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128 どこに証拠があるんだ?
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数秒、間が空いた。その調査員を雇ったのは、ロマネスクのはずだ。
「否定しないんだな」
「人違いだ」
エディは笑った。
「さっきも言ったが、おまえは犯罪者の匂いがしない。
『セブンオークス』の回し者なら辻褄が合う」
「『セブンオークス』なんて関係ない」
「買収を邪魔した。金を盗んで」
ホークは頭を振って溜息をついた。
「盗んでない」
「おまえの経歴はでたらめだとわかっているんだ。素手で人を殺せる技術をどこで身に着けたんだ?」
「人違いだ」
「マーガレット・ブラウンを問い詰めただろう」
「何のことだ?」
「間違って誰かの生命保険料を支払ったりしたら、すぐわかるとか」
「そんなこと言ったかな」
「おまえは何のためにそんなことを調べているんだ?」
ホークは笑った。
「あんたこそ、マーガレットとどういう関係なんだ」
「関係なんかない」
「じゃあ誰が、ロニーの生命保険の受取人を改竄したんだ」
エディがホークを見た。瞬間、車が左に寄って、隣の車線からクラクションを鳴らされた。
「危ないな、気をつけろよ」
左車線の車がスピードを上げて追い抜いて行った。
「おまえが変なことを言うからだ」
「ロニーは施設で育ったらしいけど、自分と縁も所縁もない慈善団体に寄付するとは思えない。だいたいこの会社に入社する社員は、自分が死んだあとのことなんて考えない、と人事から聞いた」
「おまえはおれが間違った支払いを許可したと言いたいのか」
「いや、そうじゃない。完璧に改竄されているから間違いには見えないんだ」
「じゃあ、何が問題なんだ」
「支払先だよ。あんたは許可したから知ってるよな」
「……」
「どういうわけか、おれの生命保険も同じ奴に支払先が変わっていた。変更が正しいのか人事から確認されたんだよ。もちろん訂正しておいたが」
「……」
「ロニーの場合、支払先の改竄は、ロニーが最後の出張に行く前に行われた。そいつはロニーが死ぬことを知っていたんだ」
「……」
「死刑宣告みたいだろう。おれのこともだ」
「おまえは誰がやったと言うんだ?」
「改竄したのはマーガレットだと思う。でも彼女に命令した奴がいる」
「……誰だ」
「あんたじゃないのか? だが、あんたはアイリッシュ・マフィアとつながっているとは思えない。あんたも誰かに命令されたんじゃないのか?」
「……」
「または、誰かのためにやっているとか。あんたがそこまでしてやる相手って誰だ?」
「……」
「今まで築いてきたキャリアがパーになるんだぜ。それほどまでして犯罪に加担する理由はなんだ?」
「……どこに証拠があるんだ」
「もしかしたらマーガレットが持っているかもな」
「どこにもないさ。おれはシロだ」
「抜かりないよな、さすがは内部調査の専門家だ。おれの車に発信機をつけたの、あんただな?」
エディの眉間に皺が寄った。
「ロマネスクに住所変更届を送ったのもあんただ。
ライアンが借り入れの相談をした時に、それをロマネスクに知らせたのもあんただ。
ロニーがサンクトペテルブルクの出張申請をした時に、彼が死ぬと知っていて、あんたは許可した。
あんたがロマネスクとツーカーだとわかれば、全て辻褄が合う」
「当て推量だ。何一つ証拠がない」
「マーガレットが証言する」
「さあ、それはどうかな」エディは嗤った。
「どういう意味だ」
「どこにいるんだ、彼女は?」
ホークはエディの方を向いた。
「彼女が自宅にいないことは、人事も知らなかった。なぜあんたが知っているんだ?」
車のスピードが落ちた。後続車からパッシングされている。
「なあ、車停めろよ。煙草でも吸えば?」
「否定しないんだな」
「人違いだ」
エディは笑った。
「さっきも言ったが、おまえは犯罪者の匂いがしない。
『セブンオークス』の回し者なら辻褄が合う」
「『セブンオークス』なんて関係ない」
「買収を邪魔した。金を盗んで」
ホークは頭を振って溜息をついた。
「盗んでない」
「おまえの経歴はでたらめだとわかっているんだ。素手で人を殺せる技術をどこで身に着けたんだ?」
「人違いだ」
「マーガレット・ブラウンを問い詰めただろう」
「何のことだ?」
「間違って誰かの生命保険料を支払ったりしたら、すぐわかるとか」
「そんなこと言ったかな」
「おまえは何のためにそんなことを調べているんだ?」
ホークは笑った。
「あんたこそ、マーガレットとどういう関係なんだ」
「関係なんかない」
「じゃあ誰が、ロニーの生命保険の受取人を改竄したんだ」
エディがホークを見た。瞬間、車が左に寄って、隣の車線からクラクションを鳴らされた。
「危ないな、気をつけろよ」
左車線の車がスピードを上げて追い抜いて行った。
「おまえが変なことを言うからだ」
「ロニーは施設で育ったらしいけど、自分と縁も所縁もない慈善団体に寄付するとは思えない。だいたいこの会社に入社する社員は、自分が死んだあとのことなんて考えない、と人事から聞いた」
「おまえはおれが間違った支払いを許可したと言いたいのか」
「いや、そうじゃない。完璧に改竄されているから間違いには見えないんだ」
「じゃあ、何が問題なんだ」
「支払先だよ。あんたは許可したから知ってるよな」
「……」
「どういうわけか、おれの生命保険も同じ奴に支払先が変わっていた。変更が正しいのか人事から確認されたんだよ。もちろん訂正しておいたが」
「……」
「ロニーの場合、支払先の改竄は、ロニーが最後の出張に行く前に行われた。そいつはロニーが死ぬことを知っていたんだ」
「……」
「死刑宣告みたいだろう。おれのこともだ」
「おまえは誰がやったと言うんだ?」
「改竄したのはマーガレットだと思う。でも彼女に命令した奴がいる」
「……誰だ」
「あんたじゃないのか? だが、あんたはアイリッシュ・マフィアとつながっているとは思えない。あんたも誰かに命令されたんじゃないのか?」
「……」
「または、誰かのためにやっているとか。あんたがそこまでしてやる相手って誰だ?」
「……」
「今まで築いてきたキャリアがパーになるんだぜ。それほどまでして犯罪に加担する理由はなんだ?」
「……どこに証拠があるんだ」
「もしかしたらマーガレットが持っているかもな」
「どこにもないさ。おれはシロだ」
「抜かりないよな、さすがは内部調査の専門家だ。おれの車に発信機をつけたの、あんただな?」
エディの眉間に皺が寄った。
「ロマネスクに住所変更届を送ったのもあんただ。
ライアンが借り入れの相談をした時に、それをロマネスクに知らせたのもあんただ。
ロニーがサンクトペテルブルクの出張申請をした時に、彼が死ぬと知っていて、あんたは許可した。
あんたがロマネスクとツーカーだとわかれば、全て辻褄が合う」
「当て推量だ。何一つ証拠がない」
「マーガレットが証言する」
「さあ、それはどうかな」エディは嗤った。
「どういう意味だ」
「どこにいるんだ、彼女は?」
ホークはエディの方を向いた。
「彼女が自宅にいないことは、人事も知らなかった。なぜあんたが知っているんだ?」
車のスピードが落ちた。後続車からパッシングされている。
「なあ、車停めろよ。煙草でも吸えば?」
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