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1 雪山から
さんかいめ 第一、第二異世界人発見
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「…あれ!あんた大丈夫だった?」
正面の出入口に目を向ける。冷たい風と共にやって来たのは防寒具に包まれた二つの姿。見かけは小さい女の子だが…。と、遅れてペンダントを持った手を自分の背へ下げる。
「いやー良かったあ、目が覚めて!あまりにも起きなかったからさー!」
ぱっちりと俺を見ていた目はすぐに細まると、笑顔って感じで口が開く。その活発そうな女の子は、喋りながらその場で軽く雪を落とした。その元気な印象にぴったりな赤い髪は少し濡れていたがお構いなしにくるくるとしていた。
もう一方の子は、まっすぐ俺を見つめて動かない。横の子とは違い、真っ白で真っ直ぐな髪。目をけだるげに開いていて、下まつ毛が長い。
「…あの、ここって」
「ああ、やっぱりここら辺の人じゃないよね?見たことないと思ってたんだあ。ちょっと待ってねー」
「…あ」
赤髪の子はカウンターまで来るとついさっき自分がペンダントーー反応を見るに、やはり翻訳機の様な道具で間違いなさそうだーーを取った場所を探した。
「すみません、これ…」
すぐに膝をついて返そうとする。
「あらあ、それでなくてもいいんのにさー。予備持ってくるわー」
優しい。これは申し訳ない。
赤髪の子は後ろの部屋に入り大きな物音を立てている。「そういえば」とふと目をやると、白髪の子は丁度俺を見ていたのか一瞬身を縮め、右手右足、左手左足、と典型的な緊張の仕方でカウンターに向かって来た。奥に続く扉近くの小さめの椅子に座ると、壁にもたれて一息ついたようだった。予想外の可愛らしい動きに少し気持ちが和んだところで、部屋から赤髪の子が出てきた。
「それ結構使ってるからこっち使ってていいよー」とより装飾の凝った綺麗めなペンダントを渡された。代わりにと自分が取ったペンダントを渡すと、赤髪の子はそれを首にかけた。
「いやあ、よく使ってる古いやつだったからさ、ごめんねー」
「いえ、俺も勝手に持っててすみません」
(…まず、このペンダントの石が言葉が通じるようになるやつそうで良かった。)
ひとまずはこれを使って話を聞いてから、手に入れられるなら自力で手に入れよう。
「あらあ、別にいいんよー。それにしてもなんであの大雪の中倒れてたんのよ。」
「えっと、倒れてたって…どこにですか?」
「んーまあ近いけど、麓からここまでの道でよ。」
こういう"転生"とかって記憶が始まる時と同時に体も新しく出来るんじゃないんだろうか。
この人生の記憶はさっきの、ベッドの上からだ。この体は自分のものだと思っていたが、前は誰かのものだったんだろうか。それともただ単に、体があって記憶は始まるのが遅かっただけとか?
「…そうだ、しかも一人で登ってきたんじゃない?ゲノンのとこの人らに送って、もらわなかったーのっ…て…」
「…」
「あ、あれ?もしかして、記憶ない感じ?」
「…多分、そうですね」
「ええー!結構前だけど、そういう人いたんよね、一回。同じ状態で倒れてたから、薄々あんたもそうなんじゃないかって思ってたんだあ。」
「記憶がない人がですか?」
「そう。今回と全く同じ状況だったかは覚えてないけどさ。記憶がなかったし、しかもうち出てから見える所で雪の中で倒れてたんよー。本当に心配したわあ」
自分と同じような状況…?他に転生者がいるんだろうか。だとしても、何で雪の中で…。
「…俺の近くに、荷物とかありませんでしたか」
ワンチャン。手ぶらでなかったら少しでも、活用出来るものがあるかも知れない。
「それがその人もだったけど無いのよねー。本当に、二人して何で何も持たずにここに来ようとしたんのよ」
「その、俺と同じような状況だった人って今、どこにいますか」
「流石に分からないけど、でもやっぱりこの麓の町じゃないかしら。もっと遠くに行った可能性もあるけど」
…俺はまずその人を探そう。もしその人が俺と同じ転生者だったら、何か情報をもらえるかもしれない。
そしてこの体について。もしかしたら新しいのは記憶だけで、体は他の誰かのものだったかもしれない。今の俺の容姿を見たことがある人がいるかも少し気にしてみよう。俺のここでの生活、この体の持ち主だったかもしれないやつの人生が何か危ないようなら出来ることはしないといけない。
「もしかして、その人探しに行くの?」
「はい…そうしようと思います」
「うん。まあ、どっちにしろずっとここにいる訳にもいかないだろし。でもすぐには行けないからこっちの部屋で待ってて」
赤髪の子に招かれてカウンター後ろの部屋に入る。
「ゲノンかその愉快な仲間たち呼んだぐるから、あんたはルトの相手しててね」
正面の出入口に目を向ける。冷たい風と共にやって来たのは防寒具に包まれた二つの姿。見かけは小さい女の子だが…。と、遅れてペンダントを持った手を自分の背へ下げる。
「いやー良かったあ、目が覚めて!あまりにも起きなかったからさー!」
ぱっちりと俺を見ていた目はすぐに細まると、笑顔って感じで口が開く。その活発そうな女の子は、喋りながらその場で軽く雪を落とした。その元気な印象にぴったりな赤い髪は少し濡れていたがお構いなしにくるくるとしていた。
もう一方の子は、まっすぐ俺を見つめて動かない。横の子とは違い、真っ白で真っ直ぐな髪。目をけだるげに開いていて、下まつ毛が長い。
「…あの、ここって」
「ああ、やっぱりここら辺の人じゃないよね?見たことないと思ってたんだあ。ちょっと待ってねー」
「…あ」
赤髪の子はカウンターまで来るとついさっき自分がペンダントーー反応を見るに、やはり翻訳機の様な道具で間違いなさそうだーーを取った場所を探した。
「すみません、これ…」
すぐに膝をついて返そうとする。
「あらあ、それでなくてもいいんのにさー。予備持ってくるわー」
優しい。これは申し訳ない。
赤髪の子は後ろの部屋に入り大きな物音を立てている。「そういえば」とふと目をやると、白髪の子は丁度俺を見ていたのか一瞬身を縮め、右手右足、左手左足、と典型的な緊張の仕方でカウンターに向かって来た。奥に続く扉近くの小さめの椅子に座ると、壁にもたれて一息ついたようだった。予想外の可愛らしい動きに少し気持ちが和んだところで、部屋から赤髪の子が出てきた。
「それ結構使ってるからこっち使ってていいよー」とより装飾の凝った綺麗めなペンダントを渡された。代わりにと自分が取ったペンダントを渡すと、赤髪の子はそれを首にかけた。
「いやあ、よく使ってる古いやつだったからさ、ごめんねー」
「いえ、俺も勝手に持っててすみません」
(…まず、このペンダントの石が言葉が通じるようになるやつそうで良かった。)
ひとまずはこれを使って話を聞いてから、手に入れられるなら自力で手に入れよう。
「あらあ、別にいいんよー。それにしてもなんであの大雪の中倒れてたんのよ。」
「えっと、倒れてたって…どこにですか?」
「んーまあ近いけど、麓からここまでの道でよ。」
こういう"転生"とかって記憶が始まる時と同時に体も新しく出来るんじゃないんだろうか。
この人生の記憶はさっきの、ベッドの上からだ。この体は自分のものだと思っていたが、前は誰かのものだったんだろうか。それともただ単に、体があって記憶は始まるのが遅かっただけとか?
「…そうだ、しかも一人で登ってきたんじゃない?ゲノンのとこの人らに送って、もらわなかったーのっ…て…」
「…」
「あ、あれ?もしかして、記憶ない感じ?」
「…多分、そうですね」
「ええー!結構前だけど、そういう人いたんよね、一回。同じ状態で倒れてたから、薄々あんたもそうなんじゃないかって思ってたんだあ。」
「記憶がない人がですか?」
「そう。今回と全く同じ状況だったかは覚えてないけどさ。記憶がなかったし、しかもうち出てから見える所で雪の中で倒れてたんよー。本当に心配したわあ」
自分と同じような状況…?他に転生者がいるんだろうか。だとしても、何で雪の中で…。
「…俺の近くに、荷物とかありませんでしたか」
ワンチャン。手ぶらでなかったら少しでも、活用出来るものがあるかも知れない。
「それがその人もだったけど無いのよねー。本当に、二人して何で何も持たずにここに来ようとしたんのよ」
「その、俺と同じような状況だった人って今、どこにいますか」
「流石に分からないけど、でもやっぱりこの麓の町じゃないかしら。もっと遠くに行った可能性もあるけど」
…俺はまずその人を探そう。もしその人が俺と同じ転生者だったら、何か情報をもらえるかもしれない。
そしてこの体について。もしかしたら新しいのは記憶だけで、体は他の誰かのものだったかもしれない。今の俺の容姿を見たことがある人がいるかも少し気にしてみよう。俺のここでの生活、この体の持ち主だったかもしれないやつの人生が何か危ないようなら出来ることはしないといけない。
「もしかして、その人探しに行くの?」
「はい…そうしようと思います」
「うん。まあ、どっちにしろずっとここにいる訳にもいかないだろし。でもすぐには行けないからこっちの部屋で待ってて」
赤髪の子に招かれてカウンター後ろの部屋に入る。
「ゲノンかその愉快な仲間たち呼んだぐるから、あんたはルトの相手しててね」
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