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座敷童のサチヨちゃん編
小洗屋のシラタマと座敷童のサチヨちゃん 2話
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シラタマは、サチヨちゃんの手を取った。
研いだ小豆といっしょに小豆小屋へと連れていこうと思ったのだ。
それに、カッパを着ていても着物が蒸れて濡れてしまったので、乾かしたい。
「サチヨちゃん、雨、また降らせることできる?」
「もう降ると思うよ」
サチヨちゃんのいうとおり、ピチャピチャと木々を濡らす音が聞こえはじめる。
一気にバケツをひっくり返したような雨になり、小走りで小屋へと入ると、薄暗い室内が広がる。
簡易な小屋に見えたが、中は意外と広く、複数の棚には小豆を洗う道具がしまわれ、さらには食事が作れるように竈もある。
「ちょっと待ってね」
シラタマはカッパを脱いで土間にかけると、濡れた草履をポンと脱いで、居間に上がった。
そこには囲炉裏があり、シラタマが慣れた手つきで火をおこしていく。
「火がついた。上がって、サチヨちゃん」
サチヨちゃんを火のそばへに座らせると、シラタマはほしてあった手ぬぐいで顔をゴシゴシふき、濡れた着物を衣紋掛けにかけ、すぐに洗った小豆がかわくように布に広げる。
「ごめんね、シラタマちゃん……」
サチヨちゃんの泣きそうな困ったような顔が囲炉裏の火にあぶられて見える。
「なんで?」
半襦袢姿で、いそいそと動き回るシラタマをサチヨは目で追う。
「だって、私のせいで隠れたりとか……」
「大丈夫だよ? 小豆を洗い終えたら、一度着物はここで乾かそうって思ってたし」
シラタマは囲炉裏に鉄瓶を置き、お湯を沸かしだした。
壁に置かれた小さな箪笥には、シラタマの着替えが一式と、甘納豆がある。
屏風の後ろで着替えをおえたシラタマは、甘納豆の小袋を手に戻ってきた。
「お茶飲みながら、甘納豆食べよ」
お茶を淹れる間、屋根の雨音の激しさは止まらない。
父と母は、雨がひどくなったら小屋にいるといってあるので、心配はない。
なぜなら、この川は絶対に水が溢れないので、安全なのだ。
少し濃いめの緑茶を入れて、小皿に甘納豆を転がしていく。
シラタマはサチヨちゃんと自分用に甘納豆を分け、さっそく一粒頬張った。
「……うふふ、おいし」
ずずっとお茶を飲むシラタマにならってか、サチヨちゃんも甘納豆を一粒つまみあげた。
小粒の甘納豆は指でつぶせるほどやわらかい。
だが、砂のようにきらめく砂糖がまぶされて、とてもきれいだ。
ひと口。
サチヨちゃんの顔がほころんだ。
「……あま~い……おいしい……」
お茶をずずっとすすって、もう一粒。
そのうちにサチヨちゃんの顔が笑顔になっていく。
空になった皿に甘納豆を追加で入れながら、
「サチヨちゃん、お話、してくれる?」
シラタマがいうと、サチヨちゃんは「うん」といって、もう一粒、甘納豆を頬張った。
研いだ小豆といっしょに小豆小屋へと連れていこうと思ったのだ。
それに、カッパを着ていても着物が蒸れて濡れてしまったので、乾かしたい。
「サチヨちゃん、雨、また降らせることできる?」
「もう降ると思うよ」
サチヨちゃんのいうとおり、ピチャピチャと木々を濡らす音が聞こえはじめる。
一気にバケツをひっくり返したような雨になり、小走りで小屋へと入ると、薄暗い室内が広がる。
簡易な小屋に見えたが、中は意外と広く、複数の棚には小豆を洗う道具がしまわれ、さらには食事が作れるように竈もある。
「ちょっと待ってね」
シラタマはカッパを脱いで土間にかけると、濡れた草履をポンと脱いで、居間に上がった。
そこには囲炉裏があり、シラタマが慣れた手つきで火をおこしていく。
「火がついた。上がって、サチヨちゃん」
サチヨちゃんを火のそばへに座らせると、シラタマはほしてあった手ぬぐいで顔をゴシゴシふき、濡れた着物を衣紋掛けにかけ、すぐに洗った小豆がかわくように布に広げる。
「ごめんね、シラタマちゃん……」
サチヨちゃんの泣きそうな困ったような顔が囲炉裏の火にあぶられて見える。
「なんで?」
半襦袢姿で、いそいそと動き回るシラタマをサチヨは目で追う。
「だって、私のせいで隠れたりとか……」
「大丈夫だよ? 小豆を洗い終えたら、一度着物はここで乾かそうって思ってたし」
シラタマは囲炉裏に鉄瓶を置き、お湯を沸かしだした。
壁に置かれた小さな箪笥には、シラタマの着替えが一式と、甘納豆がある。
屏風の後ろで着替えをおえたシラタマは、甘納豆の小袋を手に戻ってきた。
「お茶飲みながら、甘納豆食べよ」
お茶を淹れる間、屋根の雨音の激しさは止まらない。
父と母は、雨がひどくなったら小屋にいるといってあるので、心配はない。
なぜなら、この川は絶対に水が溢れないので、安全なのだ。
少し濃いめの緑茶を入れて、小皿に甘納豆を転がしていく。
シラタマはサチヨちゃんと自分用に甘納豆を分け、さっそく一粒頬張った。
「……うふふ、おいし」
ずずっとお茶を飲むシラタマにならってか、サチヨちゃんも甘納豆を一粒つまみあげた。
小粒の甘納豆は指でつぶせるほどやわらかい。
だが、砂のようにきらめく砂糖がまぶされて、とてもきれいだ。
ひと口。
サチヨちゃんの顔がほころんだ。
「……あま~い……おいしい……」
お茶をずずっとすすって、もう一粒。
そのうちにサチヨちゃんの顔が笑顔になっていく。
空になった皿に甘納豆を追加で入れながら、
「サチヨちゃん、お話、してくれる?」
シラタマがいうと、サチヨちゃんは「うん」といって、もう一粒、甘納豆を頬張った。
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