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あの頃の泣き顔、今の笑顔
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翌日また届いた元妻からの手紙。
「奥様はお元気ですか」
この手紙には目の前が真っ赤になるような怒りが込み上げた。
あれだけチュニックの事を虐めておいて!
どの面を下げてお前が元気かと聞くのか!
あの頃のチュニックは毎日泣いていた!
それも全てフレア、お前のせいだ!
ある日出先から家に帰るといつも妻よりも笑顔で迎えてくれるチュニックが妻の後にいなかった。
その時は「まあ、他の仕事でもあったのだろう」と気にしなかったのだが、そんな事が暫く続き私はチュニックの顔を見ることが無くなった。
その時は今のようにチュニックの事を愛していた訳では無かったが、妻と違って花咲くような明るい笑顔のチュニックの存在感はすごく、出会わなくなると気になるようになった。
そこ頃の妻の顔が思い出せない程にチュニックの笑顔は印象的だった。
そんなある日チュニックの後ろ姿を目にした私はチュニックを追って話しかけた。
すると振り向いたチュニックは泣いていた。
いつも明るいチュニックが泣くなんて余程の事に違いないとその場でどうしたのかと聞いた私にチュニックは無理に笑顔を作りなんでもありません、大丈夫ですと言った。
その時は無理に詳しくは聞かなかったがその日から注意深くチュニックを見るようになった。
妻の侍女であるはずなのにいつも一人でいるチュニック………いつもの笑顔は失われていた。
その頃のチュニックはいつも泣き腫らしたような真っ赤な目をしていて……私は堪らずチュニックを問いただす。
「どうしたんだ?」
「いえ……なんでもありません」
「そんな事は無いだろう!あんなに明るかった君がいつもいつも真っ赤な目で!一体どうしたと言うんだ!」
「気になさらないで下さい。私は今は奥様の侍女、ただの使用人なのです……」
「いや、君は妻の侍女ではあるがれっきとした男爵令嬢だ!男爵家からお預かりしている大切なお嬢さんが我が屋敷で憂う事があってはいけない!」
私がそう言うと今まで堪えていたのだろう、堰を切ったように私の胸にしがみつき声を上げて泣き始めたチュニック、私はそんなチュニックを抱き締めた。
暫くして落ち着いたのかチュニックはポツリと言った。
「………フレア様は私の事が嫌いなのでしょうか……」
「えっ?」
私がそう聞き返すとチュニックは慌てたように「なんでもありません!」
と言ってその場から走って行ってしまった。
………まさか、フレアがチュニックを…?
私はにわかには信じられなかった。
あんなに優しいフレアが友人であるチュニックに何かするなんて……いや、しかし……では何故チュニックはあんな事を……。
私は急いでフレアの元へ向かった。
「旦那様、急いでどうなさったのですか」
こんなに大人しい妻がそんな事をする筈は無いと思いながらもチュニックの事を聞くために口を開く。
「チュニックの事なんだが」
私がそう言うと妻は誰が見てもハッキリと分かる程肩をビクリと揺らした。
………この反応はなんなのだろう。
「チュ、チュニックさんが……どうなさったのですか……」
明らかに青ざめるフレアの顔……まさか!本当にフレアがチュニックを泣かせている原因なのか。信じた妻に裏切られたような気持ちがして私はそのまま妻に背を向け歩き出した。
あれ程怒りが込み上げたことは無かった。
コンコン
「入れ」
私がそう言うと扉を開けて入って来たのはチュニック。
「どうされたの?最近お部屋に籠られる事が多くなりましたわね」
「いや、なんでもない」
そう言って私は近付いて来た愛しい妻の頬を撫でる。
「あの頃フレアにどんな事をされていた?」
先程まで考えていた事が口から出た、ある程度の事は聞いたが辛いことをあまり詳しく聞くのは可哀想だったのであの頃は聞けなかったが今ならば、そんな気持ちで出てきた言葉。
しかしこの言葉に妻の顔は一瞬で無表情になった。
「どうして今更そんな事を?」
しかしながら見間違えだったのだろうか、そう聞いてきた妻は既にいつもの笑顔で……。
やっと元妻から受けた傷が癒えて笑えるようになったチュニック。
わざわざこの笑顔を曇らせるようなことをする必要も無いかとそれ以上聞くことは無かった。
「奥様はお元気ですか」
この手紙には目の前が真っ赤になるような怒りが込み上げた。
あれだけチュニックの事を虐めておいて!
どの面を下げてお前が元気かと聞くのか!
あの頃のチュニックは毎日泣いていた!
それも全てフレア、お前のせいだ!
ある日出先から家に帰るといつも妻よりも笑顔で迎えてくれるチュニックが妻の後にいなかった。
その時は「まあ、他の仕事でもあったのだろう」と気にしなかったのだが、そんな事が暫く続き私はチュニックの顔を見ることが無くなった。
その時は今のようにチュニックの事を愛していた訳では無かったが、妻と違って花咲くような明るい笑顔のチュニックの存在感はすごく、出会わなくなると気になるようになった。
そこ頃の妻の顔が思い出せない程にチュニックの笑顔は印象的だった。
そんなある日チュニックの後ろ姿を目にした私はチュニックを追って話しかけた。
すると振り向いたチュニックは泣いていた。
いつも明るいチュニックが泣くなんて余程の事に違いないとその場でどうしたのかと聞いた私にチュニックは無理に笑顔を作りなんでもありません、大丈夫ですと言った。
その時は無理に詳しくは聞かなかったがその日から注意深くチュニックを見るようになった。
妻の侍女であるはずなのにいつも一人でいるチュニック………いつもの笑顔は失われていた。
その頃のチュニックはいつも泣き腫らしたような真っ赤な目をしていて……私は堪らずチュニックを問いただす。
「どうしたんだ?」
「いえ……なんでもありません」
「そんな事は無いだろう!あんなに明るかった君がいつもいつも真っ赤な目で!一体どうしたと言うんだ!」
「気になさらないで下さい。私は今は奥様の侍女、ただの使用人なのです……」
「いや、君は妻の侍女ではあるがれっきとした男爵令嬢だ!男爵家からお預かりしている大切なお嬢さんが我が屋敷で憂う事があってはいけない!」
私がそう言うと今まで堪えていたのだろう、堰を切ったように私の胸にしがみつき声を上げて泣き始めたチュニック、私はそんなチュニックを抱き締めた。
暫くして落ち着いたのかチュニックはポツリと言った。
「………フレア様は私の事が嫌いなのでしょうか……」
「えっ?」
私がそう聞き返すとチュニックは慌てたように「なんでもありません!」
と言ってその場から走って行ってしまった。
………まさか、フレアがチュニックを…?
私はにわかには信じられなかった。
あんなに優しいフレアが友人であるチュニックに何かするなんて……いや、しかし……では何故チュニックはあんな事を……。
私は急いでフレアの元へ向かった。
「旦那様、急いでどうなさったのですか」
こんなに大人しい妻がそんな事をする筈は無いと思いながらもチュニックの事を聞くために口を開く。
「チュニックの事なんだが」
私がそう言うと妻は誰が見てもハッキリと分かる程肩をビクリと揺らした。
………この反応はなんなのだろう。
「チュ、チュニックさんが……どうなさったのですか……」
明らかに青ざめるフレアの顔……まさか!本当にフレアがチュニックを泣かせている原因なのか。信じた妻に裏切られたような気持ちがして私はそのまま妻に背を向け歩き出した。
あれ程怒りが込み上げたことは無かった。
コンコン
「入れ」
私がそう言うと扉を開けて入って来たのはチュニック。
「どうされたの?最近お部屋に籠られる事が多くなりましたわね」
「いや、なんでもない」
そう言って私は近付いて来た愛しい妻の頬を撫でる。
「あの頃フレアにどんな事をされていた?」
先程まで考えていた事が口から出た、ある程度の事は聞いたが辛いことをあまり詳しく聞くのは可哀想だったのであの頃は聞けなかったが今ならば、そんな気持ちで出てきた言葉。
しかしこの言葉に妻の顔は一瞬で無表情になった。
「どうして今更そんな事を?」
しかしながら見間違えだったのだろうか、そう聞いてきた妻は既にいつもの笑顔で……。
やっと元妻から受けた傷が癒えて笑えるようになったチュニック。
わざわざこの笑顔を曇らせるようなことをする必要も無いかとそれ以上聞くことは無かった。
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