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第1章 café R 〜ふたりの出会い、みんなの出会い〜
第20話:ふたりの、気持ち
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沈黙のあと、なんとか声を出した二人だが、同時になってしまう。
「……すみません」
先に謝ったのは連藤だ。
「オーナー、痛みはひどい、ですか……?」
莉子は「いいえ」と答えると、連藤が苦く笑う。
「嘘はつかないでください。私は目が見えないですが、病状は理解している。なので、正直に教えてください」
ピシャリと言われ、莉子は悪さをした子供のように細い声を返した。
「……全身、筋肉痛みたいですけど、それぐらいで……だから、大丈夫です」
「そうですか」
安心したように連藤は笑う。
そんな彼を莉子は改めて見るが、口がへの字に曲がった。
かなし痛々しいからだ。
整った顔が所々青い痣が浮かび、額には大きなガーゼが貼られている。
「連藤さんこそ、怪我の具合は……?」
「私はそれほどじゃない。膝は多少痛むが、それだけです。オーナーほどじゃない」
再びの沈黙がよぎる。
どこから何を聞いて話せばいいのか。
お互いに手探りだ。
「あの……連藤さん、」
莉子の声に、連藤が顔を上げた。
「ごめんなさい、私のせいで……」
莉子が紡いだ言葉は謝罪だった。
「私のせいで、あんな……本当にごめんなさい」
「お、オーナー、あなたが謝る必要はないでしょう」
「いいえ! あんな怖い思いをさせてしまったんです……私は連藤さんを守れなかった……」
莉子の手が震えだす。
あのときの恐怖が蘇る。
連藤に向けられたナイフの鋭さ、男たちの罪悪感の無さ、自身の無力さ…………
すべてが恐怖に変換されて押し寄せてくる。
それは感情の行き場を失い、突然降り出した雨のように大粒の涙となって落ちだした。
「……ごめんなさい」
絞り出された莉子の声は小さい。
だけれど、必死な言葉なのは音でわかる。
連藤は布団を辿るように手を滑らせると、莉子の左手を取った。
その手を自身の掌の上に乗せると、彼は優しく莉子の手を挟む。
「確かに、恐ろしかった」
莉子の肩がびくりと震える。
辛い思いをさせたという現実が莉子を殴るのだ。
だが言葉とは裏腹に、連藤の手は温かく、そっと手を撫でる。
「恐ろしかったのは、あなたのことです。あなたが死ぬかと思ってとても恐ろしかった。怖かった。だけどあなたは何も伝えてくれない……」
悲しそうに目を伏せて、言葉をつなげるように薄い唇を開く。
だが、その顔には怒りがにじむ。
「……俺がどれだけ心配したかわかるだろうか……あなたが思う何倍も何十倍も、俺は心配したんだ……! 音以外に頼るものがない俺を、どれだけ不安にさせたと……っ」
少しだけ莉子の手を強く握るが、それだけで思いがわかる。
闇雲に強いわけじゃない。
莉子を傷めないように、だけれど強く強く手に力が込められている。
連藤は一度深呼吸をした。
いつも通りの連藤へと戻る。
「……あなたの命が無事であったことが、俺のなによりの救いなんだ。……だから、もう謝らないでほしい……」
その連藤の言葉が、莉子の胸に刺さりこむ。
莉子は自分1人が苦しいと思い込んでいた。
守れなかった自分が悪いと思い込んでいた。
だけれど、連藤さんも私と同じ、守りたい気持ちだったんだ────
「……すみません」
先に謝ったのは連藤だ。
「オーナー、痛みはひどい、ですか……?」
莉子は「いいえ」と答えると、連藤が苦く笑う。
「嘘はつかないでください。私は目が見えないですが、病状は理解している。なので、正直に教えてください」
ピシャリと言われ、莉子は悪さをした子供のように細い声を返した。
「……全身、筋肉痛みたいですけど、それぐらいで……だから、大丈夫です」
「そうですか」
安心したように連藤は笑う。
そんな彼を莉子は改めて見るが、口がへの字に曲がった。
かなし痛々しいからだ。
整った顔が所々青い痣が浮かび、額には大きなガーゼが貼られている。
「連藤さんこそ、怪我の具合は……?」
「私はそれほどじゃない。膝は多少痛むが、それだけです。オーナーほどじゃない」
再びの沈黙がよぎる。
どこから何を聞いて話せばいいのか。
お互いに手探りだ。
「あの……連藤さん、」
莉子の声に、連藤が顔を上げた。
「ごめんなさい、私のせいで……」
莉子が紡いだ言葉は謝罪だった。
「私のせいで、あんな……本当にごめんなさい」
「お、オーナー、あなたが謝る必要はないでしょう」
「いいえ! あんな怖い思いをさせてしまったんです……私は連藤さんを守れなかった……」
莉子の手が震えだす。
あのときの恐怖が蘇る。
連藤に向けられたナイフの鋭さ、男たちの罪悪感の無さ、自身の無力さ…………
すべてが恐怖に変換されて押し寄せてくる。
それは感情の行き場を失い、突然降り出した雨のように大粒の涙となって落ちだした。
「……ごめんなさい」
絞り出された莉子の声は小さい。
だけれど、必死な言葉なのは音でわかる。
連藤は布団を辿るように手を滑らせると、莉子の左手を取った。
その手を自身の掌の上に乗せると、彼は優しく莉子の手を挟む。
「確かに、恐ろしかった」
莉子の肩がびくりと震える。
辛い思いをさせたという現実が莉子を殴るのだ。
だが言葉とは裏腹に、連藤の手は温かく、そっと手を撫でる。
「恐ろしかったのは、あなたのことです。あなたが死ぬかと思ってとても恐ろしかった。怖かった。だけどあなたは何も伝えてくれない……」
悲しそうに目を伏せて、言葉をつなげるように薄い唇を開く。
だが、その顔には怒りがにじむ。
「……俺がどれだけ心配したかわかるだろうか……あなたが思う何倍も何十倍も、俺は心配したんだ……! 音以外に頼るものがない俺を、どれだけ不安にさせたと……っ」
少しだけ莉子の手を強く握るが、それだけで思いがわかる。
闇雲に強いわけじゃない。
莉子を傷めないように、だけれど強く強く手に力が込められている。
連藤は一度深呼吸をした。
いつも通りの連藤へと戻る。
「……あなたの命が無事であったことが、俺のなによりの救いなんだ。……だから、もう謝らないでほしい……」
その連藤の言葉が、莉子の胸に刺さりこむ。
莉子は自分1人が苦しいと思い込んでいた。
守れなかった自分が悪いと思い込んでいた。
だけれど、連藤さんも私と同じ、守りたい気持ちだったんだ────
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・・・・・・・・・・
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