周りから見たら明らかに両想いなのに当人同士はどちらも自分の片想いだと思っている夫婦の話

きんのたまご

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旦那様のお話を立ち聞きしてしまってから私の気持ちはどんよりしたまま。
「はぁ」
最近では癖になりつつある、今日何度目か分からなくなった溜め息をつく。

「奥様、お茶になさいませんか?」
私は首を振る。
「……こちらのお菓子シェフの自信作らしいですよ。是非奥様に食べて頂きたいと」
薔薇の形の小さな焼き菓子。
「かわいい」
私がそう呟くと
「そうなんです!とても可愛いですよね」
と1つ取り分けてくれた。
「美味しい」
口に入れると濃厚なバターの香り。甘くて美味しい。
「良かったです」
優しく笑ってくれる使用人。
「こちらのお茶もとても美味しいですよ」
とカップにお茶を注いでいく。
とてもいい香りのお茶。1口飲んでみるとフルーティーな香りがした。ほぅ。なんだか心が穏やかになる。
「ありがとう」
.........もしかしたら心配掛けていたのかもしれないわ。ダメね私。
しばし無言でお茶を飲む。
いつもならすぐ退出する使用人が何か言いたそうにこちらをチラチラ見てる。
やっぱり心配かけたんだわ。
「貴方達には心配かけてごめんなさいね」
私は心からのお礼を言う。
すると使用人は決心したような顔をして
「奥様、差し出がましいかと思いますが何か心配事がおありなら!頼りにならないかもしれませんが、旦那様にご相談されてはいかがでしょうか?確かにあの旦那様に相談されたところで解決するかと問われればそれは否かもしれませんが、それでも人に話して気持ちが楽になる事もあると思います!」
……あら、途中なにか失礼な事が聞こえてきたような気もしたけれど。気のせいね、優秀な使用人達が旦那様の事を悪く言うわけはないし。
「ありがとう」
私は自然と微笑んでいた。

この先旦那様と私がどうなるかはわからないけれど、こんなに心配してくれる使用人達がいるのだし大丈夫かもしれないわ。
「そうね、じゃあ少し聞いてくれる?」
そして私はあの日、旦那様の部屋で聞いた事を使用人に相談した。
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