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砂かけ婆の孫・硝平くん編
小洗屋のシラタマと砂かけ婆の孫の硝平くん 2話
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岩に触れる直前、シラタマはそのガラス玉をお腹に抱え、シタッと遠くの地面に着地を決めた。
このぐらいの跳躍は猫又には簡単なのだ。
シラタマはお腹に抱えたガラス玉をそっと見る。
「わぁ……きれいなガラスのコップ……」
シラタマの黄金色の大きな目が、ぎゅんとさらに大きく開く。
陽に当たると、カヤ婆のあのお皿のように、キラキラと煌めくのだ。
「君、なに?」
尖った声がする。
砂色の髪をした男の子だ。
この村の子ではなさそうだ。そして、シラタマより、少しだけお兄さんにも見える。
「こんなにきれいなコップなのに、壊すの? どうして? なんで?」
シラタマの知りたがり攻撃が唐突にはじまった。
たじろいだ彼は、砂色の髪をかきあげる。
「なんだっていいだろ……!」
「だめだよ。理由があるんでしょ? ……あ、あたし、シラタマ。お兄さんは?」
「オレは、……硝平」
再び、髪をかき上げた硝平に、シラタマはまた質問だ。
「これは硝平くんがつくったの?」
「そうだけど」
「すっごーい! とってもきれい! ステキだわ!」
ハッとした表情を浮かべると、シラタマはコップを持ったまま、ふわふわの肉球でコップをポンと叩いた。
「わかった! カヤ婆ちゃんのお孫さんね。ガラス職人の弟子の」
「なんだよ、そんなこと、知ってんのかよ……」
うんざりだ、という顔の硝平に、シラタマはお構いなしに話しかける。
「ガラスって熱い?」
「そりゃ熱いよ」
「大変?」
「当たり前だろ!」
「どんなことが?」
「うるさいな、お前!」
大きなため息と一緒に手で払われる。
「あ、このコップは?」
「やるよ、そんな出来損ない」
「なにが出来損ないなの?」
「お前にはわかんないよっ」
くるりと向けた彼の背に、シラタマは叫ぶ。
「わかんない! こんなにきらきらして、万華鏡みたいで、お日様の光が喜ぶコップなのに、なんで出来損ないなの!」
ふわふわの足でダンダンと地面を踏んでみたが、ふわふわとするだけで音はならない。
だが、シラタマの勢いは止まらない。
「なんで? ねえ! こんなに素敵なコップなのに、割らなきゃいけないのはどうして! どうしてなの!」
そうシラタマが言い切ったとき、硝平の足が止まった。
両手で顔を隠しながらかがみ込むと、小さく言う。
「……どれも完璧じゃない……オレが作ったガラス細工は、全部、完璧じゃないんだ……!」
かがみ込んだ硝平の頭を、シラタマはぽすぽすと叩く。
「硝平くん、お団子食べましょ。うちのお団子、めっちゃくっちゃ美味しいのよ」
シラタマは硝平の手を取ると、力強く歩き出す。
目指すはあと少しで着く、古鳥公園だ。
このぐらいの跳躍は猫又には簡単なのだ。
シラタマはお腹に抱えたガラス玉をそっと見る。
「わぁ……きれいなガラスのコップ……」
シラタマの黄金色の大きな目が、ぎゅんとさらに大きく開く。
陽に当たると、カヤ婆のあのお皿のように、キラキラと煌めくのだ。
「君、なに?」
尖った声がする。
砂色の髪をした男の子だ。
この村の子ではなさそうだ。そして、シラタマより、少しだけお兄さんにも見える。
「こんなにきれいなコップなのに、壊すの? どうして? なんで?」
シラタマの知りたがり攻撃が唐突にはじまった。
たじろいだ彼は、砂色の髪をかきあげる。
「なんだっていいだろ……!」
「だめだよ。理由があるんでしょ? ……あ、あたし、シラタマ。お兄さんは?」
「オレは、……硝平」
再び、髪をかき上げた硝平に、シラタマはまた質問だ。
「これは硝平くんがつくったの?」
「そうだけど」
「すっごーい! とってもきれい! ステキだわ!」
ハッとした表情を浮かべると、シラタマはコップを持ったまま、ふわふわの肉球でコップをポンと叩いた。
「わかった! カヤ婆ちゃんのお孫さんね。ガラス職人の弟子の」
「なんだよ、そんなこと、知ってんのかよ……」
うんざりだ、という顔の硝平に、シラタマはお構いなしに話しかける。
「ガラスって熱い?」
「そりゃ熱いよ」
「大変?」
「当たり前だろ!」
「どんなことが?」
「うるさいな、お前!」
大きなため息と一緒に手で払われる。
「あ、このコップは?」
「やるよ、そんな出来損ない」
「なにが出来損ないなの?」
「お前にはわかんないよっ」
くるりと向けた彼の背に、シラタマは叫ぶ。
「わかんない! こんなにきらきらして、万華鏡みたいで、お日様の光が喜ぶコップなのに、なんで出来損ないなの!」
ふわふわの足でダンダンと地面を踏んでみたが、ふわふわとするだけで音はならない。
だが、シラタマの勢いは止まらない。
「なんで? ねえ! こんなに素敵なコップなのに、割らなきゃいけないのはどうして! どうしてなの!」
そうシラタマが言い切ったとき、硝平の足が止まった。
両手で顔を隠しながらかがみ込むと、小さく言う。
「……どれも完璧じゃない……オレが作ったガラス細工は、全部、完璧じゃないんだ……!」
かがみ込んだ硝平の頭を、シラタマはぽすぽすと叩く。
「硝平くん、お団子食べましょ。うちのお団子、めっちゃくっちゃ美味しいのよ」
シラタマは硝平の手を取ると、力強く歩き出す。
目指すはあと少しで着く、古鳥公園だ。
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