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魔女の娘のアリーちゃん編
小洗屋のシラタマと魔女の娘のアリーちゃん 3話
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シラタマは渡されたリンゴを大事に抱えて、果樹園で自由に食べて休めるスペースに移動した。
ここでは、果物ナイフとまな板が使えるようになっているからだ。
「ここで、食べましょ」
アリーちゃんとリッカちゃんを座らせると、シラタマは果物ナイフとまな板を持ってくる。そして、するするとリンゴの皮をむいていく。
「じょーずです。すごい、シラタマ!」
ぱちぱちと手を叩くアリーちゃんに、リッカちゃんは胸を張る。
「シラタマちゃんはめっちゃ器用なんだよっ。和菓子屋の看板娘だしね!」
なぜ、リッカちゃんが自慢するのかわからないが、丁寧にむいたリンゴを6等分し、ころんと並べる。
それぞれまな板へ手をのばし、ひと口。
……しゃり。
しっかりした歯応えと、噛むほどに酸味と甘みが重なって、鼻からぬけるリンゴの香りはとてもさわやか。
今まで食べてきたリンゴとは、質も味もちがう気がする。
「私、こんなリンゴ初めてかも」
感激するシラタマに、アリーちゃんはうふふと笑う。
「アタリのリンゴ、さがすのちょっとむずかし。わかる。これ、すごくおいしいっ」
3つ目に手をのばしたリッカちゃんの手を、シラタマはぱちりと叩く。
「1人、2切れずつ。リッカちゃん、算数、できるよね」
睨んだシラタマの目に、リッカちゃんの体がぶるりとふるえる。
「ごめん、なさい」
果樹園の売店にはリンゴ味のラムネがある。
3人でラムネを飲みながら、アリーちゃんは「よかった」とつぶやいた。
その言葉にくいついたのはリッカちゃんだ。
「なにが?」
瓶のなかのビー玉が取れないか、ベロで四苦八苦しているが、視線はアリーちゃんに向いている。
アリーちゃんは金髪の細く長いおさげを指にまきつけ、笑う。
「ワタシ、洋菓子のお店の娘。シラタマ、和菓子屋さん。だから、仲良くできない思ってた……」
「なんで?」
今度は、シラタマだ。
きゅるきゅるの目でアリーちゃんを見る。
どうしてなのか、さっぱりわからない。
どっちのお菓子もおいしいし、どっちもステキなお店だ。
むしろ、洋菓子のことを色々聞いてみたいシラタマにとって、なんで仲良くできないのか、不思議でたまらない。
「村のなか、お菓子屋、2つ、ダメって、油すましのおばさん、いってた」
「「あの、油婆の話は聞いちゃダメ!」」
シラタマとリッカちゃんの声が重なる。
「あの婆ちゃん、なんでも大きくいうからさー」
すっかり飲み終わって瓶をぶんぶん振り回すリッカちゃんに、アリーちゃんは首を横に振る。
「ママもいってた。西洋の妖怪、ここ少ない。だから、友だちむずかしいかもって……」
「そっかー。でも、私は、アリーちゃんと友だちになりたかったけどな。だって、知らないところの、知らないこと知ってるんだもん。私、ずっとお話したかったんだー」
シラタマはふわふわの肉球を差しだした。
アリーちゃんはその手をにぎり、うふふと笑う。
リッカちゃんに似て、大きな口だけど、にっこり笑うアリーちゃんは、リッカちゃんより上品に見える。
「ねね、向こうの男子って、どんな女の子が好き?」
シラタマは思う。
リッカちゃんみたいな子じゃない子だって。
言わなかったけど。
ここでは、果物ナイフとまな板が使えるようになっているからだ。
「ここで、食べましょ」
アリーちゃんとリッカちゃんを座らせると、シラタマは果物ナイフとまな板を持ってくる。そして、するするとリンゴの皮をむいていく。
「じょーずです。すごい、シラタマ!」
ぱちぱちと手を叩くアリーちゃんに、リッカちゃんは胸を張る。
「シラタマちゃんはめっちゃ器用なんだよっ。和菓子屋の看板娘だしね!」
なぜ、リッカちゃんが自慢するのかわからないが、丁寧にむいたリンゴを6等分し、ころんと並べる。
それぞれまな板へ手をのばし、ひと口。
……しゃり。
しっかりした歯応えと、噛むほどに酸味と甘みが重なって、鼻からぬけるリンゴの香りはとてもさわやか。
今まで食べてきたリンゴとは、質も味もちがう気がする。
「私、こんなリンゴ初めてかも」
感激するシラタマに、アリーちゃんはうふふと笑う。
「アタリのリンゴ、さがすのちょっとむずかし。わかる。これ、すごくおいしいっ」
3つ目に手をのばしたリッカちゃんの手を、シラタマはぱちりと叩く。
「1人、2切れずつ。リッカちゃん、算数、できるよね」
睨んだシラタマの目に、リッカちゃんの体がぶるりとふるえる。
「ごめん、なさい」
果樹園の売店にはリンゴ味のラムネがある。
3人でラムネを飲みながら、アリーちゃんは「よかった」とつぶやいた。
その言葉にくいついたのはリッカちゃんだ。
「なにが?」
瓶のなかのビー玉が取れないか、ベロで四苦八苦しているが、視線はアリーちゃんに向いている。
アリーちゃんは金髪の細く長いおさげを指にまきつけ、笑う。
「ワタシ、洋菓子のお店の娘。シラタマ、和菓子屋さん。だから、仲良くできない思ってた……」
「なんで?」
今度は、シラタマだ。
きゅるきゅるの目でアリーちゃんを見る。
どうしてなのか、さっぱりわからない。
どっちのお菓子もおいしいし、どっちもステキなお店だ。
むしろ、洋菓子のことを色々聞いてみたいシラタマにとって、なんで仲良くできないのか、不思議でたまらない。
「村のなか、お菓子屋、2つ、ダメって、油すましのおばさん、いってた」
「「あの、油婆の話は聞いちゃダメ!」」
シラタマとリッカちゃんの声が重なる。
「あの婆ちゃん、なんでも大きくいうからさー」
すっかり飲み終わって瓶をぶんぶん振り回すリッカちゃんに、アリーちゃんは首を横に振る。
「ママもいってた。西洋の妖怪、ここ少ない。だから、友だちむずかしいかもって……」
「そっかー。でも、私は、アリーちゃんと友だちになりたかったけどな。だって、知らないところの、知らないこと知ってるんだもん。私、ずっとお話したかったんだー」
シラタマはふわふわの肉球を差しだした。
アリーちゃんはその手をにぎり、うふふと笑う。
リッカちゃんに似て、大きな口だけど、にっこり笑うアリーちゃんは、リッカちゃんより上品に見える。
「ねね、向こうの男子って、どんな女の子が好き?」
シラタマは思う。
リッカちゃんみたいな子じゃない子だって。
言わなかったけど。
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