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5、新キャラクター様でいらっしゃいますわ

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現皇帝の実弟にしてランドルフの叔父、ヘミングウェイ・イル・クロステル。今でこそ南部に離宮を構えて優雅に隠棲生活を送る彼だが、かつては帝都の執政官としてその辣腕を振るい、市民から広く愛された人物であった。
しかし20年ほど前に突如その任を解かれたと思うと、この帝国最南端の都市たるピスカスへと左遷になったのである。「不誠実たる行為の為」とだけの礼状を手に馴染みの薄い港町へと流刑になった彼であるが、彼の持てるポテンシャルゆえだろうか、はたまた住人の気風か。結果大した苦労もなく彼は順調にこの町を治めた。どころか治めるだけに留まらず、過去最高の貿易額を叩き出し、腐りかけていた海軍組織の再編成、住民からの要請受入れ、また、海賊の撃退などと言った偉業を次々為していったのだ。
これには彼を左遷した皇帝陛下も数年と経たず大赦を出したが、他の誰でもないヘミングウェイ自体がこの土地を離れることにNoを突きつけた。彼自身からの拒絶とあれば首を横に振るわけにも行かなかったのだろう。皇帝は彼に離宮を与え、自らの息子であるランドルフの教育係まで任せたのである。

……とまあ、ヘミングウェイという男にはざっくりとこんな過去がある訳だが、とはいえ今はただの領主と変わらない。ランドルフとマリアを迎え入れた妙齢の男性は、ネルシャツ1枚という驚くほどフランクな服装と仕草で大きな椅子に腰掛けたまま、こちらにひらりと手を振った。 

「やあ、キミがマリアちゃんかな?」 
マリアはしばし呆気に取られていたが、それが自分に向けられた言葉だと気付くが早いか、ランドルフにしてみせたような見事な礼を披露した。そのまま言葉を継ぐ前に、見兼ねたランドルフが機嫌悪げにヘミングウェイへと歩み寄る。そうして無礼にも、彼の座る椅子の肘掛をばんと平手で叩いてみせた。どころかそのまま彼の襟首を思い切り掴んで絞り上げたのである。

「で、殿下……!?」

「……叔父上。一応は公的な謁見だと言うのに、何だその弛み切った服装は!」

直ちに止めに入らなくてはと体を固めていたマリアだが、続くヘミングウェイの「あはは」という気の抜けた笑い声に踏み出すことを躊躇する。彼は甥に首を絞められているとも知らんとばかりにヘラヘラ両手を振った。
「ごめんごめんランドルフ。本当は礼服着ようと思ったんだけどさあ、もう何年も式典なんて出てないもんだから、袖口に白カビ生えちゃってて!!なんか超アバンギャルドな感じになってたから諦めたんだ」
いや傑作だった!そう笑うヘミングウェイに、ランドルフは信じられないものでも見たとばかりに眉間に皺を寄せた。彼を乱雑に解放してうんざりしたように溜息を吐く。そうして眉を顰めたままもはや話すことは無いと言いたげにマリアへ向き直った。
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