bias わたしが、カレを殺すまで。

帆足 じれ

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第14章

Anecdote 宝物 ☆

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 ××××××君、ずいぶんとご無沙汰してしまったが、変わりないかな。
 
 この度、娘が生まれたことを報告したくてメールしたんだ。

 誕生したのは先月の26日で、名前はりょう。大きく力強く育ってくれることを願って、私が好きなムクノキから名付けた。
 夫も付けたい名前があったようなんだけれど、話し合いで無事に解決した。譲ってもらったというべきかな。君も知っているように、彼は器が大きいから揉めることがなくて助かっているよ。だからこそ、安心してフィンブルヴェトを任せていられる。

 君は今、5年生だったかな。学校や普段の生活はどうだい。君のことだからきっとうまくこなしているんだろうけど、くれぐれも無理は禁物だよ。何よりもまず、自分のことを大切にして欲しい。

 弟さんも大きくなったろうね。娘と同い年だし、ひょっとするとどこかで同級生になることもあるかも知れないな。まあ、確率は限りなく低いだろうけど、縁と言うのはどこで繋がっているかわからないものだから、つい思いを馳せてしまうよ。いつか君と君の弟、私と夫、娘が顔を合わせている様子なんかを想像すると胸が躍るんだ。
 もしかして、これが産後ハイなんだろうか。すべてが初めてのことで、幸福と困惑とが返す返す押し寄せて大変なんだ。

 今回は簡単な報告で終わるつもりだったのに、書き出すと止まらなくなるものだね。
 私は今、宝物を得た喜びでいっぱいなんだと思う。

 取り留めのない話に付き合わせてしまって、すまなかった。
 今度は是非、君や、君の弟さんの話を聞かせて欲しい。返信が遅れるかも知れないが、必ず時間を作るから。

 できることならもう一度、君に会いたいと思っているんだ。あの魅力的な少年がどんな風に成長しているのか見てみたいよ。次に会う時は、君の小さかった手も私より大きくなっていたりしてね……。
 その日が来るまで、お互い元気でいよう。
 
 では、また近いうちに。


 追伸:娘の写真を添付したので、よかったら見てやってくれ。私にも夫にも似ていて、生命の神秘を感じるよ。
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