café R ~料理とワインと、ちょっぴり恋愛~

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第2章 カフェから巡る四季

第39話 臨時休業

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「ちょっとオーナー、顔色、めちゃ悪いよ!」

「……へ?」

 瑞樹の声に莉子は頬をかきながら立ち上がる。

「いや、ちょっと鏡で見てみろって」

 莉子は巧にうながされるがまま、厨房にとりつけた鏡の前へと移動した。

 まじまじと顔を見たのは数日ぶりな気がする───

 というのも、ここのところ遅くまでのお客が続いていたがあり、営業時間の延長と仕込みの時間の延長で、睡眠時間が削られ、まともに鏡を見る時間などなかった。
 これほどに顔色が悪いなど、気づくこともなく過ごしていたのだが、見てしまったら急に体の怠さがめぐりはじめる。

「……急に疲労感……」

 どすんとカウンターの椅子に腰かけると、莉子は大きく息を吸い込んだ。

「……よし、決めた!」

 莉子は言い切るや否や、カウンターの奥に潜りこむ。
 そこから取り出したのは、A4の用紙と太マジックだ。
 そしてためらうことなく書き込んでいく。


『日曜日から月曜日まで臨時休業。
 火曜定休で、
 水曜日から本格始動!』


「ということで……」

 すぐさまカフェのドアにそれを張りだすと、素早い指の動きでフェイスブックとツイッターに臨時休業情報をながしだす。
 巧はそれを見て急に慌てだす。

「明日、奈々美とここで待ち合わせしてたんだけど」
「別の店でお願いします」
「マジかよ……」

 すぐさま連絡をとりだす巧を横目で見ながら、莉子はひとつひとつのテーブルにまわりはじめた。
 そこで伝えていたのは……


『あと1時間で閉店となります。恐れ入りますがよろしくお願いします」


 急な閉店時間に驚くお客。
 どうしてかと尋ねられると、莉子は涼しい顔でいいきった。


『親族に不幸がありまして……』


 このフレーズは、誰も止められない。
 誰も、文句がいえない───


 今日のお客様はご理解が早いようで、次々に代金を支払い、スマートに退店をされていく。
 唯一残った巧と瑞樹だが、一向に動かない姿にギロリと莉子の視線が投げられる。

「えー……俺たちも?」

 巧が不服そうな声をあげるが、莉子は問答無用で頷いた。

「当たり前。早く帰って。明日連藤さんとドライブなんだから」

「「……は?」」

 ふたりの声が重なるが、いつそんな連絡をしていたのか、逆に聞きたくなる瑞樹と巧だった。
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