老舗あやかし和菓子店 小洗屋

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ろくろ首のリッカちゃん編

小洗屋のシラタマとろくろ首のリッカちゃん 2話

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 シラタマは濡れるのも気にせず、桶を取りに行く。
 このまま流れていくと、大きな岩に当たってしまう!

「リッカちゃん、こっち!」

 声をかけるが、リッカちゃんは首だけだ。
 それでも必死に方向転換しようと首を転がしてくれる。
 シラタマも濡れるのが苦手だが、びちゃびちゃと草履ごと川に入っていく。

「もう少し!」

 桶に爪を立てた。
 ぐっと差し込まれた爪は、もう、離れない!

「もうちょっとよっ」

 シラタマは声をかけつつ、ふんばる。
 川の水は冷たいが、そんなことを気にしている暇はない。

「よいしょー!」

 桶をどうにか岸へと上げたシラタマはびっちょりだ。
 桶をのぞきこむと、川のしぶきと涙と鼻水でびっちょりのリッカちゃんがいる。

「シラタマじゃん、ありがどぉぉぉ……! ごわがっだよぉぉぉ」

 あまりにひどい顔に、シラタマは濡れたぼそぼその肉球を口にあててくすくす笑う。

「わらわないでよぉ」

 シラタマは涙でびちゃびちゃのリッカちゃんをしぼった手拭いでぬぐってあげる。

「ありがと、じらだまじゃん」
「また泣かないで、リッカちゃん。今、火を起こすから」

 この川の近くには小豆小屋がある。
 小豆を洗うためのザルや、小豆を拭く布などしまう場所だ。
 そこには薪も常備され、小屋の前にはちゃんと焚き火ができるようになっている。
 焚き火で小豆を乾かすこともあるからだが、ちょうどよく着物も干せるので、濡れたときはいつもここで火を起こし、服を乾かしている間は、小屋に置いてある本を読むのがシラタマの過ごし方だ。

「よいしょ。……はい、あったかいでしょ?」

 なれた手つきで火を起こし、パチパチとなる焚き火の前に桶を置く。
 頭だけで立ったリッカちゃんは、ほおと息をついた。

「あったかーい」
「あったかいねー」

 下着姿のシラタマだが、今日は陽射しもあったかい。
 それほど時間をかけずに乾くだろうと火に当たる。
 リッカちゃんの乱れた髪を直してあげると、

「ありがと、シラタマちゃん」

 にっこりと笑う。
 リッカちゃんは笑顔がかわいい女の子だ。
 口が大きめなので、笑う声は大きいけれど、シラタマはリッカちゃんの笑う顔が大好きだ。
 だが、今一番気にしなければならないことがある。

「ね、リッカちゃん、体は?」

 たずねると、リッカちゃんは視線を伏せた。

「……ねぇ、体、どこだと思う……?」

 また半泣きのリッカちゃんの顔がある。
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