53 / 151
第7章
48 トゥクルカ ☆
しおりを挟む
「すみませんね、このような場所で」
「──────」
「はい。ご推察の通り、私が普段から利用しているコワーキングスペースです。我々は友人でも恋人でもありませんので、わざわざカフェでお茶を囲む必要はないかと思いまして」
「──────」
「ご理解いただき感謝します。ところで、お話とは?」
「──────」
「ああ、その件で……私も、ヴィネのことは残念に思っています。なんだかんだ親しかったので、可能ならあの処刑人を同じ目に遭わせてやりたいです。でもそんなことは無理だとわかっています……」
「──────」
「だってそうでしょう? 副代表が一枚噛んでいるんですよ? あの人がどれだけ厄介か、付き合いの長いあなたならご存じのはずでは? 冷徹、理性的なバエル代表やあなたと違って、副代表は人臭いんですよ、必要以上にね。そのくせ人間不信で、業務やナレッジの属人化が甚だしく、本当に参っているんです。まあ、他のスタッフの能力が足りていないのがボトルネックなんですが、一人で抱え込み過ぎです……。ああ、失礼、つい余計な話をしてしまいました。それでご用件は?」
「──────」
「……お話はわかりました。ですが、協力は致し兼ねます。今度はこちらが狙われますので。私にも家族や友達とか、大事な人がいるんです。下手を打てば、そういう人にまで危害が及ぶじゃありませんか。副代表ならやり兼ねません」
「──────」
「そうおっしゃられても、無理なものは無理だと……」
「──────」
「いや、ですから……」
「──────」
「……はあ。あなたって、本当に人の話を聞きませんよね。ヴィネがどうやって立ち回っていたのか想像がつかないわ。でも、はい……わかりましたよ。そこだけ協力しますよ……あの処刑人の居場所がわかるようにすればいいんですね?」
「──────」
「とりあえず、情報システム部の同期に諮ってみます。多分、それくらいなら可能だと思いますよ。その代わり、私が絡んでいることはご内聞に願います」
「──────」
「別に構いません。やるとなったら最善を尽くすのが、このトゥクルカのモットーです。丁度これから行く予定があるので、ついでに頼んでみます。あなたはその辺で時間を潰していてください」
×時間後──
「お待たせしました。ご要望の件ですが、同期曰く、追跡は不能とのことです。と言いますのも、例の処刑人はスマートリングや端末を所持していないどころか……」
「──────」
「えっ? ええ、その通りです。こんなことは前例がないのですが……」
「──────」
「きな臭い話になってきましたね。あの処刑人、ただ者じゃないようです。それでこの後、どうされるおつもりですか?」
「──────」
「そうですか。追跡できない以上、尻尾を出すのを待つしかなさそうですね。まあ、あなたは自力でどうにかなさるんでしょうけど。今回の件も想定内だったようですし、追っ付けたどり着くんじゃありませんか?」
「──────」
「へえ、意外ですね。至上の処刑人と名高いあなたが新人相手に……」
「──────」
「……! いや、まさかそんな……だって、先日……」
「──────」
「なるほど……確かにそう言われてみれば得心が行きますが、ずいぶん恐ろしいことに気づかれましたね。今になって聞いたことを後悔し始めています。副代表はそのことを把握していると思われますか?」
「──────」
「でしょうね……わかりました。ひとまず胸の内に留めておきます。ところで、あなたのパートナーは今どちらに?」
「──────」
「それ、任せる相手をお間違えでは? ベリトは面白そうだと見るや、平気で寝返りますよ?」
「──────」
「あなたが納得しているなら、私がどうこう言うことではありませんが。一応、件の同期が彼女の情報をモニターしていますので、有事の際にはお伝えします」
「──────」
「わかりきったことです。同期は平素から副代表にメンタルをやられているので、溜飲を下げるのに願ってもない機会だと言っていましたよ。時にはこのような息抜きも必要ではないでしょうか」
「──────」
「申し伝えます。同期はあなたのファンなので、喜ぶかと」
「──────」
「……いいですって、別に。そんなことより、時間がかかってもいいので、必ずヴィネの仇を討ってくださいね。なるたけ惨い方法で……」
「──────」
「毒を食らわば皿までです。さっきの話が本当だとすれば、私はますます以てあの人を許せません」
「──────」
「今後を考えれば些か気が重いですが、譲れないことなので。あなたもそうなのでは?」
「──────」
「答えてくれなくて結構です。これ以上、深掘りしませんから。では、ご武運を」
「──────」
「はい。ご推察の通り、私が普段から利用しているコワーキングスペースです。我々は友人でも恋人でもありませんので、わざわざカフェでお茶を囲む必要はないかと思いまして」
「──────」
「ご理解いただき感謝します。ところで、お話とは?」
「──────」
「ああ、その件で……私も、ヴィネのことは残念に思っています。なんだかんだ親しかったので、可能ならあの処刑人を同じ目に遭わせてやりたいです。でもそんなことは無理だとわかっています……」
「──────」
「だってそうでしょう? 副代表が一枚噛んでいるんですよ? あの人がどれだけ厄介か、付き合いの長いあなたならご存じのはずでは? 冷徹、理性的なバエル代表やあなたと違って、副代表は人臭いんですよ、必要以上にね。そのくせ人間不信で、業務やナレッジの属人化が甚だしく、本当に参っているんです。まあ、他のスタッフの能力が足りていないのがボトルネックなんですが、一人で抱え込み過ぎです……。ああ、失礼、つい余計な話をしてしまいました。それでご用件は?」
「──────」
「……お話はわかりました。ですが、協力は致し兼ねます。今度はこちらが狙われますので。私にも家族や友達とか、大事な人がいるんです。下手を打てば、そういう人にまで危害が及ぶじゃありませんか。副代表ならやり兼ねません」
「──────」
「そうおっしゃられても、無理なものは無理だと……」
「──────」
「いや、ですから……」
「──────」
「……はあ。あなたって、本当に人の話を聞きませんよね。ヴィネがどうやって立ち回っていたのか想像がつかないわ。でも、はい……わかりましたよ。そこだけ協力しますよ……あの処刑人の居場所がわかるようにすればいいんですね?」
「──────」
「とりあえず、情報システム部の同期に諮ってみます。多分、それくらいなら可能だと思いますよ。その代わり、私が絡んでいることはご内聞に願います」
「──────」
「別に構いません。やるとなったら最善を尽くすのが、このトゥクルカのモットーです。丁度これから行く予定があるので、ついでに頼んでみます。あなたはその辺で時間を潰していてください」
×時間後──
「お待たせしました。ご要望の件ですが、同期曰く、追跡は不能とのことです。と言いますのも、例の処刑人はスマートリングや端末を所持していないどころか……」
「──────」
「えっ? ええ、その通りです。こんなことは前例がないのですが……」
「──────」
「きな臭い話になってきましたね。あの処刑人、ただ者じゃないようです。それでこの後、どうされるおつもりですか?」
「──────」
「そうですか。追跡できない以上、尻尾を出すのを待つしかなさそうですね。まあ、あなたは自力でどうにかなさるんでしょうけど。今回の件も想定内だったようですし、追っ付けたどり着くんじゃありませんか?」
「──────」
「へえ、意外ですね。至上の処刑人と名高いあなたが新人相手に……」
「──────」
「……! いや、まさかそんな……だって、先日……」
「──────」
「なるほど……確かにそう言われてみれば得心が行きますが、ずいぶん恐ろしいことに気づかれましたね。今になって聞いたことを後悔し始めています。副代表はそのことを把握していると思われますか?」
「──────」
「でしょうね……わかりました。ひとまず胸の内に留めておきます。ところで、あなたのパートナーは今どちらに?」
「──────」
「それ、任せる相手をお間違えでは? ベリトは面白そうだと見るや、平気で寝返りますよ?」
「──────」
「あなたが納得しているなら、私がどうこう言うことではありませんが。一応、件の同期が彼女の情報をモニターしていますので、有事の際にはお伝えします」
「──────」
「わかりきったことです。同期は平素から副代表にメンタルをやられているので、溜飲を下げるのに願ってもない機会だと言っていましたよ。時にはこのような息抜きも必要ではないでしょうか」
「──────」
「申し伝えます。同期はあなたのファンなので、喜ぶかと」
「──────」
「……いいですって、別に。そんなことより、時間がかかってもいいので、必ずヴィネの仇を討ってくださいね。なるたけ惨い方法で……」
「──────」
「毒を食らわば皿までです。さっきの話が本当だとすれば、私はますます以てあの人を許せません」
「──────」
「今後を考えれば些か気が重いですが、譲れないことなので。あなたもそうなのでは?」
「──────」
「答えてくれなくて結構です。これ以上、深掘りしませんから。では、ご武運を」
2
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる