16 / 55
ろくろ首のリッカちゃん編
小洗屋のシラタマとろくろ首のリッカちゃん 5話
しおりを挟む
シラタマは洗いおえた小豆を袋につめ、風呂敷に包むと、きゅっと体に結びつけた。
そしてリッカちゃんをそっと持ち上げる。
ふわふわの肉球で頬をはさんでいるため、むぎゅっとリッカちゃんの顔がつぶれる。
「少しのしんぼうよ」
「……うん!」
リッカちゃんの頭は小豆より重いかもしれない。
大事に持ちながらも、手の力が抜けそうになる。
それでも体まで持っていってあげないと。
「……あ、シラタマちゃん……体が近づいてるのわかる……近づいてる!」
首が離れるろくろ首のリッカちゃんだが、近づけばどこらへんにいるかは感覚がしらせてくれるようだ。
「このまま真っ直ぐ進んでいけばいいと思う」
「よかったぁ」
笹に足を取られながらも、ふわふわの足を進めるシラタマに、リッカちゃんの目がぎゅんと向く。
「ねぇ、なんで砂かけのカヤ婆の家ってわかったの?」
顎を抱えるように持ちながらシラタマは笑う。
「泥と、砂、だよ」
「泥と砂? なんで?」
シラタマはなるだけ早歩きで向かっていく。
この川からカヤ婆の家はそれほど遠くない。
思った通り、雑木林を斜めに抜けると、カヤ婆の家が現れる。
「だって、カヤ婆は陶芸家だもの。土をたくさん使うじゃない。どうしても焼き物にできない土もあるの。それはカヤ婆の家の近くに捨てられるんだけど、昨日夕立があったでしょ? それで泥みたいになったんだと思う」
「じゃあ、砂は?」
「カヤ婆の家の周りは、とってもキレイな砂で覆われてるのよ? 知らない?」
「知らなーい」
よいしょと、小さな坂をのぼり、カヤ婆の家の前につくと、家の引き戸がバンと開いた。
「……あーーーよかったぁ! リッカちゃんの体はここよぉ」
出てきたのは、カヤ婆だ。
手招きしてくれるカヤ婆に、シラタマが気づくより早く、
「あ! あたしの体!」
リッカちゃんの頭がふわりと浮いた。
カヤ婆に挨拶もなく、ぎゅいんと横を過ぎ、家のなかへ飛んで入っていく。
走ってカヤ婆の元にきたシラタマは頭をぺこりと下げた。
「あ! ……もう! ごめんなさい、カヤ婆ちゃん」
「いいのよ、いいのよ。私も驚いちゃって。さ、麦茶でも飲んでいって」
カヤ婆の家に入るのは初めてだ。
いつも玄関先で和菓子の届け物をして帰るだけだったから、とっても新鮮。
工房と繋がっている居間のため、たくさんの焼き物が並んでいる。
高級そうな壺から、お皿、お茶碗……
そのなかでひときわキラキラ輝くお皿がある。
霜がおりた落ち葉のように、繊細でキレイなお皿だ。
「それ、キレイなお皿」
「あー、これはね、焼くときに砂をまぶすのよ。するとね、熱で砂が焼けて、キラキラするの」
「すごーい!」
焼き物を見せてもらっていたシラタマの元に、首がつながったリッカちゃんが小走りで戻ってきた。
「カヤ婆ちゃん、ありがとう! もう一生、体に会えないかと思った!」
「それは私もよ。一生、リッカちゃんの体と暮らすかと思ったわぁ」
そしてリッカちゃんをそっと持ち上げる。
ふわふわの肉球で頬をはさんでいるため、むぎゅっとリッカちゃんの顔がつぶれる。
「少しのしんぼうよ」
「……うん!」
リッカちゃんの頭は小豆より重いかもしれない。
大事に持ちながらも、手の力が抜けそうになる。
それでも体まで持っていってあげないと。
「……あ、シラタマちゃん……体が近づいてるのわかる……近づいてる!」
首が離れるろくろ首のリッカちゃんだが、近づけばどこらへんにいるかは感覚がしらせてくれるようだ。
「このまま真っ直ぐ進んでいけばいいと思う」
「よかったぁ」
笹に足を取られながらも、ふわふわの足を進めるシラタマに、リッカちゃんの目がぎゅんと向く。
「ねぇ、なんで砂かけのカヤ婆の家ってわかったの?」
顎を抱えるように持ちながらシラタマは笑う。
「泥と、砂、だよ」
「泥と砂? なんで?」
シラタマはなるだけ早歩きで向かっていく。
この川からカヤ婆の家はそれほど遠くない。
思った通り、雑木林を斜めに抜けると、カヤ婆の家が現れる。
「だって、カヤ婆は陶芸家だもの。土をたくさん使うじゃない。どうしても焼き物にできない土もあるの。それはカヤ婆の家の近くに捨てられるんだけど、昨日夕立があったでしょ? それで泥みたいになったんだと思う」
「じゃあ、砂は?」
「カヤ婆の家の周りは、とってもキレイな砂で覆われてるのよ? 知らない?」
「知らなーい」
よいしょと、小さな坂をのぼり、カヤ婆の家の前につくと、家の引き戸がバンと開いた。
「……あーーーよかったぁ! リッカちゃんの体はここよぉ」
出てきたのは、カヤ婆だ。
手招きしてくれるカヤ婆に、シラタマが気づくより早く、
「あ! あたしの体!」
リッカちゃんの頭がふわりと浮いた。
カヤ婆に挨拶もなく、ぎゅいんと横を過ぎ、家のなかへ飛んで入っていく。
走ってカヤ婆の元にきたシラタマは頭をぺこりと下げた。
「あ! ……もう! ごめんなさい、カヤ婆ちゃん」
「いいのよ、いいのよ。私も驚いちゃって。さ、麦茶でも飲んでいって」
カヤ婆の家に入るのは初めてだ。
いつも玄関先で和菓子の届け物をして帰るだけだったから、とっても新鮮。
工房と繋がっている居間のため、たくさんの焼き物が並んでいる。
高級そうな壺から、お皿、お茶碗……
そのなかでひときわキラキラ輝くお皿がある。
霜がおりた落ち葉のように、繊細でキレイなお皿だ。
「それ、キレイなお皿」
「あー、これはね、焼くときに砂をまぶすのよ。するとね、熱で砂が焼けて、キラキラするの」
「すごーい!」
焼き物を見せてもらっていたシラタマの元に、首がつながったリッカちゃんが小走りで戻ってきた。
「カヤ婆ちゃん、ありがとう! もう一生、体に会えないかと思った!」
「それは私もよ。一生、リッカちゃんの体と暮らすかと思ったわぁ」
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
図書室はアヤカシ討伐司令室! 〜黒鎌鼬の呪唄〜
yolu
児童書・童話
凌(りょう)が住む帝天(だいてん)町には、古くからの言い伝えがある。
『黄昏刻のつむじ風に巻かれると呪われる』────
小学6年の凌にとって、中学2年の兄・新(あらた)はかっこいいヒーロー。
凌は霊感が強いことで、幽霊がはっきり見えてしまう。
そのたびに涙が滲んで足がすくむのに、兄は勇敢に守ってくれるからだ。
そんな兄と野球観戦した帰り道、噂のつむじ風が2人を覆う。
ただの噂と思っていたのに、風は兄の右足に黒い手となって絡みついた。
言い伝えを調べると、それは1週間後に死ぬ呪い──
凌は兄を救うべく、図書室の司書の先生から教わったおまじないで、鬼を召喚!
見た目は同い年の少年だが、年齢は自称170歳だという。
彼とのちぐはぐな学校生活を送りながら、呪いの正体を調べていると、同じクラスの蜜花(みつか)の姉・百合花(ゆりか)にも呪いにかかり……
凌と、鬼の冴鬼、そして密花の、年齢差158歳の3人で呪いに立ち向かう──!
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
原田くんの赤信号
華子
児童書・童話
瑠夏のクラスメイトで、お調子者の原田くん。彼は少し、変わっている。
一ヶ月も先のバレンタインデーは「俺と遊ぼう」と瑠夏を誘うのに、瑠夏のことはべつに好きではないと言う。
瑠夏が好きな人にチョコを渡すのはダメだけれど、同じクラスの男子ならばいいと言う。
テストで赤点を取ったかと思えば、百点満点を取ってみたり。
天気予報士にも予測できない天気を見事に的中させてみたり。
やっぱり原田くんは、変わっている。
そして今日もどこか変な原田くん。
瑠夏はそんな彼に、振りまわされてばかり。
でも原田くんは、最初から変わっていたわけではなかった。そう、ある日突然変わり出したんだ。
蒸気都市『碧霞傀儡技師高等学園』潜入調査報告書
yolu
児童書・童話
【スチパン×スパイ】
彼女の物語は、いつも“絶望”から始まる──
今年16歳となるコードネーム・梟(きょう)は、蒸気国家・倭国が設立した秘匿組織・朧月会からの任務により、蒸気国家・倭国の最上級高校である、碧霞(あおがすみ)蒸気技巧高等学園の1年生として潜入する。
しかし、彼女が得意とする話術を用いれば容易に任務などクリアできるが、一つの出来事から声を失った梟は、どう任務をクリアしていくのか──
──絶望すら武器にする、彼女の物語をご覧ください。
【奨励賞】おとぎの店の白雪姫
ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】
母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。
ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし!
そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。
小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり!
他のサイトにも掲載しています。
表紙イラストは今市阿寒様です。
絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。
ビワ湖の底からこんにちわ
あとくルリ介
児童書・童話
遠い未来の世界で、お爺さんと孫娘、学校の友達や先生が活躍するコメディです。
地獄でエンマ大王に怒られたり、吸血鬼に吸われたり、幽霊船で嵐の島を目指したりします。終盤、いろんなことを伏線的に回収します。
(ジャンル選択で男性向け女性向けを選ばなければならなかったのですが、どっち向けとかないです。しいて言えば高学年向け?)
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる