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第2章 カフェから巡る四季
第126話 じゃがいもの簡単グラタン
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新じゃがが手に入ったのだが、フライも、コロッケも、ポテトサラダも作ってしまった。
さらには、残りが本当に少ない。
こんな、ほんの少しの新じゃがをどう食べようかと、料理本をパラパラめくっていたとき、見つけた。
「……ポテトグラタン、これにしよ!」
相変わらずの、夜の時間。
本日は、瑞樹と連藤の2名だ。
「莉子さーん、新入社員が今年もめっちゃ優秀でぇ」
毎年の泣き言だ。
だが、
「ホントに頼りがいあるから、オレ、すごく安心でぇ」
去年なら、『抜かされるー』『オレなんて用無し』『僻地に飛ばされるんだー』などと言っていたのに、一年でこれ程変わるとは……
「安心できる後輩は、助かりますね」
「そうなんです! だがら、オレも頼られる後輩になろうと!」
「瑞樹も成長したな……」
感慨深く呟いた連藤の言葉がカウンターに転がった。
だが、瑞樹を見つめる視線はとても優しく、頼もしい戦友を見るようでもあり、日々、みーんな成長してるのだと感じずにはいられない。
「今日は白ワインなので、ポテトグラタン、出しますねー」
莉子は小ぶりの新じゃがを綺麗に洗い、皮付きのままスライサーで薄くスライスしていく。
それを多めのバターを溶かしたフライパンに投入。
塩コショウをしたあと、形を崩さないように、透き通るくらいまで火を入れ、バターに塗った耐熱皿に新じゃがを敷き詰めていく。
「3個くらいだったのに、スライスしたらそんなに増えるんだ」
「そうなんですよ。薄く切るだけで増えるんです!」
くだらない会話をはさみながら、莉子はふんわりとラップをし、新じゃがを電子レンジにかけた。
料理本では、ラストの仕上げをして、オーブンと書かれているのだが、莉子は信用していない。
じゃがいもは火が通りにくいからだ。
3分程度温め、爪楊枝を刺してみて、問題なさそうと判断すると、そこへ生クリームを注ぐ。うっすらと覆うくらい生クリームを入れたら、ピザ用チーズをたっぷり乗せていく。
「……これをオーブンで焼けばOKです。15分くらい待ってくださいねー」
アルミホイルをかけ、オーブントースターにいれて、つまみを回した莉子だが、15分、少し余す時間になるかと思ったが、そうはならなかった。
じゃがいもといえば……から、カップラーメンのカヤクのじゃがいもになり、謎肉は大豆からできてる、からの、なぜか昆虫は宇宙人からの贈り物まで発展。
アルコールの力は強い。
ヂン! と知らされたオーブントースターのホイルを外し、強火で3分。すぐに焦げ目がつく。
莉子はアツアツのまま、ふたりの前へと運んだ。
「簡単ポテトグラタン」
莉子はそういって、皿へ取り分けた。
お好みで黒胡椒を差し出しつつ、フォークをそえる。
瑞樹はアツアツをそっと口へ運んでいく。
連藤は丁寧に温度を確認し、口に入れた。
「「……うまい」」
たったこれだけの材料なのだが、クリームの濃厚さ、塩気、じゃがいものホクホク感が、たまらなく美味しい一品だ。
生クリームの量でクリームの量が変わるのだが、たっぷりにすれば、ソースとしてパンにつけて食べても美味しい!
少なめであれば、じゃがいもと絡めて美味しい!
とにかく、簡単で、濃厚なおつまみに大変身なのである。
「お口にあってよかった」
莉子もひと口頬張り、ワインを飲み込む。
濃厚なチーズソースの塩気と、白ワインのスッキリした酸味がたまらない!!!
「新じゃがなんで、甘みも強いし、合いますねー合いますねー」
楽しそうに嬉しそうに莉子が言うのをふたりは聞いて、笑いだした。
「莉子さんって、ホントにワインと料理、好きだよねぇ」
「俺も思ってたところだった。幸せそうでなによりだ」
笑われたととらえるべきか、喜んでくれたととらえるべきか、悩ましいところだが、楽しい時間になっているのならいいかと、莉子も笑う。
「ほら、ワイン、まだ残ってますよー?」
もう少し、今日の夜は続きそうだ。
さらには、残りが本当に少ない。
こんな、ほんの少しの新じゃがをどう食べようかと、料理本をパラパラめくっていたとき、見つけた。
「……ポテトグラタン、これにしよ!」
相変わらずの、夜の時間。
本日は、瑞樹と連藤の2名だ。
「莉子さーん、新入社員が今年もめっちゃ優秀でぇ」
毎年の泣き言だ。
だが、
「ホントに頼りがいあるから、オレ、すごく安心でぇ」
去年なら、『抜かされるー』『オレなんて用無し』『僻地に飛ばされるんだー』などと言っていたのに、一年でこれ程変わるとは……
「安心できる後輩は、助かりますね」
「そうなんです! だがら、オレも頼られる後輩になろうと!」
「瑞樹も成長したな……」
感慨深く呟いた連藤の言葉がカウンターに転がった。
だが、瑞樹を見つめる視線はとても優しく、頼もしい戦友を見るようでもあり、日々、みーんな成長してるのだと感じずにはいられない。
「今日は白ワインなので、ポテトグラタン、出しますねー」
莉子は小ぶりの新じゃがを綺麗に洗い、皮付きのままスライサーで薄くスライスしていく。
それを多めのバターを溶かしたフライパンに投入。
塩コショウをしたあと、形を崩さないように、透き通るくらいまで火を入れ、バターに塗った耐熱皿に新じゃがを敷き詰めていく。
「3個くらいだったのに、スライスしたらそんなに増えるんだ」
「そうなんですよ。薄く切るだけで増えるんです!」
くだらない会話をはさみながら、莉子はふんわりとラップをし、新じゃがを電子レンジにかけた。
料理本では、ラストの仕上げをして、オーブンと書かれているのだが、莉子は信用していない。
じゃがいもは火が通りにくいからだ。
3分程度温め、爪楊枝を刺してみて、問題なさそうと判断すると、そこへ生クリームを注ぐ。うっすらと覆うくらい生クリームを入れたら、ピザ用チーズをたっぷり乗せていく。
「……これをオーブンで焼けばOKです。15分くらい待ってくださいねー」
アルミホイルをかけ、オーブントースターにいれて、つまみを回した莉子だが、15分、少し余す時間になるかと思ったが、そうはならなかった。
じゃがいもといえば……から、カップラーメンのカヤクのじゃがいもになり、謎肉は大豆からできてる、からの、なぜか昆虫は宇宙人からの贈り物まで発展。
アルコールの力は強い。
ヂン! と知らされたオーブントースターのホイルを外し、強火で3分。すぐに焦げ目がつく。
莉子はアツアツのまま、ふたりの前へと運んだ。
「簡単ポテトグラタン」
莉子はそういって、皿へ取り分けた。
お好みで黒胡椒を差し出しつつ、フォークをそえる。
瑞樹はアツアツをそっと口へ運んでいく。
連藤は丁寧に温度を確認し、口に入れた。
「「……うまい」」
たったこれだけの材料なのだが、クリームの濃厚さ、塩気、じゃがいものホクホク感が、たまらなく美味しい一品だ。
生クリームの量でクリームの量が変わるのだが、たっぷりにすれば、ソースとしてパンにつけて食べても美味しい!
少なめであれば、じゃがいもと絡めて美味しい!
とにかく、簡単で、濃厚なおつまみに大変身なのである。
「お口にあってよかった」
莉子もひと口頬張り、ワインを飲み込む。
濃厚なチーズソースの塩気と、白ワインのスッキリした酸味がたまらない!!!
「新じゃがなんで、甘みも強いし、合いますねー合いますねー」
楽しそうに嬉しそうに莉子が言うのをふたりは聞いて、笑いだした。
「莉子さんって、ホントにワインと料理、好きだよねぇ」
「俺も思ってたところだった。幸せそうでなによりだ」
笑われたととらえるべきか、喜んでくれたととらえるべきか、悩ましいところだが、楽しい時間になっているのならいいかと、莉子も笑う。
「ほら、ワイン、まだ残ってますよー?」
もう少し、今日の夜は続きそうだ。
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