café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

yolu

文字の大きさ
上 下
125 / 153
第2章 カフェから巡る四季

第125話 キッシュ風玉子焼き

しおりを挟む
 キッシュ。
 パイ生地の中に卵液を注ぎ、焼き上げる食べ物。

 なのだが、莉子はパイ生地を焼いてから、さらに焼くことが面倒になっていた──

「今日はひとりだからなぁ……」

 明日は定休日。
 今日は誰も来ないと連絡が来ている。
 式典の準備があるそう。

 ……となると、本日、定時に閉店できる日となる。

 現在19時。雨も降り出し、来店はないと見込み、クローズをだした。

 莉子は店内を閉め確認しながら、少し日持ちする食べ物を作っておき、2日かけて食べ切りたいなーと考えてみる。
 とはいえ、そんな都合よく食材はないもので、冷蔵庫から見つけたのは大量の卵だ。

「なんで、箱で買ったの……?」

 見てみると、定休日あけのメニューにオムライスの予定がある。
 先週の自分は、とてもやる気があったようだ。

 卵を握り、冷凍庫を見て、莉子は決めた。

「キッシュ風オムレツにするか」

 決めると、莉子はすぐにスキレットを取りだした。
 そこへバターを入れ、冷凍ほうれん草とカットしたベーコン、マッシュルーム、を塩コショウで炒めていく。
 火が通ったら、オーブンを温め始め、卵液を作っていく。
 卵は3個。生クリーム100cc、粉末コンソメを少し入れ、ピザ用チーズをたっぷり投入し、混ぜれば完成。
 具材を炒めておいたスキレットに卵液を流し、ザッザッと混ぜて、最後にプチトマトを好きなように配置、焼けば完成。
 180℃くらいで20分見て、火が通ってないようなら延長しようと、莉子は片付けの続きに取り掛かった。

「……戸締り、レジ、OK……水周り確認…と……お!」

 オーブンの音を聞き、竹串で卵液の状態を見てから、莉子はスキレットを取り出すと、さらに放置。
 この料理はアツアツを食べる料理じゃないのだ。
 冷めてから食べる料理なのである。

 莉子は一度アツアツを食べたくて切ろうとしたのだが、焼けた生地がふわふわ、悪くいうとびちゃびちゃで、うまく切れず。
 冷めてから再挑戦すると、水分も落ち着き、切り分けも簡単!
 しっとりキッシュへと変貌していた。

 茶碗蒸しは、アツアツをふわふわ食べる料理の定番。
 そんなイメージの卵料理だったが、食べるタイミングが必要だとは知らなかったのだ。

 莉子は、それからというもの、しっかりと冷ますものは冷まし、落ち着けてから食べるようにしている。

 全ての片付けを終え、店内の電気を落とし、莉子は冷えた白ワインを小脇に、スキレットを片手に持ち、自室へと上がっていく。

 自室の片付けはそこそこに、さっそくとグラスに白ワインを注ぎ、スキレットにナイフを入れた。

「……うまい…ヤバい……今日でペロリしちゃいそう……」

 焼けたトマトの酸味、そして卵のほんのりした甘みはもちろん、チーズの塩気も丁度いい!
 ほうれん草の歯ごたえと、マッシュルームの旨みが口のなかで広がる。
 ここに酸味強めの白ワインを流せば、バッチリマッチ!
 いくらでも飲めてしまう!!!

 莉子はさらに冷蔵庫の奥からチーズ、ポテトチップスを皿にあけ、莉子はテレビの電源を入れた。
 映画を見るためだ。
 こういう日のために、リスト化したタイトルから映画を選んでいく。

 まだ今日の夜は始まったばかり。

 莉子はスマホの画面をすぐ見える場所に置き、映画の再生ボタンを押した。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立

水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~ 第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。 ◇◇◇◇ 飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。 仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。 退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。 他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。 おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。 

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~

白い黒猫
ライト文芸
ここは東京郊外松平市にある希望が丘駅前商店街、通称【ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘】。 国会議員の重光幸太郎先生の膝元であるこの土地にある商店街は、パワフルで個性的な人が多く明るく元気な街。就職浪人になりJazzBarを経営する伯父の元で就職活動をしながら働く事になった東明(とうめい)透(ゆき)は、商店街のある仕事を担当する事になり……。 ※ 鏡野ゆうさんの『政治家の嫁は秘書様』に出てくる商店街が物語を飛び出し、仲良し作家さんの活動スポットとなってしまいました。その為に同じ商店街に住む他の作家さんのキャラクターが数多く物語の中で登場して活躍しています。鏡野ゆうさん及び、登場する作家さんの許可を得て創作させて頂いております。  コラボ作品はコチラとなっています。 【政治家の嫁は秘書様】  https://www.alphapolis.co.jp/novel/210140744/354151981 【希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』とその周辺の人々 】  https://www.alphapolis.co.jp/novel/274274583/188152339 【日々是好日、希望が丘駅前商店街-神神飯店エソ、オソオセヨ(にいらっしゃいませ)】  https://www.alphapolis.co.jp/novel/177101198/505152232 【希望が丘駅前商店街~看板娘は招き猫?喫茶トムトム元気に開店中~】  https://ncode.syosetu.com/n7423cb/ 【希望が丘駅前商店街 ―姉さん。篠宮酒店は、今日も平常運転です。―】  https://www.alphapolis.co.jp/novel/172101828/491152376  【Blue Mallowへようこそ~希望が丘駅前商店街】  https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271 【希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~】  https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271 【希望が丘駅前商店街~黒猫のスキャット~】  https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/813152283

Husband's secret (夫の秘密)

設樂理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

『 ゆりかご 』  ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。

設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。 最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。 古い作品ですが、有難いことです。😇       - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。            ・・・・・・・・・・ 💛イラストはAI生成画像自作  

処理中です...