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カーディガン伯爵 後
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それから上手く婚約が纏まり、二人は結婚した。
結婚した当初、幸せだった。
すっかり元気になった息子に心の優しい綺麗な嫁、楽しく働く使用人、事業も順調あの頃は本当に何もかもが上手くいっていた。
そんなある日、夜会から帰って来た息子が何処ぞの男爵家の娘を行儀見習いがてらフレアの侍女として迎え入れたいと言ってきた。
聞けばその娘はアカデミー時代からのフレアの友人らしく、そんな話はまあ特段珍しい事でも無いのでその時は反対するつもりも無かったのだが、その話をする息子の隣に並ぶフレアの浮かない顔が少し気になった。
まぁ反対するつもりは無いと言ってもどんな家か調べるのは基本である、勿論私もそのチュニックとか言う娘の家の事、その娘に関することを軽く調べた。
すると男爵家自体に何か問題があった訳では無かったのだがチュニックと言う娘は酷かった。
手当り次第と言って良いほど周りの令息達に色目を使い何件もの婚約を破棄させて来た。
フレアとも友達だと言っていたがその実自分よりも高位の貴族であるフレアを虐めていた。
それはもう徹底的に自分がやったとは分からないように。
それでもフレアは気付いていたようだったが………そう言うものは目線や雰囲気などで案外分かったりもする。
しかもあの女は自己顕示欲が強いだろうし気の弱いフレアを馬鹿にした態度を取っていたのだろう。
そこまで調べてフレアはチュニックに侍女にはなって欲しくないと思っている事が分かった。
あの表情の理由はこれか……。
それにしてもアウターはどうしたというのだろうか。あいつは言っていた、チュニックを侍女にすることはフレアも喜んでいると。
どこをどう考えどこを見てそう思ったのか……。
私は秘密裏にフレアを呼び出す。
こちらが調べた事を言い話しを聞くとやはりチュニックを侍女として迎える事はしたくないと言った。
しかしながら夜会の場で断ろうとしたフレアの言葉を遮りアウターが勝手に決めてしまった事、最近フレアの話しをアウターが聞かない事そんな事を聞かされる。
いくらあいつが決めてしまった事といえど私が本気で反対すればあんな女をこの屋敷に招き入れる事などしなくてもいいと言ったが、フレアはそんな事を勝手にすればアウターは気を悪くするし、チュニックもまさか侍女として仕える相手に嫌がらせをする事も無いだろうと言う話になり問題が起これば直ぐに男爵家に訴状と共にあの女を返すと決めチュニックを迎える事になった。
あの女は暫くはそれらしく振舞っていたようだが一ヶ月二ヶ月と経つうちにフレアの状態は見るからに酷くなった。
その内フレアが嫁いで来た時からフレアの事をあまり良く思っていなかった少数派の使用人を味方に付け好き放題し始める。
相変わらずフレアには目もくれずチュニックという毒女の事ばかり気にかけているアウターには何を言っても無駄だと気付き始めていた。
その頃から親戚筋へうちの後継者になりうる者がいないか探し始める。
そして私がもうアウターを見限っている事、あの毒女を送り返すと決めた事等をまた秘密裏に
呼んだフレアに話す。
するとその話を聞いたフレアの口から到底思いもよらない言葉が聞かれる。
「暫くこの状態のままいて欲しい」
私にはその時フレアが何を思いそう言っているのかが分からなかった。
たが分かることも一つだけあった…きっとフレアには何か考えが有るのだと言う事。
説明もされず暫く現状のままと言われ到底納得する事などは出来なかったがフレアの考えを信じその時は何も言わなかった。
暫くして状況は最悪になる。
アウターとチュニックが不倫関係になってしまった。
いくらフレアの頼みであってもこれ以上見て見ぬふり出来ないとアウターを呼び出そうとしている時フレアから話があると言われ私と妻は今回の計画と何故フレアがこんな計画を立てたかを聞かされる事となる。
その後私達夫婦はフレアの計画通り領地に引っ込みあの二人に関わる事はしなかった。
そしていよいよ今日。フレアからあの日聞かされた計画の大詰めの日。私達夫婦は懐かしくも様変わりしてしまった屋敷へと戻って来た。
枯れ果て潰される途中の花壇を見て妻は泣き出した。
使用人達も私達夫婦を誰にも見つからないようこっそりと迎え入れてくれた執事以外見たこともない顔ばかり。
今まではやはりどこかに親子の情もありアウターが改心してくれる事を夢見ていた所があった私だったが、もうアウターは捨てようと嘆き悲しむ妻と変わり果てた屋敷を見てそう決意する。
そしてついにこの時が来た、執務室の前でチュニックが大きな声で自分の罪を告白しているのを聞く。
怒りで握った拳が震えるのが分かる、今すぐにでも飛び出して二人を思う存分殴ってやりたい衝動に駆られたが我慢して中の様子を伺う。
その後執事が執務室に入り私達夫婦も中へと入る。
目の前で私達夫婦を馬鹿にし罵倒するこの醜悪な女の何処に息子は惹かれたのだろうか。
やはり私の育て方が間違っていたのか…そんな事を思う私にフレアのあの日の言葉が蘇る。
そう、今は過去を悔いている時ではないしっかりしなければ。
そう決意し、私は目の前にいる嘗て息子だった男と醜悪さを絵に書いたような女から目を逸らさずに見詰めていた。
結婚した当初、幸せだった。
すっかり元気になった息子に心の優しい綺麗な嫁、楽しく働く使用人、事業も順調あの頃は本当に何もかもが上手くいっていた。
そんなある日、夜会から帰って来た息子が何処ぞの男爵家の娘を行儀見習いがてらフレアの侍女として迎え入れたいと言ってきた。
聞けばその娘はアカデミー時代からのフレアの友人らしく、そんな話はまあ特段珍しい事でも無いのでその時は反対するつもりも無かったのだが、その話をする息子の隣に並ぶフレアの浮かない顔が少し気になった。
まぁ反対するつもりは無いと言ってもどんな家か調べるのは基本である、勿論私もそのチュニックとか言う娘の家の事、その娘に関することを軽く調べた。
すると男爵家自体に何か問題があった訳では無かったのだがチュニックと言う娘は酷かった。
手当り次第と言って良いほど周りの令息達に色目を使い何件もの婚約を破棄させて来た。
フレアとも友達だと言っていたがその実自分よりも高位の貴族であるフレアを虐めていた。
それはもう徹底的に自分がやったとは分からないように。
それでもフレアは気付いていたようだったが………そう言うものは目線や雰囲気などで案外分かったりもする。
しかもあの女は自己顕示欲が強いだろうし気の弱いフレアを馬鹿にした態度を取っていたのだろう。
そこまで調べてフレアはチュニックに侍女にはなって欲しくないと思っている事が分かった。
あの表情の理由はこれか……。
それにしてもアウターはどうしたというのだろうか。あいつは言っていた、チュニックを侍女にすることはフレアも喜んでいると。
どこをどう考えどこを見てそう思ったのか……。
私は秘密裏にフレアを呼び出す。
こちらが調べた事を言い話しを聞くとやはりチュニックを侍女として迎える事はしたくないと言った。
しかしながら夜会の場で断ろうとしたフレアの言葉を遮りアウターが勝手に決めてしまった事、最近フレアの話しをアウターが聞かない事そんな事を聞かされる。
いくらあいつが決めてしまった事といえど私が本気で反対すればあんな女をこの屋敷に招き入れる事などしなくてもいいと言ったが、フレアはそんな事を勝手にすればアウターは気を悪くするし、チュニックもまさか侍女として仕える相手に嫌がらせをする事も無いだろうと言う話になり問題が起これば直ぐに男爵家に訴状と共にあの女を返すと決めチュニックを迎える事になった。
あの女は暫くはそれらしく振舞っていたようだが一ヶ月二ヶ月と経つうちにフレアの状態は見るからに酷くなった。
その内フレアが嫁いで来た時からフレアの事をあまり良く思っていなかった少数派の使用人を味方に付け好き放題し始める。
相変わらずフレアには目もくれずチュニックという毒女の事ばかり気にかけているアウターには何を言っても無駄だと気付き始めていた。
その頃から親戚筋へうちの後継者になりうる者がいないか探し始める。
そして私がもうアウターを見限っている事、あの毒女を送り返すと決めた事等をまた秘密裏に
呼んだフレアに話す。
するとその話を聞いたフレアの口から到底思いもよらない言葉が聞かれる。
「暫くこの状態のままいて欲しい」
私にはその時フレアが何を思いそう言っているのかが分からなかった。
たが分かることも一つだけあった…きっとフレアには何か考えが有るのだと言う事。
説明もされず暫く現状のままと言われ到底納得する事などは出来なかったがフレアの考えを信じその時は何も言わなかった。
暫くして状況は最悪になる。
アウターとチュニックが不倫関係になってしまった。
いくらフレアの頼みであってもこれ以上見て見ぬふり出来ないとアウターを呼び出そうとしている時フレアから話があると言われ私と妻は今回の計画と何故フレアがこんな計画を立てたかを聞かされる事となる。
その後私達夫婦はフレアの計画通り領地に引っ込みあの二人に関わる事はしなかった。
そしていよいよ今日。フレアからあの日聞かされた計画の大詰めの日。私達夫婦は懐かしくも様変わりしてしまった屋敷へと戻って来た。
枯れ果て潰される途中の花壇を見て妻は泣き出した。
使用人達も私達夫婦を誰にも見つからないようこっそりと迎え入れてくれた執事以外見たこともない顔ばかり。
今まではやはりどこかに親子の情もありアウターが改心してくれる事を夢見ていた所があった私だったが、もうアウターは捨てようと嘆き悲しむ妻と変わり果てた屋敷を見てそう決意する。
そしてついにこの時が来た、執務室の前でチュニックが大きな声で自分の罪を告白しているのを聞く。
怒りで握った拳が震えるのが分かる、今すぐにでも飛び出して二人を思う存分殴ってやりたい衝動に駆られたが我慢して中の様子を伺う。
その後執事が執務室に入り私達夫婦も中へと入る。
目の前で私達夫婦を馬鹿にし罵倒するこの醜悪な女の何処に息子は惹かれたのだろうか。
やはり私の育て方が間違っていたのか…そんな事を思う私にフレアのあの日の言葉が蘇る。
そう、今は過去を悔いている時ではないしっかりしなければ。
そう決意し、私は目の前にいる嘗て息子だった男と醜悪さを絵に書いたような女から目を逸らさずに見詰めていた。
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