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第1章 café R 〜ふたりの出会い、みんなの出会い〜
第12話:その日の夜
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準備を整えておいた莉子の元に、時間通り連藤が来店する。
開けられたドアに莉子がかけより、手を掴むと、自分の肩へとそっと乗せた。
「カウンターにしますね」
そう言った莉子の声に、返事のかわりに肩が優しく握られる。
ゆっくりと歩き、カウンターの椅子に連藤の手を乗せると、器用にそのままするりと座る。
「オーナー、お客は?」
「今日は連藤さん、貸切ですよ!」
「言いようだな」
莉子は慣れた手つきで準備をしながら、連藤に声をかける。
「連藤さん、いかがします? 白飲んでから、赤に行きます?」
「そうしてもらおうかな」
莉子は白ワインを注ぎ、チーズとクラッカーを差し出した。
「白ワインは2時。正面にお皿です。クラッカーとチーズの盛り合わせです」
クラッカーなどの皿盛りの場合、連藤は慎重に皿をなぞり、そこから食べ物を探す。そして、手に当たったものから食べるという流れだ。
「連藤さん、さしでがましいかもしれませんが……」
ワインで飲み込んだ連藤が首をかしげる。
「なんだろう?」
「私、皿の場所とかお伝えしましょうか? 手を借りる感じになりますけど」
「どういう……?」
「こんな感じ」
莉子が連藤の背後につき、右手をとった。
「ここにお皿、お皿の大きさはこのぐらい。あとはつまんで……って感じですけど」
連藤は思わず微笑んでしまう。
今までこれを不都合と思ったことはなかったし、これ以上にやりようもないと思っていたからだ。
皿の大きさを知る作業も普通のこと。
でも………
「オーナー、これ、できたらお願いしてもいいかな?」
「はい、よろこんで!」
連藤は莉子が自分の手を触れる瞬間がたまらなく好きなのことを自覚した。
そっと、少し怯えたように触れる感じ。そして、細くて冷たい手。
まるで人形のようで、だけれど感情があって。
連藤は莉子の手に触れると、生きている、そう感じるのだ。
暗い視界のなかに、光があふれるような、そんな感覚だ。
不思議だけれど、そう思う。
「オーナー、ありがとう」
だからこそ、自然に笑顔もこぼれてしまう。
「え……いや、いいえ!」
連藤は莉子の返事にまた笑い、グラスに指を絡めた。
今日のワインは酸味があって爽やかだ。チーズにもよく合う。
「オーナーも飲んでは?」
「あ、そうですね。あの、お肉のタイミングでご一緒してもいいですか……?」
「オーナーのタイミングで」
「ありがとうございます」
莉子はサラダを滑りだし、お肉の準備に取りかかった。
今日のステーキは表面をカリッと強火で焼いて、あとは余熱で火を入れていく。
「すんごいいい部位とかではないんですけど、肉らしい鉄分を感じるお肉で……ぜひ、アメリカのジンファンデルでご一緒して欲しいと思って」
盛り付けの準備をしてから焼いていくが、ふと、莉子の頭をよぎるものがある。
───今って、2人っきりじゃない!?!?
だが、明日の方がドキドキするのはどうしてだろう?
これは仕事の延長で、明日はオフなのに会うからだろうか……
きっとそうだっ!!!
それに気づいてしまっては手元が震え始める。
───普通にしなくちゃ!
焦る莉子の心と料理を作らなくちゃという気持ちでちぐはぐになっていく。
なんとかお肉を焼きあげ、盛り付けた莉子だが、まだ意識している気持ちがある。
「連藤さん、お肉、できました」
上ずる声をころして皿を出すが、グラスに皿をぶつけてしまった。
傾いたグラスを手を伸ばして止めた莉子は、ほっと息をつく。
が、腕を伸ばしたせいで、お肉もワインも無事なのに、連藤の顔が目の前にあるのはどうしてか!
「あ、え……」
戸惑う莉子の頬に、連藤の指が伸び、するりと頬をなぞっていく。
ゆっくりと連藤は莉子の顔を手で包み、笑顔を浮かべた。
「小さい顔だ」
あまりの衝撃に、莉子は言葉にならない。
はっきりと見える、イケメンの連藤の顔。これほどまじまじと見たことはなかったけれど、近づいてもイケメンって犯罪だと思う!!!
莉子は慌てながらも連藤の両手を外し、
「あ、あああ、赤ワイン、入れますから!」
言いながらカウンターへと戻っていく。
連藤は正面に向き直ったものの、自分がどうしてこうしてしまったのか、不思議に思っていた。
触れてみたい。どんな顔なのか、感じてみたい。
そう思ってはいたけれど、とっさに触れるとは連藤自身、思っていなかった。
連藤は手の感触を思い出して考える。
───少し熱い頬は肉を調理していたからだけど、それでも可愛らしいし、輪郭は卵形だった。それに顔が手にすっぽりとおさまるほどオーナーの顔が小さい。美人系というのも頷ける───
「れ、れ連藤さん、今日はジンファンデル、アメリカの赤ワインです。どうぞ!」
まだ上ずったままの声をさらしながら、莉子が言う。
それに連藤はまたくすりと笑い「ありがとう」何もなかったように返してくる。
莉子はこの余裕がたまらなくいけ好かない。
私だけドキドキしてて、なんなのぉぉぉ!!!!
まだ赤みが引かない頬をさすり、自分もワインを飲んで、牛肉を頬張るのだった。
開けられたドアに莉子がかけより、手を掴むと、自分の肩へとそっと乗せた。
「カウンターにしますね」
そう言った莉子の声に、返事のかわりに肩が優しく握られる。
ゆっくりと歩き、カウンターの椅子に連藤の手を乗せると、器用にそのままするりと座る。
「オーナー、お客は?」
「今日は連藤さん、貸切ですよ!」
「言いようだな」
莉子は慣れた手つきで準備をしながら、連藤に声をかける。
「連藤さん、いかがします? 白飲んでから、赤に行きます?」
「そうしてもらおうかな」
莉子は白ワインを注ぎ、チーズとクラッカーを差し出した。
「白ワインは2時。正面にお皿です。クラッカーとチーズの盛り合わせです」
クラッカーなどの皿盛りの場合、連藤は慎重に皿をなぞり、そこから食べ物を探す。そして、手に当たったものから食べるという流れだ。
「連藤さん、さしでがましいかもしれませんが……」
ワインで飲み込んだ連藤が首をかしげる。
「なんだろう?」
「私、皿の場所とかお伝えしましょうか? 手を借りる感じになりますけど」
「どういう……?」
「こんな感じ」
莉子が連藤の背後につき、右手をとった。
「ここにお皿、お皿の大きさはこのぐらい。あとはつまんで……って感じですけど」
連藤は思わず微笑んでしまう。
今までこれを不都合と思ったことはなかったし、これ以上にやりようもないと思っていたからだ。
皿の大きさを知る作業も普通のこと。
でも………
「オーナー、これ、できたらお願いしてもいいかな?」
「はい、よろこんで!」
連藤は莉子が自分の手を触れる瞬間がたまらなく好きなのことを自覚した。
そっと、少し怯えたように触れる感じ。そして、細くて冷たい手。
まるで人形のようで、だけれど感情があって。
連藤は莉子の手に触れると、生きている、そう感じるのだ。
暗い視界のなかに、光があふれるような、そんな感覚だ。
不思議だけれど、そう思う。
「オーナー、ありがとう」
だからこそ、自然に笑顔もこぼれてしまう。
「え……いや、いいえ!」
連藤は莉子の返事にまた笑い、グラスに指を絡めた。
今日のワインは酸味があって爽やかだ。チーズにもよく合う。
「オーナーも飲んでは?」
「あ、そうですね。あの、お肉のタイミングでご一緒してもいいですか……?」
「オーナーのタイミングで」
「ありがとうございます」
莉子はサラダを滑りだし、お肉の準備に取りかかった。
今日のステーキは表面をカリッと強火で焼いて、あとは余熱で火を入れていく。
「すんごいいい部位とかではないんですけど、肉らしい鉄分を感じるお肉で……ぜひ、アメリカのジンファンデルでご一緒して欲しいと思って」
盛り付けの準備をしてから焼いていくが、ふと、莉子の頭をよぎるものがある。
───今って、2人っきりじゃない!?!?
だが、明日の方がドキドキするのはどうしてだろう?
これは仕事の延長で、明日はオフなのに会うからだろうか……
きっとそうだっ!!!
それに気づいてしまっては手元が震え始める。
───普通にしなくちゃ!
焦る莉子の心と料理を作らなくちゃという気持ちでちぐはぐになっていく。
なんとかお肉を焼きあげ、盛り付けた莉子だが、まだ意識している気持ちがある。
「連藤さん、お肉、できました」
上ずる声をころして皿を出すが、グラスに皿をぶつけてしまった。
傾いたグラスを手を伸ばして止めた莉子は、ほっと息をつく。
が、腕を伸ばしたせいで、お肉もワインも無事なのに、連藤の顔が目の前にあるのはどうしてか!
「あ、え……」
戸惑う莉子の頬に、連藤の指が伸び、するりと頬をなぞっていく。
ゆっくりと連藤は莉子の顔を手で包み、笑顔を浮かべた。
「小さい顔だ」
あまりの衝撃に、莉子は言葉にならない。
はっきりと見える、イケメンの連藤の顔。これほどまじまじと見たことはなかったけれど、近づいてもイケメンって犯罪だと思う!!!
莉子は慌てながらも連藤の両手を外し、
「あ、あああ、赤ワイン、入れますから!」
言いながらカウンターへと戻っていく。
連藤は正面に向き直ったものの、自分がどうしてこうしてしまったのか、不思議に思っていた。
触れてみたい。どんな顔なのか、感じてみたい。
そう思ってはいたけれど、とっさに触れるとは連藤自身、思っていなかった。
連藤は手の感触を思い出して考える。
───少し熱い頬は肉を調理していたからだけど、それでも可愛らしいし、輪郭は卵形だった。それに顔が手にすっぽりとおさまるほどオーナーの顔が小さい。美人系というのも頷ける───
「れ、れ連藤さん、今日はジンファンデル、アメリカの赤ワインです。どうぞ!」
まだ上ずったままの声をさらしながら、莉子が言う。
それに連藤はまたくすりと笑い「ありがとう」何もなかったように返してくる。
莉子はこの余裕がたまらなくいけ好かない。
私だけドキドキしてて、なんなのぉぉぉ!!!!
まだ赤みが引かない頬をさすり、自分もワインを飲んで、牛肉を頬張るのだった。
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