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第2章 カフェから巡る四季
第40話 ドライブといえば、お弁当!
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莉子のひらめきと、その行動力はいつもでは発揮できなかっただろう。
だが、現在、相当に疲労困憊している。
これだけ疲れているときは、一度意識をいれかえなければならない。
『……海が見たい』
ふと、思い浮かんだ言葉だった。
それを実現するためにはなにをすればいいのか───
あの臨時休業の手配を各所にしているすきに、連藤へメッセを入れていた。
『明日、ドライブに行きませんか? 臨時休業にしました』
理由が後ろに来るほどに、莉子はドライブに行きたかった。
連藤と、ドライブに行きたかったのだ。
ただ、ずっと考えていたことがある。
連藤が楽しんでくれるかどうか、わからないということだ。
目が見えない連藤に、どうドライブを楽しんでもらうか───
莉子のなかでこれが一番重要なものになっていた。
いつもどおりの時間に起きると、莉子は腕をぐんと伸ばした。
「今日はドライブランチです。お弁当、がんばるぞぉ」
いいながらベッドから抜けでると、着替えを済ませ、早速と厨房へ降りていく。
昨日のうちに、いくつか仕込みをしておいたので問題ないだろう。
自分用にコーヒーを入れると、お弁当作り、開始だ───!
唐揚げ用の油を温めているうちに、昨日のうちに作っておいたポテトサラダと、人参のフラッペを弁当に詰めていく。
今日のメインは、ノンアルコールシャンパンだ。
これに似合うおかずを必死に冷蔵庫から引っぱりだしていく。
「オリーブオイルと、サーモンのマリネもあったよねぇ……あとは果物でもつめておくか……」
冷蔵庫をばたりとしめ、常温に戻した鶏の唐揚げ肉を揚げていく。
「エビと…白身魚も揚げちゃお……これでだいたいいいかな……」
粗熱がとれた揚げものをお弁当に詰めながら、取り皿や箸、タルタルソースを準備。
あとはライ麦パンを塊のまま持っていって、向こうで切って食べることにする。
「なら、クリームチーズとジャムも持って行こう……」
大きめのクーラーボックスにみっちり詰めこまれた料理にドリンクたち
「……はぁ。お昼が待ちきれないっ」
莉子は連藤と楽しくランチを食べる姿を想像しながら、スマホを取りだした。
「……あ、もしもし、連藤さん?」
『莉子さん、おはよう』
『おはようございます。連藤さん、体調とか大丈夫です?」
『それをいうなら莉子さんの方だ。昨日は早く休めたのか?』
この問いに数秒の間が空く。
なぜなら急につくった臨時休業にテンションが上がってしまって、2時ごろまでドラマを観てしまっていたのだ。
「……あ、私は大丈夫ですよ! そうそう、9時前にはマンションの下に着けそうなんですが、支度ってどんな感じでしょう?」
『莉子さん、今日は少し早く眠ろう』
「……はい」
『8時50分ごろにはエントランスにいるようにする。ドライブ、楽しみにしてるよ』
スマホの通話は切れたが、莉子はスマホをじっと見つめてしまう。
連藤の声が楽しげだったからだ。
たしかに、朝からふたりで出かけるなど、初めてだ!
「……さ、ドライブエスコート、がんばるぞー!」
莉子の楽しげな声が厨房にぼわんと広がる。
その声に押されるように、入念に準備を整えていく莉子だった。
だが、現在、相当に疲労困憊している。
これだけ疲れているときは、一度意識をいれかえなければならない。
『……海が見たい』
ふと、思い浮かんだ言葉だった。
それを実現するためにはなにをすればいいのか───
あの臨時休業の手配を各所にしているすきに、連藤へメッセを入れていた。
『明日、ドライブに行きませんか? 臨時休業にしました』
理由が後ろに来るほどに、莉子はドライブに行きたかった。
連藤と、ドライブに行きたかったのだ。
ただ、ずっと考えていたことがある。
連藤が楽しんでくれるかどうか、わからないということだ。
目が見えない連藤に、どうドライブを楽しんでもらうか───
莉子のなかでこれが一番重要なものになっていた。
いつもどおりの時間に起きると、莉子は腕をぐんと伸ばした。
「今日はドライブランチです。お弁当、がんばるぞぉ」
いいながらベッドから抜けでると、着替えを済ませ、早速と厨房へ降りていく。
昨日のうちに、いくつか仕込みをしておいたので問題ないだろう。
自分用にコーヒーを入れると、お弁当作り、開始だ───!
唐揚げ用の油を温めているうちに、昨日のうちに作っておいたポテトサラダと、人参のフラッペを弁当に詰めていく。
今日のメインは、ノンアルコールシャンパンだ。
これに似合うおかずを必死に冷蔵庫から引っぱりだしていく。
「オリーブオイルと、サーモンのマリネもあったよねぇ……あとは果物でもつめておくか……」
冷蔵庫をばたりとしめ、常温に戻した鶏の唐揚げ肉を揚げていく。
「エビと…白身魚も揚げちゃお……これでだいたいいいかな……」
粗熱がとれた揚げものをお弁当に詰めながら、取り皿や箸、タルタルソースを準備。
あとはライ麦パンを塊のまま持っていって、向こうで切って食べることにする。
「なら、クリームチーズとジャムも持って行こう……」
大きめのクーラーボックスにみっちり詰めこまれた料理にドリンクたち
「……はぁ。お昼が待ちきれないっ」
莉子は連藤と楽しくランチを食べる姿を想像しながら、スマホを取りだした。
「……あ、もしもし、連藤さん?」
『莉子さん、おはよう』
『おはようございます。連藤さん、体調とか大丈夫です?」
『それをいうなら莉子さんの方だ。昨日は早く休めたのか?』
この問いに数秒の間が空く。
なぜなら急につくった臨時休業にテンションが上がってしまって、2時ごろまでドラマを観てしまっていたのだ。
「……あ、私は大丈夫ですよ! そうそう、9時前にはマンションの下に着けそうなんですが、支度ってどんな感じでしょう?」
『莉子さん、今日は少し早く眠ろう』
「……はい」
『8時50分ごろにはエントランスにいるようにする。ドライブ、楽しみにしてるよ』
スマホの通話は切れたが、莉子はスマホをじっと見つめてしまう。
連藤の声が楽しげだったからだ。
たしかに、朝からふたりで出かけるなど、初めてだ!
「……さ、ドライブエスコート、がんばるぞー!」
莉子の楽しげな声が厨房にぼわんと広がる。
その声に押されるように、入念に準備を整えていく莉子だった。
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