扉の向こうの物語

きゅう

今日のトクロウさんも黒髪黒瞳の白シャツジーンズだ。
この服って幼なじみの服だろうか？昨日と同じ服に見える。私の幼なじみは同じ服を何枚も、持ってるんだろうか？
どうせだったら違う柄とかにすればいいのに。
でも、そもそも幼なじみが黒っぽい服以外着てるの見た事ないから、幼なじみの服じゃないのかな？
幼なじみよりトクロウさんの方が身長も高いしね？
でも、昨日と同じ服に見えるけど、アイロンかけたかのようにピシッとしてるしやっぱり同じ服何枚もかな？
どら○もんののび太みたいに。
でも、今さら服どうしてるんですか？なんて聞けないしなぁ。
は！そうか！夜のうちに洗って乾かす為に昨日の夜マントに早着替えしてたのか！？
謎は全て解けた！！流石、私！

トクロウさんは
「昨日の夜に故郷の匂いがした気がするんです。でも、一昨日よりももっと微量でどこからかもわからなくて…」
と情けない顔で言う。捨てられた犬みたいですね。今にも垂れ下がった犬の耳が見えそうです。トクロウさんのその情けない顔何だか好きです。
やっぱりトクロウさんは運命の相手なんじゃ！？と思ったせいかトクロウさんのちょっとした仕草にときめきます。格好いいのに可愛いなんて、なかなか凄い人ですね。
昨日は私がトクロウさんの事ばかり聞いてしまったので、今日は私の事を喋りますよ。
と言っても平凡で普通な少女なんで大したことはないんですけどね。


「幼なじみ君とは仲良しなんですね。」
「はい。影太とは産まれた時から一緒なんですよ。」
「幼なじみ君は影太って名前なんですね。」
なんて、事でしょう。幼なじみったら、トクロウさんに自分の名前伝えてないですよ。同じ家にいるのにですよ。
トクロウさんいわく
「俺、さっきの女の幼なじみ。お前は暫くここにいろ」
の一言で終わったらしいです。家では、トクロウさんは幼なじみの事を「幼なじみ君」って呼んでたみたいです。
どれだけ口下手なんですか。シャイですか。恥ずかしがりやさんですか！！
「次は貴方の名前をお伺いしても？」
…
…
やらかしました。私も名前告げてません。一昨日はトクロウさんの名前が衝撃的で、それどころでなく。昨日は私が延々トクロウさんの事を聞きまくったのが原因ですね。
ヤバい。幼なじみの事を言えないですね。
私も口下手でした。
昨日から何回か名前を聞こうと話し掛けようとしては、私が別の事を聞いて…そのまま機会を失ったみたいです。

でもね。幼なじみは本当に恥ずかしがりやさんなんですよね。
私も幼なじみの名前を知ったのが13歳の時だったんです。

そう言った時、トクロウさんが「え！？」とビックリ顔になりました。あれ？さっきまで黒かった瞳が青くなってますよ？


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私の事を喋ると言ってましたが、嘘です。
幼なじみの事ばかり喋ってました。
幼なじみは私が産まれた時から側にいて、いま25歳なんです。
いっつも黒っぽい上下の服で、私が学校から帰って来るといつも家にいます。
仕事?幼なじみの仕事ですか？そう言えば知りません。知らなかったです。もしかして、ニートってやつなのでしょうか！？
でも、いつも忙しい忙しいって言ってますよ?
後、自分の事をもやしって言ってます。
私の事は怪力女？ですか？
私が困った時とか一番最初に来てくれます。お母さんとか来た事ないですよ。私のお母さんは忙しいキャリアウーマンらしくって、実は一度も会った事ないんです。
お弁当とかは幼なじみが作ってくれるんです。ご飯も幼なじみですよ。家に帰ったら机の上に置いてあります。
一緒に食べないのか？って、そう言えば食べた事ないですね。
幼なじみいわく、恥ずかしがりやさんだから無理だそうです。
トクロウさんは一緒の家にいるから幼なじみがご飯食べてる姿見たことありますか？ないですか？
なかなか隠密ですね。