café R ～料理とワインと、ちょっぴり恋愛～

第２章 カフェから巡る四季

第28話 ふたりの謝罪

　ふたりが向かった先は、café R───

　ドアベルを鳴らしてカフェへと入ったふたりだが、直角に頭が下がる。

「「莉子さん、ごめんなさいっ！」」

　他にも客がいるのだが、オーナーの表情の固さに何か理由があるのだろうと、ここは見ないフリを決めたらしい。
　腕組みをして見下ろす莉子に差し出されたのは、名店中の名店、製菓店カドワキの有名なベイクドチーズケーキのホールである。

　莉子は箱を見下ろし、にこりともしない。

「それで？」

　冷たい声が放たれる。

「僕ら、連藤さんに言われて気づいたんです。……簡単なんて言ってごめんなさい！」
「それとお詫びになるかわからないけど、莉子さんの好物のチーズケーキ！」

　巧がずいとケーキを押し込んだ。

「なるほど。それを献上して私を取り込むつもり？」

　彼女はケーキを睨み、ふたりに凄む。
　凄まれたふたりは、明らかに狼狽えている。
　莉子は横目でふたりをみやり、

「……ここのスフレも好きなんだよね」

　彼女がぽろりと呟いた。

「明日、持ってきます！」

　瑞樹がすかさず返すと、それに莉子はにんまりと微笑んだ。

「よろしいっ」
　
　莉子は下げ続けるふたりの頭をポンポンと叩くと、

「これからはもう少し考えて動いてみようね？」

　涙目のふたりの顔がある。
　それに莉子は吹き出し、再びふたりの頭をポンポンと叩く。

「大丈夫。もう、怒ってないよ？　日にちは今週末だったよね？　夜のテラス席を貸し切りにして、そこで料理を出してあげる。雨が降っても決行だよ」

　莉子はケーキを崇めるように奥へと運んでいく。
　その背を眺め、巧と瑞樹は手を取り合ったのは言うまでもない！