bias わたしが、カレを殺すまで。

帆足 じれ

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第10章

82 雨間 ④ ☆

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 翌日 午後。 
 バーデン・バーデンの処女の病室にて──。

「──では、本日の連絡は以上、なんですがぁ……凌遅さん、聞いてくださいよぉ……」

「ベリト、君、酔ってないか」

「あはは、実は2時過ぎまで飲んでまして……」

「そうか。ほどほどにな」

「いやー、昨日ちょっとデカいダメージ食らったものでぇ……」

「ふーん。念のため聞こう。話してみな」

「感謝しますぅ……これからお話しさせていただくのはですねぇ、僕が実際に体験した恐怖のエピソードなんですねぇ……あれはぁ、バエル代表が帰国された日の晩のことでしたぁ……」

「どこの怪談師だ、君は」

「おぉ、凌遅さんらしからぬ秒速ツッコミに感動しつつ、話を続けますね。昨夜、僕はバエル代表の慰労とお祝いを兼ねたパーティーを主催したんです」

「普段通りの業務もこなしていたよな。時間は取れたのか」

「ええ。代表がいつ頃帰られるかは耳に入ってましたし、段取りなんかも大体決まってるんで、事前にある程度の流れを作っておけば当日はそんなに忙しくないんですよ」

「そう言えば、君はよく夜会の進行役を務めたりしているものな。慣れているわけか」

「そういうことです。そちらに関しては滞りなく進んで、後はバエル代表と出席者を迎えるだけになりました。だけど、問題はここからなんです」

「パーティーの最中に何かあったのか」

「その通りです……この機会に、を込めてベルフェゴールさんをテンパらせてやろうと思い立ちましてね。事前連絡なしでいきなり会場に引っ張り出して挨拶させることにしたんです」

「ああ……そいつは効果的な嫌がらせだな」

「でしょ? 彼にとっては死ぬほど恐ろしいシチュエーションでしょうけど、バエル代表のためと言えば断れないのはわかってます。部屋着みたいな恰好でパソコンとにらめっこしてるところを捕まえて、ハレの席に放り込んだら、きっと面白いことになるだろうなーって」

「君も、なかなかにいい性格をしているよな……」

「いやいや、この作戦を話したら、仲間内でかなり盛り上がったんですよ。あの人のせいでストレスを抱えてる人間も多いですから」

「なるほど」

「僕の計画では、数名の有志とギリギリの時間に突撃して、部屋から担ぎ出すつもりだったんですが、予想外の事態になりました。あの人、開会時刻ぴったりに、まさかのパーティースーツ姿で会場入りしたんですよ……」

「ほう。珍しいな。彼と知り合ってだいぶ経つが、まともな格好をしているところを見たことがなかったから興味深い」

「僕もです。正直、ベルフェゴールさんは生まれてこの方ちゃんとしたことなんかないし、今後もすることはないだろうと思い込んでました」

「……それは極言だろうが、わからなくもない」

「ですよねぇ? なのに、何なんですか、あれ……普段のくたびれた姿とは見違えるほどシュッとしてて、ハリウッドスター並みのオーラが溢れ出てました」

「ただでさえ目立つ容姿だからな。装いを整えれば映えるだろう」

「そうなんです……案の定、会場は騒然で、みんなめちゃくちゃ注目してました。それでテンパればいいものを、あのヤロウ、柄にもなく滔々とうとうとそつのないスピーチをして、バエル代表と会場の人間に感謝の言葉を述べた後、颯爽と帰りやがったんです……相変わらずの無表情でしたが、わずか数分で印象爆上がりですよ……バエル代表もご機嫌でした」

「フフ……作戦が裏目に出ちまったわけだな」

「っあ゛あ゛あぁー、腹立つうぅぅぅ!!! 誰だぁ! リークしたヤツぅ! あと、スタイリングしたヤツとスピーチ原稿仕上げたヤツもぉお!!! 余計なことすんなあぁぁぁぁっ!! くっそぉぉおおおお!!!」
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