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第十三話 ねこっちと新しい家
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新しい家に到着しました。引越し屋さんが大きな荷物をたくさん運んでくれています。荷物が運び終わるまで、ねこっちは車で待機なのです。荷物が運び終わって、くんちゃんがねこっちを迎えに来てくれました。
新しい家は前の家より少し広めでした。ねこっちは早速探検と見回りです。
明日からくんちゃんが仕事に出掛けたらねこっちがここを守るのです。でもしばらくは、りぃちゃんもお泊りしてくれることになったので、ねこっちはとても嬉しかったのです。
くんちゃんとりぃちゃんが荷物をほどいて片付けをしていると誰かがやってきました。
「手伝いに来てあげたわよ」
そう言ってやって来たのはくんちゃんのお母さんでした。
「別に手伝いはいらないって言ってあったでしょ!」
くんちゃんはいつもより少し強めの口調で言いました。ねこっちは、くんちゃんのお母さんに挨拶をしておこうと思って玄関まで行きました。
「くんちゃんのお母さん、こんにちは。ねこっちなのですよ」
するとくんちゃんのお母さんは、ねこっちを見てこう言ったのです。
「何? この汚い灰色の猫は」
ねこっちが驚いて動けないでいると、お母さんはねこっちを蹴ろうとしました。
くんちゃんがサッとねこっちを抱っこしてくれて無事だったけど、同じ猫やカラスに『グチャグチャの汚い灰色の猫』と言われたことを思い出してねこっちは泣きそうな気持ちになりました。
その時でした。くんちゃんはハッキリした口調で言ってくれたんです。
「ねこっちはこの世でたった一匹の特別な柄を持ってる猫なんだよ! ねこっちの悪口言うなら帰って!」
ねこっちはくんちゃんに掴まったまま、お母さんを見ていました。
そうです。あの頃とはもう違うのです。ねこっちには、くんちゃんがいるのです。
「そんな汚い猫よりうちの王子の方がキレイで可愛いんだからね!」
お母さんが、吐き捨てるようにそう言うとくんちゃんが厳しい声で言い返します。
「そのキレイで可愛い王子には毎日エサをやってるの? ブラッシングは? 爪の手入れは? 躾は? 何もやってないでしょ! 気が向いた時だけ可愛がるのは命に対して失礼だよ!」
「出来る限りちゃんとやってるわよ! エサも3日に1回は上げてるし? 実際それで死んでないし? この前病院にも連れてったんだからね! 猫ごときに病院代払ったんだから!」
お母さんの言い訳を、くんちゃんは怖い顔をして聞いていました。
「それで? どうして病院に行く羽目になったの?」
「爪が網戸に引っかかったまま動けなくなってたみたいで、久しぶりに家に帰ったらぐったりしてたから……」
「だから爪はちゃんと切るように言ったじゃない! 無責任すぎるよ!」
「大体グッタリしてても生きてたのが悪いのよ! 死んでてくれたらよかったのに! 生き物が死ぬ所は見たくないのに!」
ここまで聞いて、くんちゃんはねこっちを優しくなでながらお母さんに言いました。
「私だったら最後の死に目まで絶対面倒をみる。もう帰って。二度とうちには来ないで。ねこっちが怯えるから」
お母さんは、帰り際にこう言い残しました。
「あ、でも病院行ったついでに体調の検査もしてもらってきたのよ? うちの王子『猫エイズ』って病気なんだってさ」
この言葉にくんちゃんは動きを止めました。すぐに、荷物を解いてくれてたりぃちゃんを呼んで、ねこっちを奥の部屋に連れて行くように言いました。そして、お母さんが立っていた所や触れた物を全部掃除し始めたのです。
不安になったねこっちは、りぃちゃんに聞きます。
「くんちゃんはどうしちゃったのですか?」
「あのね、ねこっちは『猫白血病』でしょ? 『猫エイズ』の猫の毛に触れるだけでも猫白血病は発病しちゃうんだよ」
「ねこっちの為に掃除してくれてるのですか?」
「そうだよ。くんちゃんはねこっちが大好きだから、長生きして欲しいんだよ」
ねこっちもくんちゃんが大好きだから、一所懸命生きようと思いました。
初日から嫌なこともあったけど、ねこっちはここでくんちゃんと一緒に頑張ろうと思いました。
新しい家は前の家より少し広めでした。ねこっちは早速探検と見回りです。
明日からくんちゃんが仕事に出掛けたらねこっちがここを守るのです。でもしばらくは、りぃちゃんもお泊りしてくれることになったので、ねこっちはとても嬉しかったのです。
くんちゃんとりぃちゃんが荷物をほどいて片付けをしていると誰かがやってきました。
「手伝いに来てあげたわよ」
そう言ってやって来たのはくんちゃんのお母さんでした。
「別に手伝いはいらないって言ってあったでしょ!」
くんちゃんはいつもより少し強めの口調で言いました。ねこっちは、くんちゃんのお母さんに挨拶をしておこうと思って玄関まで行きました。
「くんちゃんのお母さん、こんにちは。ねこっちなのですよ」
するとくんちゃんのお母さんは、ねこっちを見てこう言ったのです。
「何? この汚い灰色の猫は」
ねこっちが驚いて動けないでいると、お母さんはねこっちを蹴ろうとしました。
くんちゃんがサッとねこっちを抱っこしてくれて無事だったけど、同じ猫やカラスに『グチャグチャの汚い灰色の猫』と言われたことを思い出してねこっちは泣きそうな気持ちになりました。
その時でした。くんちゃんはハッキリした口調で言ってくれたんです。
「ねこっちはこの世でたった一匹の特別な柄を持ってる猫なんだよ! ねこっちの悪口言うなら帰って!」
ねこっちはくんちゃんに掴まったまま、お母さんを見ていました。
そうです。あの頃とはもう違うのです。ねこっちには、くんちゃんがいるのです。
「そんな汚い猫よりうちの王子の方がキレイで可愛いんだからね!」
お母さんが、吐き捨てるようにそう言うとくんちゃんが厳しい声で言い返します。
「そのキレイで可愛い王子には毎日エサをやってるの? ブラッシングは? 爪の手入れは? 躾は? 何もやってないでしょ! 気が向いた時だけ可愛がるのは命に対して失礼だよ!」
「出来る限りちゃんとやってるわよ! エサも3日に1回は上げてるし? 実際それで死んでないし? この前病院にも連れてったんだからね! 猫ごときに病院代払ったんだから!」
お母さんの言い訳を、くんちゃんは怖い顔をして聞いていました。
「それで? どうして病院に行く羽目になったの?」
「爪が網戸に引っかかったまま動けなくなってたみたいで、久しぶりに家に帰ったらぐったりしてたから……」
「だから爪はちゃんと切るように言ったじゃない! 無責任すぎるよ!」
「大体グッタリしてても生きてたのが悪いのよ! 死んでてくれたらよかったのに! 生き物が死ぬ所は見たくないのに!」
ここまで聞いて、くんちゃんはねこっちを優しくなでながらお母さんに言いました。
「私だったら最後の死に目まで絶対面倒をみる。もう帰って。二度とうちには来ないで。ねこっちが怯えるから」
お母さんは、帰り際にこう言い残しました。
「あ、でも病院行ったついでに体調の検査もしてもらってきたのよ? うちの王子『猫エイズ』って病気なんだってさ」
この言葉にくんちゃんは動きを止めました。すぐに、荷物を解いてくれてたりぃちゃんを呼んで、ねこっちを奥の部屋に連れて行くように言いました。そして、お母さんが立っていた所や触れた物を全部掃除し始めたのです。
不安になったねこっちは、りぃちゃんに聞きます。
「くんちゃんはどうしちゃったのですか?」
「あのね、ねこっちは『猫白血病』でしょ? 『猫エイズ』の猫の毛に触れるだけでも猫白血病は発病しちゃうんだよ」
「ねこっちの為に掃除してくれてるのですか?」
「そうだよ。くんちゃんはねこっちが大好きだから、長生きして欲しいんだよ」
ねこっちもくんちゃんが大好きだから、一所懸命生きようと思いました。
初日から嫌なこともあったけど、ねこっちはここでくんちゃんと一緒に頑張ろうと思いました。
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