老舗あやかし和菓子店 小洗屋

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唐傘妖怪・一本傘のしずくちゃん編

小洗屋のシラタマと一本傘のしずくちゃん 2話

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 シラタマの手が止まる。
 見上げた空は晴れ、雲すらない。

「お天気予報は、晴れ、だったよ?」
「……そうだね」

 しずくちゃんはつぶやいて、黙った。
 川のせせらぎが辺りに響く。

 シラタマはもう一度小豆を研いでいく。

 じゃりじゃりしゃりしゃり。
 しゃりじゃりしゃりじゃり。

「シラタマちゃん、小豆ってどうなったら研ぎおわるの?」

 不意の質問に、シラタマのヒゲがぴくりとゆれる。

「うんとねー……」

 じゃりじゃりと小豆を回して、ザルを持ち上げた。

「……こんな感じ。ツヤツヤして、小豆の色がキラキラしたらいいの! 研ぎすぎたらザラザラして、キラキラしなくなるんだよ」
「へぇ……そうなんだぁ」

 アメジストの原石のようにきらめく小豆をシラタマはニコニコと眺める。
 日差しにかざし、チラチラと光る川面のようで、とても美しい。

「シラタマちゃんは、小豆、好きなんだ」
「うん! あ、しずくちゃんは小豆、嫌いだった? ごめんね」
「ちがう、ちがうの」

 しずくちゃんは傘をくるくると回す。
 言葉を選んでいるんだろうか。
 シラタマは目をまわさないように傘から目をそらし、ザルの小豆を乾かす作業にはいる。
 ハンモックのように伸ばした布に広げるのだ。
 涼しい風に吹かれると、とても気持ちよさそうに布が揺れ、小豆から、ざざーざざーと音が鳴る。

「終わったぁ。しずくちゃん、あっちで串団子、食べよ!」

 シラタマは木陰に移動し、胡麻団子の包みを開けていく。
 確かに1日経ってはいるが、ふんわりと胡麻の香りがシラタマの鼻をくすぐってくる。

「しずくちゃん、取って」
「ありがと」

 2人そろって頬張る。
 胡麻の風味はもちろん、一度焼いてある団子の焦げた風味が鼻を抜けていく。さらに歯ごたえがいい!

「おいし!」
「でしょ。父ちゃん自慢の胡麻餡だよ」

 もちもちと食べていると、しずくちゃんがぼそりという。

「私ね、天気が予想できるのも嫌いだし、この顔も嫌いだし、髪の毛の色も大嫌いなの……」

 傘を肩に置いてシラタマを見る。

「なんで、そんなに、シラタマちゃんは好きでいられるの……?」

 本当に不思議そうに見つめられ、シラタマはどう答えていいかわからない。
 シラタマにも、嫌いなものがあるからだ。
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