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第2章 カフェから巡る四季
第93話 川は皮から 海は身から
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頂き物のホッケを、莉子は焼いている。
大ぶりの、脂がのった北海道産のホッケだ。
それに合わせるお酒は、もちろん日本酒!
ホッケと日本酒を楽しむためにカウンターに座るのは、連藤だ。
もう店は閉まっており、ドアも閉められ、クローズも出てる。
今日はゆっくりと、2人で晩酌を楽しめる。
おかげで莉子の頬はゆるみっぱなしだ。
美味しいホッケが食べれるのも楽しみだし、日本酒が飲めるのもいいし、なにより、連藤と楽しめるのが本当に嬉しくてたまらない。
「たまにはいいな、日本酒も」
連藤は嬉しそうに、クリームチーズの醤油漬けをつまみに、お猪口を運んでいる。
「もうすぐ、ホッケ焼けますらね……と」
グリルを眺めながら、莉子は鼻歌のようにつぶやいた。
「……川は皮から~……海は身から~……と」
カウンターの下のオーブンで調理していたため、ひょっこり頭をだし、自分のお猪口に手を伸ばしたとき、連藤が驚いた顔をしている。
「莉子さん、今の歌はなんだ?」
「歌?」
「かわは、かわからーというやつ」
「あー。これは、母がよく言ってて」
焼き上がったホッケを皿にのせ、大根おろしを別のお碗にたっぷりと用意した。脂がのったほっけには、大根おろしは欠かせない。
「魚を焼くときの、面ですね。理由はしりませんが、川魚は、皮から。海魚は身から焼くのがいいそうです。……はい、召し上がれ」
差し出されたホッケの湯気が連藤の鼻先をかする。
連藤は嬉しそうに微笑み、香ばしい匂いをかいでいる。
「いい脂の匂いがする」
「ばあちゃんが送ってくれたホッケだから、絶対おいしいよ」
莉子の嬉しそうな声に、連藤は遠慮なくホッケを頬張った。
大根おろしの風味と、ホッケの上質な脂がよく合う。
適度に莉子がかけただろう醤油が、いい甘味を引き出してくる。
そこにすかさず、白米が差し出された。
「やっぱ魚のときは、ご飯でしょ」
莉子はすでに頬張ってるようで、もごもごしながら、美味しい美味しいと繰り返している。
「ばあちゃん、サイコー……!」
連藤も莉子の真似をして、ホッケをご飯に上手にのせ、ひと口。
「……うまい」
さらに日本酒を流すと、また、旨味が増す気がする。
「……はぁ」
「どうしたんですか、ため息なんて」
莉子の慌て方が面白く、つい、演技をそのまましておきたいが、美味しいものを食べているのに、嬉しい顔ができないのはつまらない。
なので、連藤は素直に白状した。
「あまりにおいしくて、日本人に生まれてよかった、と思ったんだ」
「なるほど!」
莉子はあいたお猪口に酒を注ぎつつ、連藤の手を握る。
「生まれてよかった。あたしもよかったー! ね! 今日のホッケ! サイコー!」
莉子の手を握り返すと、いつもより、手が熱いかもしれない。
ふふふと、楽しげに笑う声から、莉子はすでに酔っ払っているようだ。空きっ腹に飲んだのがきいている。
──だが、かわいい!!!!
連藤は、莉子さんサイコー!!!!
と、心のなかで叫びつつ、冷めないうちにホッケに箸をのばすのだった。
大ぶりの、脂がのった北海道産のホッケだ。
それに合わせるお酒は、もちろん日本酒!
ホッケと日本酒を楽しむためにカウンターに座るのは、連藤だ。
もう店は閉まっており、ドアも閉められ、クローズも出てる。
今日はゆっくりと、2人で晩酌を楽しめる。
おかげで莉子の頬はゆるみっぱなしだ。
美味しいホッケが食べれるのも楽しみだし、日本酒が飲めるのもいいし、なにより、連藤と楽しめるのが本当に嬉しくてたまらない。
「たまにはいいな、日本酒も」
連藤は嬉しそうに、クリームチーズの醤油漬けをつまみに、お猪口を運んでいる。
「もうすぐ、ホッケ焼けますらね……と」
グリルを眺めながら、莉子は鼻歌のようにつぶやいた。
「……川は皮から~……海は身から~……と」
カウンターの下のオーブンで調理していたため、ひょっこり頭をだし、自分のお猪口に手を伸ばしたとき、連藤が驚いた顔をしている。
「莉子さん、今の歌はなんだ?」
「歌?」
「かわは、かわからーというやつ」
「あー。これは、母がよく言ってて」
焼き上がったホッケを皿にのせ、大根おろしを別のお碗にたっぷりと用意した。脂がのったほっけには、大根おろしは欠かせない。
「魚を焼くときの、面ですね。理由はしりませんが、川魚は、皮から。海魚は身から焼くのがいいそうです。……はい、召し上がれ」
差し出されたホッケの湯気が連藤の鼻先をかする。
連藤は嬉しそうに微笑み、香ばしい匂いをかいでいる。
「いい脂の匂いがする」
「ばあちゃんが送ってくれたホッケだから、絶対おいしいよ」
莉子の嬉しそうな声に、連藤は遠慮なくホッケを頬張った。
大根おろしの風味と、ホッケの上質な脂がよく合う。
適度に莉子がかけただろう醤油が、いい甘味を引き出してくる。
そこにすかさず、白米が差し出された。
「やっぱ魚のときは、ご飯でしょ」
莉子はすでに頬張ってるようで、もごもごしながら、美味しい美味しいと繰り返している。
「ばあちゃん、サイコー……!」
連藤も莉子の真似をして、ホッケをご飯に上手にのせ、ひと口。
「……うまい」
さらに日本酒を流すと、また、旨味が増す気がする。
「……はぁ」
「どうしたんですか、ため息なんて」
莉子の慌て方が面白く、つい、演技をそのまましておきたいが、美味しいものを食べているのに、嬉しい顔ができないのはつまらない。
なので、連藤は素直に白状した。
「あまりにおいしくて、日本人に生まれてよかった、と思ったんだ」
「なるほど!」
莉子はあいたお猪口に酒を注ぎつつ、連藤の手を握る。
「生まれてよかった。あたしもよかったー! ね! 今日のホッケ! サイコー!」
莉子の手を握り返すと、いつもより、手が熱いかもしれない。
ふふふと、楽しげに笑う声から、莉子はすでに酔っ払っているようだ。空きっ腹に飲んだのがきいている。
──だが、かわいい!!!!
連藤は、莉子さんサイコー!!!!
と、心のなかで叫びつつ、冷めないうちにホッケに箸をのばすのだった。
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