café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

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第2章 カフェから巡る四季

第98話 鍋といえば、キムチ鍋

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 今日の夜は、三井と連藤、巧と瑞樹の4人で来店だ。
 『冬らしい鍋料理』を。
 という指示があり、莉子はすぐにキムチ鍋と決めた。

 理由は簡単だ。
 莉子自身がキムチ鍋が好きだから!
 これ以上の理由はない。

 今日の飲み物は、ビール。
 キムチにワインは合わないのが残念なところ。

「スパークリングなら、合うかな……でも、無理に合わせなくてもいいか」

 スパークリングワインは、辛い食べ物はもちろん、中華料理にも似合うが、今日は『冬』を満喫したい気分なのだろう。
 おしゃれなものより、ガッツリ系で攻めるときめ、莉子はビールとグラスをキンキンに冷やしておく。

「もうそろそろかな……」

 言っていたところで、ドアベルが鳴る。

「「ただいまー」」

 巧と瑞樹だ。
 さぶいさぶいと言いながら入ってくる。
 予約席のテーブルを指さすと、するりと座った。
 しかし、テーブルにはカセットコンロがあるが、鍋がない。

「莉子、鍋はどうしたよ」

 三井だ。
 明らかに不満の声である。
 連藤を席へ案内したところで、莉子は宣言した。

「今から作ります! 熱々のを召し上がっていただきたかったので。今、ビールと他の料理、お持ちしますね」

 瓶ビールと、凍らせたグラス、そして、味付け玉子に、ほうれん草のナムル、ペペロンチーノ枝豆をだす。
 乾杯しだしたところで、莉子はキムチ鍋にとりかかった。

「材料は、……ごぼう、豚バラ、春菊、豆腐、えのき……でいいよね。よし」

 土鍋にごま油を引き、微塵切りのニンニクと生姜の香りを出していく。
 そこに豚バラ肉と、牛蒡を投入。キムチも追加し、適宜炒め、浸るように水を注ぐ。
 お湯が沸いて、アクをとったら、そこへ豆腐、えのきを入れ、煮る。

「目安はごぼう……ちゃんと煮えたかな……」

 取り出し、火の通りを確認すると、味噌とコチュジャンとしょうゆを加え、ひと煮立ち。
 春菊も入れて、火を通せば完成だ。

 鍋を運ぶと、煮ている間に出しておいたプルコギが完食されている。

「今日は結構お腹空いてたんですね」

 言いながら、カセットコンロにセットされた鍋は、火にかかり、ぐつぐつと揺れ出した。
 蓋を持ち上げれば、ふわりと大きな湯気がテーブルに上がる。

「はい、キムチ鍋、召し上がれ。ビール、追加持ってきますね」

 ビールを運んできた莉子に、巧が聞く。

「今日の〆は?」
「早いですね。おじやか、ラーメンか、うどんですかね。好きなの選んでください」
「うわ! 究極の選択じゃない?」

 瑞樹の声に、巧は大きく頷いた。

「やばい。どれがいいか、決められない」
「まずは、食ってからだろ、ふつー」

 三井が各々の椀にキムチ鍋をとりわけていく。

「鍋、おかわりもできます。言ってくださいね」

 言い残し、厨房へ戻る莉子の手を連藤が握った。

「莉子さんは、鍋、食べないのか?」
「え、あ、えっと、……今日は、まだお客さんいるので……はい」

 するすると連藤から手を離して厨房へと駆け込んでいく。
 その背中を見つつ、三井は呆れ顔だ。

「いい加減、うぶな雰囲気、やめてくんね? なんか、俺が照れる」
「……いや、俺も照れる」

 顔を赤らめる連藤に、今度は3人が呆れ顔だ。
 だが、これはビールのアルコールがまわったせい、なのかもしれない。
 いつもと違う雰囲気、飲み物は、人の雰囲気も変わるものだ。

「連藤、うまいな、これ。味噌と牛蒡の風味がいいな」
「そうだな。あったまる」
「やっぱ冬は鍋だよね、巧」
「そうだよなー! みんなで囲むのが、マジいい!」

 4人のほっこりな時間が、すぎていく。
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