café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

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第2章 カフェから巡る四季

第135話 麻婆豆腐

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 今日は定休日。
 まだまだ残暑が厳しいが、お中元でいただいたビールが飲みたい莉子は、エアコンではなく、窓を開けて気温をしのいでいた。

 開いた網戸越しの空は、少し薄まっている。
 そのせいか、風も心なしか冷たい気がする。

「今日は美味しいビールが飲めそう……」

 連藤は夜から来てくれるというので、15時の今、夕飯のメニューを決めようと、冷蔵庫を開いた。

「あー……合い挽き肉と豆腐……麻婆豆腐にしよ。ビールに合うし!」

 他にはエビマヨと、春雨サラダにすることに決めた。
 春雨サラダは簡単だ。
 茹でた春雨ともやし、さらに千切りしたきゅうり、ハムをごま油と醤油、鶏ガラスープの素と胡椒で和えれば完成。

「ナムルだな、これ」

 それはボウルごと冷蔵庫で冷やしておく。
 エビは下処理をし、エビマヨソースは後ほど作るとして、麻婆豆腐をどう作るか莉子は考えていく。

「こういうときこそ、動画でしょう!」

 youtubeで『麻婆豆腐』と打ち込めば、山ほど出てくる。
 意外と調味料が多く、足りないものもありそうだ。

 2階にも調味料の在庫を入れてある棚がある。
 厨房でデカい調味料を運ぶのがダルい莉子は、ガタガタと棚を漁ったとき、見つけた。

「いいじゃん、コレ!」

 『麻辣醤』と書かれたチューブだ。
 使用例に、麻婆豆腐が先頭に並んでいる。

「これで作ってみよ。美味しかったらいいなー」


 18時となり、連藤から、今から帰ると連絡が来た。
 すっかりソファにくっついていたお尻をなんとか持ち上げ、莉子はキッチンへと立つ。

 まずは麻婆豆腐から。
 エビマヨはマヨソースだけ作っておけば、揚げて絡めるだけなので、最後にすることに決めた。

 スキレットを取りだし、そこで多めのごま油でニンニクと生姜、みじん切りのネギを炒めていく。
 香りがしたら、ひき肉を投入。少し酒も入れ、だいたい火が通ったところで、チューブ登場。
 思う分、出してみるが、10cmくらいだろうか。

「もうちょい入れちゃお……」

 それぐらいのでチューブを入れ、炒めていく。
 ここは動画を見たとおりにしっかり火を通す。
 しっとりしていたひき肉が引き締まり、パチパチと言い出したら頃合だ。
 少なめの水と鶏ガラスープの素を入れ、賽の目に切っておいた木綿豆腐をパラパラと入れていく。

「ここでしっかり煮込んで、水切りと味を染み込ませるって、さっきのユーチューバー言ってたけど、ほんとにできるのかな……」

 豆腐を突きつつ、崩れないように少し混ぜ、放置。

 チャイムが鳴った。
 連藤だ。

「ただいま、莉子さん」
「おかえりなさい、連藤さん。お疲れ様でした」
「今日は麻婆豆腐かな?」
「よくわかりましたね!」
「匂いが刺激的だからな。今日はビールだからな。はかどるな、これは」

 慣れた順序でスーツを脱ぎ、部屋においてある連藤用の部屋着に着替えると、流れでキッチンに立った。

「あと、手伝うことは?」
「ありがとうございます。……じゃあ、エビ揚げてもらっていいです? 今日は麻婆豆腐とエビマヨと、春雨サラダとご飯です」

 エビは連藤に任せ、莉子は麻婆豆腐の仕上げに取り掛かる。
 追いみじん切りネギを投入し、火を軽く通したあと、水溶き片栗粉でとろみをつけていく。

「スキレットで作ったら美味しそうに見えるかも……」

 よりグツグツと気泡が見える。
 火のとおりも全体にしっかり入っていくため、中華鍋のない梨子家にはもってこい。
 さらに見栄えもいい!

 手際よくエビマヨが完成。
 麻婆豆腐もスキレットごとテーブルに運び、春雨サラダを冷蔵庫から取り出し、盛り付けたら、ご飯タイムだ。


 席に着いた連藤に、キンキンに冷やしておいたグラスにビールを注いでいく。

「じゃ、食べましょうか」
「「いただきます」」

 と言いつつ、早速口につけたのは、ビールだ。

「めっちゃ悪魔的……! 冷えてる! めっちゃ冷えてるー!」
「はぁ……やっぱりビールは喉越しだな、莉子さん」
「ですね!」

 それから麻婆豆腐を取り分けて、ふたりでほぼ一緒にひと口含む。

「本格的な味だな。うまい」

 ご飯を口に含み、辛さで滲む額の汗を連藤は拭う。
 莉子はビールで辛味を調整だ。

「こんなにおいしいとは思ってなかったです。今日、麻辣醤ってチューブがあったんで、それ使ったんですよ」
「そうなのか? お手軽の割にはいいな。ちゃんとシビレもあって、美味い」
「ですね。これはご飯もビールも進んじゃいます」



 残暑でバテやすい日は、辛いものもいいかもしれない。
 カフェのランチで出せないかふたりで考えてみながらの夕食は、なかなか終わりそうにない。
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