bias わたしが、カレを殺すまで。

帆足 じれ

文字の大きさ
上 下
49 / 151
第7章

44 本部の鼻を明かす方法 ☆

しおりを挟む
「……なあ、また力貸してくんねえかな……」

「あんた、何しようと思ってんの?」

「んなもん、決まってんだろ。あのジジイんことぶっ殺すんだよ……!」

「やめときな。ラックは本部からの依頼に応えただけ。責めるのはお門違いだよ」

「関係ねえ! やったんはあのジジイだ! オレ、ヴィネんこと……マジだったのに……っ! あいつ……あの野郎……っ!」

「気持ちはわかるけど、諦めた方がいい。第一、相手が悪いよ。あのオッサン、半端じゃない」

「あア!? あんなん、夜会のロシアンルーレットで運よく生き残った、ただの新入りだろうがよ! 凌遅さんが飼ってるクソ生意気な雌犬と変わんねえ! オレのが立っ端あっし、力だって……!」

「じゃあ、聞くけどさ。あんた、ハンニバルとガチのタイマンして、生きていられる自信あんの?」

「……は? 何で今、そんな話……」

「どうなの?」

「……いや、あの人は別っつーか、あんなヤベえ人と比べられても意味ねえっつーか……」

「同じだよ。あれは、あたしやあんたが太刀打ちできる相手じゃない」

「んなわけねえだろ! ジジイくらい余裕だわ!」

「馬鹿。ライブ配信見てて何も気づかなかったのかよ……」

「はア? どういう意味だよ!」

「だから、これはあのハンニバルすら躊躇う案件ってこと。ヴィネはあの男の連絡員リエゾンなんだよ? 普通なら、自分のリエゾンがむざむざ嬲り殺されるのを指くわえて見ているわけないんだ。事実、“この後約束があるから殺すな”ってラックを牽制してたろ? だけど“本部の指示だからご理解ください”って言われた挙句、引っ込めた。あんた、これがどういう意味かわかんないほどマヌケじゃないよね?」

「……っ!」

「おそらくハンニバルも、あのオッサンとぶつかったら、タダじゃ済まないって悟ったんだよ」

「…………」

「真性のヤバイ奴には、近づかないに越したことないんだ。本部に楯突くのもね。ヴィネはきっと、よっぽどのことやらかし──」

「っせえ! 黙っとけ!」

「…………」

「クソ……っ!!」

「…………」

「…………」

「…………」

「……悪い、あんたにキレても意味ねえよな」

「いいよ、気にしてない」

「オレ、頭悪いから、ヒトとどうやって距離詰めたらいいかわかんねえし、ヴィネにもウザがられてばっかだったんだけどよ。でも、あいつんこと、いつか絶対振り向かせるって決めてたんだよ……」

「…………」

「勘違いかも知んねえけど、あいつ最近、オレと一緒ん時、前より笑うようになったんだ。あのクソガキの話ばっかしててムカついたけど、会って話す回数増やせばなんか上手く行きそうな気ぃしてたんだよ……」

「そっか。だからあんた、あたしに発信機の相談なんかしてきたんだね」

「ああ、あん時はどうもな。あれ、役に立ったわ。ヴィネにはバチクソキレられたけどな……」

「ひとつ、本部の鼻を明かす方法があるって言ったら、どうする?」

「そんなん、あんのか?」

「あるよ。ただ、直接あんたの願いを叶えることには繋がらない。本部に間接的な損失を与えるだけ。それでもいい?」

「難しいこたわかんねえ。けど、何でもいいから思い知らせてやりてえ……」

「わかった。あんたとは同期のよしみだしね。一肌脱いでやる。その代わり、勝手なことして自滅するんじゃないよ」

「悪い、頼むわ。ところであんた、普段何の仕事してんだ? 何かただ者じゃねえ気ぃすんだけど……とかか?」

「そんなんじゃない。でもちょっとした伝手つてがあるんだ、にね」


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔女の虚像

睦月
ミステリー
大学生の星井優は、ある日下北沢で小さな出版社を経営しているという女性に声をかけられる。 彼女に頼まれて、星井は13年前に裕福な一家が焼死した事件を調べることに。 事件の起こった村で、当時働いていたというメイドの日記を入手する星井だが、そこで知ったのは思いもかけない事実だった。 ●エブリスタにも掲載しています

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

処理中です...