元妻からの手紙

フレア

チュニックさんが侍女になってからの生活は想像していたよりも酷いものだった。
アカデミーにいた頃とは比べ物にならないくらいに日々誰もいない部屋の中で繰り返される罵詈雑言。
私の使っていたものは全て奪われ、実家から持ってきた宝石やドレスなども全て売られてしまったようだった。
それでもチュニックさんの前で泣いては何だか負けたような気がして……それだけはしなかった。
どんどん変わっていく私の様子にアウターがいずれ気付いてくれるかもしれないと淡い期待を抱いたりした時もあったけれど……結局アウターが私の話しをまともに聞いてくれる日は来なかった。
……そう、あんなに優しくて人の話も黙って聞いていてくれたアウターはいつの日からか私の話は聞いてくれなくなっていた。

そのうちに私は全ての事に諦めるようになった。それと同時にこのままやられたままではいられないと思うようになる。
大人しく優しいと…私の事を皆は言うけれど……私だって人間なのだ……。
そして決定的な日が来る。
チュニックさんがアウターの子供を妊娠したと言ってきたのだ。
アウターとチュニックさんがそういう関係である事はチュニックさん自ら私に言って来ていたので知っていたが……とうとうこの日が来てしまった。
ショックを受けていると思われたくなくて必死に強がり笑顔でおめでとうと伝える。

私はかねてから計画していた内容をお義父様に話す。
もうこれで後戻りは出来ない。

その頃からアウターは屋敷の敷地内でチュニックさんと暮らし始めたようで帰ってこなくなった……でもそれは私にも好都合でこれからの計画の為に動くには丁度良かった。
それでもチュニックさんはアウターがいないうちに私の元へとやって来ては妊婦とは思えないような醜悪な顔で私を罵っていた。
そしていよいよチュニックさんが子供を産んだらしい。
暫く動けなかったのか私の前に現れなかったチュニックさんが子供を抱いて私の前に現れる。
それは決してアウターには似ても似つかない子供だったけれど……私の姿が見えていないあの人には子供の顔さえまともに見えていないのだろう。
それとも、自分の見たいようにしか見えていないのだろうか。
まあもうどっちでもいいか。
チュニックさんが言う。
「私も子供を産んでこの家も安泰よ！そ
ろそろ貴女を追い出してやるわ」

チュニックさんがそう言ってくれた事で先に向こうの計画が知れて私も対策を立てることが出来た。
敢えて実家に帰る事をしない事にした私は取り引き先の公爵の厚意で公爵家に身を寄せる事になった。
この後の計画でもお世話になるのに申し訳ないと断ったけれど…その計画の事もあるからと半ば強引に公爵家へと迎え入れて貰えた。
本当に周りの人達には感謝しかない。

本当に一番味方して欲しかったアウターには結局裏切られる事になってしまったけれど……この世の全ての人を恨んでしまうには私は周りの人に恵まれていた。