café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

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第2章 カフェから巡る四季

第113話 クレープ、焼いてみた

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 今日のランチは、タラのフライ&タルタルソース添えと、肉じゃがの小鉢だ。
 すでに準備が整っているのもあり、ランチメニューにミニデザートでもつけてみようかと思い立った莉子だが、

「なに作ろう……」

 在庫を見に行くことに。

 ミニデザートに必要そうな、小麦粉、卵、牛乳、バター、砂糖などは問題ない。

「さてさて……あ!」

 莉子が見つけたのは『クレープの素』だ。
 卵と牛乳を入れれば出来る簡単な粉である。

「なんでこんなの買ってたんだろ……」

 思い出そうとするが、あまりに遠い記憶で、欠片さえ見えてこない。
 消費期限を見ると、なんと来月に迫っている。

 改めて、袋に破損がないのを確認し、莉子はクレープを焼くことに決めた。

「生クリームってあったっけ……」

 たまたま冷凍庫に眠っていた冷凍生クリームも発見。
 あとは手作りのブルーベリージャムがあるので、それでよしとする。

 莉子は大きめのボウルを用意し、そこに規定の卵を投入。さらに牛乳を計って入れ、粉をざばっと入れてみた。
 泡立て器で混ぜてみたが、ダマが消えない。

「……これ、やっちゃったんじゃない?」

 自分の要領の悪さに悲しく笑いながら、ダマが浮いた液をこしていく。
 ダマの消えたクレープ液は、クリーム色に染まり、少しとろりとしている。

 少し寝かした方がいいようだが、時間も迫っているので焼いていくことに。
 莉子は小さめのクレープを焼こうと思ったが、手頃なフライパンが洗わないとないことに気づく。

 そこで見つけたのはスキレットだ。
 手のひらサイズの、一人用スキレットである。

「これでいっか」

 莉子はそこに油を薄く伸ばすと、お玉で液を流し、さっそく焼いていくことに。

 ──正直、ここまできれいに焼けるとは思っていなかった。

 弱ったテフロンのフライパンよりもずっときれいに焼けるのはもちろん、大きさもちょうどいい。
 さらに、すぐ焼ける!
 火の通りが均一なのもあり、かなりクレープ屋さんに近い厚みで焼けているのもいい。

「ちょっと重いのが、難点か」

 そう言いつつも、莉子は丁寧にクレープを焼いていく。
 小さめなので、50枚近く焼くことになったが、正直、ここまで捌けるかはわからない。
 余ったらミルクレープにしようかと決め、1枚、試しに包んで見ることに。

 小さめの皿に生クリーム、ブルーベリージャムをのせ、包む。
 四角いクレープがでた。
 そのとなりに生クリームとバナナを添え、粉砂糖をかければ完成だ。

「いただきまーす」

 手づかみで、バナナをクレープにのせ、ひと口頬張る。

「……おー……うん、クレープ」

 それ以上の言葉は出ないが、かなり美味しい出来なのは間違いない。
 少しもっちりとした記事に、生クリームとブルーベリーの酸味、さらにバナナのこってりとした甘みが合わさって、とても美味しい!

「へー……市販ってやっぱり侮れないわ……」

 莉子はぶつぶつ言いながら、焼き上がった生地を冷やしておく。

 厨房の時計を見ると、もう店を開ける時間が迫っている。
 莉子は自分の分のコーヒーを飲む準備を整えると、店の鍵を開けに動いた。

 今日のカフェが今から始まる───
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