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第1章 café R 〜ふたりの出会い、みんなの出会い〜
第17話:普通ではない夜
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ランチをこなし、現在18時。
散歩帰りなのか、学生カップルがコーヒーを飲みながら語らっている。
「……いいなぁ」
つい口から出た言葉に、莉子は驚いた。
──何を羨ましがるっ!
自問自答してみるが、連藤のことだとすぐに気づく。
莉子は自身の顔が赤くなるのがわかり、頬を冷たい手で冷やしたとき、いきなりスマホが震えた。
見ると、連藤の2文字が浮かび上がっている。
あまりのタイミングの良さに驚くが、なんでもない。なんでもない。と心の中で数回唱えてから、カウンターに隠れるようにスマホを開いた。
『残業が入った。20時には間違いなく来店します。』
莉子はそのメッセージにちょっと笑ってしまう。
連藤さんでも焦ることがあるんだ。そう思ったのだ。
今まで丁寧なメッセージで届いていたのに、よっぽどこの残業が急だったのがわかる。
端的な「残業が入った」という文字に、ほのかに嬉しく感じたのはどうしてだろう。
連藤の素が見えたからかもしれない。
『ご予約は承っておりますので、多少遅くても大丈夫です。お待ちしております』
すぐに、「ありがとう」の5文字が届き、莉子はスマホをそっとエプロンのポケットに忍ばせた。
なんとなく、もう震えませんように。そう思いながら莉子はスマホをしまったのだった。
20時までの間にお客様が数組、出たり入ったりを繰り返している。
会社帰りのサラリーマン、夕食後の散歩に立ち寄った奥様、ディナーデートの前に立ち寄ったであろうカップル──
割と小刻みの来店に、20時までの時間が稼げるので、莉子は気分がいい。
誰かを待つ時間は、とても辛い。
両親が帰ってこなかった夜を思い出すからだ。
だからこそ、ずっと、独りでここまで来たんだ。
改めて自分の気持ちに向き合わされたとき、お店のお客は空っぽになった。
店の時計を見上げると、20時15分。
ちょっと遅れてるだろうか。
多少の遅れはあるもの。
ただ、あの連藤であれば、遅れるときは連絡がもらえるような気もする。
スマホをポケットから取り出してみると、1通連絡がある。
『今から会社を出る。遅くなってすまない』
その文字は19時48分となっている。
仮に歩いていたとしても、夜も朝も時間は変わらない人だ。15分でくるのは間違いない。
タクシーを使えばもっと早いはず。
──どこかで転んで、立ち上がれなくなってるとか!?
目の見えない人の突発的な事故を想像して莉子の顔が青くなる。
一度外へ出ようとしたとき、スマホが鳴った。
「……いっ!」
連藤の文字。しかも電話だ。
恐る恐るタップする。
「……は、はい、」
「オーナー! けいさ……っ!」
電話が切れた。
意味がわからず固まっていると、外から物音がする。
大きなものがぶつかる音だ。
焦るよりも怖い気持ちが勝っている。
「警備会社の人に言われた通りに」
莉子は呟き、
「……まず、ボタンを押す。それから安全確認」
莉子は警備会社通報のボタンを押し、店の中に置いてある傘を手に持ち、ゆっくりと外へ向かうが、手は汗でびっちょりだし、口から心臓は吐きそうだし、胃が縮んで痛い。
「なんでこんな時に……」
ようやくと店の裏手に移動し、かろうじて街灯が照らす光景に、莉子は声を詰まらせた。
そこにあったのは、4人の男に殴られ蹴られる、連藤の姿だった────
散歩帰りなのか、学生カップルがコーヒーを飲みながら語らっている。
「……いいなぁ」
つい口から出た言葉に、莉子は驚いた。
──何を羨ましがるっ!
自問自答してみるが、連藤のことだとすぐに気づく。
莉子は自身の顔が赤くなるのがわかり、頬を冷たい手で冷やしたとき、いきなりスマホが震えた。
見ると、連藤の2文字が浮かび上がっている。
あまりのタイミングの良さに驚くが、なんでもない。なんでもない。と心の中で数回唱えてから、カウンターに隠れるようにスマホを開いた。
『残業が入った。20時には間違いなく来店します。』
莉子はそのメッセージにちょっと笑ってしまう。
連藤さんでも焦ることがあるんだ。そう思ったのだ。
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連藤の素が見えたからかもしれない。
『ご予約は承っておりますので、多少遅くても大丈夫です。お待ちしております』
すぐに、「ありがとう」の5文字が届き、莉子はスマホをそっとエプロンのポケットに忍ばせた。
なんとなく、もう震えませんように。そう思いながら莉子はスマホをしまったのだった。
20時までの間にお客様が数組、出たり入ったりを繰り返している。
会社帰りのサラリーマン、夕食後の散歩に立ち寄った奥様、ディナーデートの前に立ち寄ったであろうカップル──
割と小刻みの来店に、20時までの時間が稼げるので、莉子は気分がいい。
誰かを待つ時間は、とても辛い。
両親が帰ってこなかった夜を思い出すからだ。
だからこそ、ずっと、独りでここまで来たんだ。
改めて自分の気持ちに向き合わされたとき、お店のお客は空っぽになった。
店の時計を見上げると、20時15分。
ちょっと遅れてるだろうか。
多少の遅れはあるもの。
ただ、あの連藤であれば、遅れるときは連絡がもらえるような気もする。
スマホをポケットから取り出してみると、1通連絡がある。
『今から会社を出る。遅くなってすまない』
その文字は19時48分となっている。
仮に歩いていたとしても、夜も朝も時間は変わらない人だ。15分でくるのは間違いない。
タクシーを使えばもっと早いはず。
──どこかで転んで、立ち上がれなくなってるとか!?
目の見えない人の突発的な事故を想像して莉子の顔が青くなる。
一度外へ出ようとしたとき、スマホが鳴った。
「……いっ!」
連藤の文字。しかも電話だ。
恐る恐るタップする。
「……は、はい、」
「オーナー! けいさ……っ!」
電話が切れた。
意味がわからず固まっていると、外から物音がする。
大きなものがぶつかる音だ。
焦るよりも怖い気持ちが勝っている。
「警備会社の人に言われた通りに」
莉子は呟き、
「……まず、ボタンを押す。それから安全確認」
莉子は警備会社通報のボタンを押し、店の中に置いてある傘を手に持ち、ゆっくりと外へ向かうが、手は汗でびっちょりだし、口から心臓は吐きそうだし、胃が縮んで痛い。
「なんでこんな時に……」
ようやくと店の裏手に移動し、かろうじて街灯が照らす光景に、莉子は声を詰まらせた。
そこにあったのは、4人の男に殴られ蹴られる、連藤の姿だった────
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