな日こそ、いっぱい食べて、いっぱい元気にならなければ!
莉子の食欲は、今日も止まらない。
0
お気に入りに追加
140
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~
白い黒猫
ライト文芸
ここは東京郊外松平市にある希望が丘駅前商店街、通称【ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘】。
国会議員の重光幸太郎先生の膝元であるこの土地にある商店街は、パワフルで個性的な人が多く明るく元気な街。就職浪人になりJazzBarを経営する伯父の元で就職活動をしながら働く事になった東明(とうめい)透(ゆき)は、商店街のある仕事を担当する事になり……。
※ 鏡野ゆうさんの『政治家の嫁は秘書様』に出てくる商店街が物語を飛び出し、仲良し作家さんの活動スポットとなってしまいました。その為に同じ商店街に住む他の作家さんのキャラクターが数多く物語の中で登場して活躍しています。鏡野ゆうさん及び、登場する作家さんの許可を得て創作させて頂いております。
コラボ作品はコチラとなっています。
【政治家の嫁は秘書様】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/210140744/354151981
【希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』とその周辺の人々 】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/274274583/188152339
【日々是好日、希望が丘駅前商店街-神神飯店エソ、オソオセヨ(にいらっしゃいませ)】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/177101198/505152232
【希望が丘駅前商店街~看板娘は招き猫?喫茶トムトム元気に開店中~】
https://ncode.syosetu.com/n7423cb/
【希望が丘駅前商店街 ―姉さん。篠宮酒店は、今日も平常運転です。―】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/172101828/491152376
【Blue Mallowへようこそ~希望が丘駅前商店街】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271
【希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271
【希望が丘駅前商店街~黒猫のスキャット~】
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/813152283
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作
Husband's secret (夫の秘密)
設樂理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる