118 / 151
第13章
107 ベルフェゴールの回想 ⑤ ♤ ⚠
しおりを挟むマリクと話してから1週間
その間俺はただレティと過ごす時間に癒されていることを改めて実感していた
「シア、ここよね?」
いつの間にか少し先を歩いていたレティがカフェの前で立ち止まる
「ああ」
俺は頷いて少しペースを速めた
今日訪れたのは町にあるカフェだ
ここはナターシャさんの知り合いがやっていて俺達も昔からよく連れてきてもらってる店だ
「考え事?」
「ん?あぁ、ちょっとな」
レティの事を考えてたなんて言えないだろ…
俺は適当にごまかしながら扉を開けてレティを先に通した
「いらっしゃい。久しぶりねシア」
「どーも。テラス行っていい?」
「ふふ…いいわよ」
隣にいるレティを見てから生暖かい視線を向けられた
恥ずかしいからやめてもらいたい
レティはケーキとホッとコーヒー、俺はアイスコーヒーを頼んだ
「お待たせ。お客さん少ないから貸し切りにしとくわね」
「…どうも」
「そんな不貞腐れないの。彼女に嫌われちゃうわよ」
店員はそう言いながら戻って行った
「貸し切りって大丈夫なの?」
「あぁ、元々ここは常連しか知らない席だから問題ない」
というより多分俺達しか知らない
チビの集団が店内で走り回るからって開放された場所だからな
庭も手入れされててかなり落ち着く場所だ
2人掛けのベンチが3つ少し間隔をあけて置いてあり、その前に丸い木のテーブルが置いてある
「シアも食べる?」
「いや、いいよ」
満足そうな顔をしながら尋ねてきたレティは『そう?』と言いながら次のひと口を頬張った
「そんなに気に入ったのか?」
「甘いものなんて食べる機会なかったもの」
「あぁ、なるほど」
レティの生い立ちを考えれば当然かもしれない
「母さんもよく作るから、頼めば作り方教えてもらえると思うぞ」
「本当?私でも作れるかな?」
「ああ。チビが手伝えるようなレシピも多いから、そういうのから教えてもらえばいい」
「それはすごくうれしいわ。サラサさんのお料理どれも美味しいしすっごく楽しみ」
そういうレティからはワクワクしてるのが伝わってくる
やっぱりこういう素直な真っすぐな反応は気持ちがいい
計算とか駆け引きとかそういうのが透けて見える反応にばかり接してきたから余計にそう感じる
「やっぱレティがいいな」
「え?」
レティの驚いた表情に自分が声に出していたことに気付く
やばい…
心の声が漏れるとかあり得ない
俺は内心かなり焦っていた
「私がいいって何が?」
「…」
改めて尋ねられて誤魔化そうとするのを諦めた
どうせ周りにもバレてる
かっこ悪いけど結局この1週間言い出せなかったのが現実だ
それならなし崩しだろうと何だろうと伝えてしまえばいい
「…隣に居たいと思うのも、隣にいて欲しいと思うのもレティだけだってこと」
「!」
覚悟を決めてそう言うとレティの目が大きく見開かれた
そして次の瞬間…
「何で泣くんだよ…」
これまで見たこともない満面の笑みの直後溢れ出したのは涙
「だって嬉し…」
「泣くほど?」
何度も首を縦に振るレティを思わず抱きしめた
驚いたせいか一瞬体をこわばらせたレティはすぐに警戒を解いて俺にされるがままになった
「…みんなシアは私を大事にしてくれるって…でも…」
「でも?」
「皆が思ってるような気持じゃないんだろうなって…ただ保護した対象だからだろうなって…」
「…」
「なのに…シアの事を知れば知るほど惹かれていくのを止められなかった」
時々鼻をすすりながら吐き出される想いに今日まで引っ張ったことを恨めしく思う
「もっと早く伝えればよかったな」
マリクの言うとおりだ
かっこ悪くてもその時その時に伝えればよかったんだ
今更言っても遅いけど
「愛してるよレティ。多分、出会った頃から」
「私も…愛してる!」
戸惑いながらも抱きしめ返されて顔がにやけて来る
こんな気持ちを知らずに来たのはもったいなかったなとどこかで思う
同時にそれを与えてくれるレティを、そんなレティと過ごせる時間を大事にしたいと思った
元の世界以上に何が起こるかわからない世界
今日が平和でも、明日にはスタンピードが起こる可能性だってある
当たり前の日常が当たり前じゃないこの世界で、共に過ごしたい相手と過ごせる時間だから猶更だった
その間俺はただレティと過ごす時間に癒されていることを改めて実感していた
「シア、ここよね?」
いつの間にか少し先を歩いていたレティがカフェの前で立ち止まる
「ああ」
俺は頷いて少しペースを速めた
今日訪れたのは町にあるカフェだ
ここはナターシャさんの知り合いがやっていて俺達も昔からよく連れてきてもらってる店だ
「考え事?」
「ん?あぁ、ちょっとな」
レティの事を考えてたなんて言えないだろ…
俺は適当にごまかしながら扉を開けてレティを先に通した
「いらっしゃい。久しぶりねシア」
「どーも。テラス行っていい?」
「ふふ…いいわよ」
隣にいるレティを見てから生暖かい視線を向けられた
恥ずかしいからやめてもらいたい
レティはケーキとホッとコーヒー、俺はアイスコーヒーを頼んだ
「お待たせ。お客さん少ないから貸し切りにしとくわね」
「…どうも」
「そんな不貞腐れないの。彼女に嫌われちゃうわよ」
店員はそう言いながら戻って行った
「貸し切りって大丈夫なの?」
「あぁ、元々ここは常連しか知らない席だから問題ない」
というより多分俺達しか知らない
チビの集団が店内で走り回るからって開放された場所だからな
庭も手入れされててかなり落ち着く場所だ
2人掛けのベンチが3つ少し間隔をあけて置いてあり、その前に丸い木のテーブルが置いてある
「シアも食べる?」
「いや、いいよ」
満足そうな顔をしながら尋ねてきたレティは『そう?』と言いながら次のひと口を頬張った
「そんなに気に入ったのか?」
「甘いものなんて食べる機会なかったもの」
「あぁ、なるほど」
レティの生い立ちを考えれば当然かもしれない
「母さんもよく作るから、頼めば作り方教えてもらえると思うぞ」
「本当?私でも作れるかな?」
「ああ。チビが手伝えるようなレシピも多いから、そういうのから教えてもらえばいい」
「それはすごくうれしいわ。サラサさんのお料理どれも美味しいしすっごく楽しみ」
そういうレティからはワクワクしてるのが伝わってくる
やっぱりこういう素直な真っすぐな反応は気持ちがいい
計算とか駆け引きとかそういうのが透けて見える反応にばかり接してきたから余計にそう感じる
「やっぱレティがいいな」
「え?」
レティの驚いた表情に自分が声に出していたことに気付く
やばい…
心の声が漏れるとかあり得ない
俺は内心かなり焦っていた
「私がいいって何が?」
「…」
改めて尋ねられて誤魔化そうとするのを諦めた
どうせ周りにもバレてる
かっこ悪いけど結局この1週間言い出せなかったのが現実だ
それならなし崩しだろうと何だろうと伝えてしまえばいい
「…隣に居たいと思うのも、隣にいて欲しいと思うのもレティだけだってこと」
「!」
覚悟を決めてそう言うとレティの目が大きく見開かれた
そして次の瞬間…
「何で泣くんだよ…」
これまで見たこともない満面の笑みの直後溢れ出したのは涙
「だって嬉し…」
「泣くほど?」
何度も首を縦に振るレティを思わず抱きしめた
驚いたせいか一瞬体をこわばらせたレティはすぐに警戒を解いて俺にされるがままになった
「…みんなシアは私を大事にしてくれるって…でも…」
「でも?」
「皆が思ってるような気持じゃないんだろうなって…ただ保護した対象だからだろうなって…」
「…」
「なのに…シアの事を知れば知るほど惹かれていくのを止められなかった」
時々鼻をすすりながら吐き出される想いに今日まで引っ張ったことを恨めしく思う
「もっと早く伝えればよかったな」
マリクの言うとおりだ
かっこ悪くてもその時その時に伝えればよかったんだ
今更言っても遅いけど
「愛してるよレティ。多分、出会った頃から」
「私も…愛してる!」
戸惑いながらも抱きしめ返されて顔がにやけて来る
こんな気持ちを知らずに来たのはもったいなかったなとどこかで思う
同時にそれを与えてくれるレティを、そんなレティと過ごせる時間を大事にしたいと思った
元の世界以上に何が起こるかわからない世界
今日が平和でも、明日にはスタンピードが起こる可能性だってある
当たり前の日常が当たり前じゃないこの世界で、共に過ごしたい相手と過ごせる時間だから猶更だった
7
☆拙作に目を留めていただき、本当にありがとうございます。励みになりますので、もし何かしら刺さりましたら、是非とも『いいね』・『お気に入りに追加』をお願いいたします。感想も大歓迎です!
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる