元妻からの手紙

きんのたまご

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元妻

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二日続けて届く手紙に嫌でもあの性悪な元妻の事を考えてしまう。


元妻はボトムス伯爵家の次女であった。
我がカーディガン伯爵家とも取り引きのある家で私達は顔見知り以上の知り合いだった。
ボトムス伯爵家の美人な姉妹と言えば社交界でも有名で長女のタイトは華やかな美女で次女で私の元妻だったフレアは儚げな美少女といった様相だった。
その見た目通りフレアは優しい少女だった。
たまに行くボトムス伯爵家で見かける時には、いつも優しく微笑んでいるのが印象的だった。
その姿はまるで妖精のように今にも消えてしまいそうな程儚げで……フレアとの婚約が決まった時には私が一生護ってやろうと思ったものだ。

結婚してから暫くは穏やかな幸せな日々だった。優しく穏やかで美しい妻は当然のように使用人達にも優しく、屋敷で働く使用人達も妻の事をすぐに好きになり代々屋敷に仕えていた使用人達からも「こんなに良い奥様をお迎えになられた旦那様には感謝してもしたりません」とまで言われていた。
それなのに………!
今思えばあれは私と結婚したいが為にあの悪女が聖女のような優しい女を演じていただけだったのだ。


執務室で一人考え込んでいたところにノックの音。
「誰だ」
「私よ」
そう言って入って来たのはチュニックだった。
「どうされたの?こんなに暗くなったのに明かりも付けずに」
そう言ってチュニックは部屋のランプに火を灯す。
明かりに照らされるいつもの美しい笑顔。
「君はずっと美しいな」
私がそう言うとチュニックは満足そうに微笑んだ。
そうチュニックは妻の侍女として妻の後ろに立っていた時でさえいつも美しかった。

思えば妻の美しさが掠かすみ始めたのはチュニックを元妻の侍女へと雇い入れてからだった。
いつも美しいチュニックに比べフレアは化粧っ気も無く髪もほぼほぼ弄らずにいつも同じ引っ詰めたような髪型。
自身に華がないのであれば宝石でも付ければいいものを全くそんな事もせず着飾る事さえしなかった。
………ドレスもいつも同じような色の…古い型で地味な色の………。
結婚する前は……いや、チュニックが屋敷に来るまではフレアは淡い色のドレスを好んで身に付けていたはず……………独身の頃からのドレスも持って来ていた…。

何故あんなにも着飾らなくなったのか…………。


その時、立て続けに送られて来た二通の手紙の内容が頭を過ぎる。

「貴方の記憶の中の私はいつもどんな顔をしていましたか」

「記憶の中の私はいつもどんな格好をしていましたか」


あの手紙には……何か意図があるのだろうか……。
ふっと浮かんだそんな考えを振り払うように私は頭を振った。
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