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侯爵夫人とのお茶会を終え、早いもので一ヶ月が経とうとしていた。
実はその間に約束の一年も過ぎまだ私達は偽夫婦を続けていた。
次の更新はまた一年後になるだろう、もしかしたらそれまでにフランツが独り立ち出来るのかもしれないなんて事も思っていたりもする。
何故なら最近のフランツは私の目から見てもとてつもなく頑張っているように見えるから。
でもそれとは別で困っていることもある、それは以前にも増してフランツが絡んで来る事だ。
以前にもあった花束から始まり、好きな食べ物は何か、好きな色は、好きな本は、趣味は、どんなドレス、どんな宝石、どんな紅茶、どんなお菓子と私の事を調べて報告書でも書こうと思っているのかと思う程ありとあらゆる事を聞かれ好きだと言ったものをプレゼントされる。
それと同時に少し時間があればあそこに行こうと誘われたり、一緒にお茶をしようと誘われる。今まではそれぞれの時間で生活していた食事の時間等も一緒に過ごすようになった、と言うよりはフランツが纏わリ付いて来るようになった。
別にフランツに今更悪い感情がある訳では無いが……好きな人の事はどうなったのだろうか。
私を調べる時間があるなら好きな人の事を考えればいいと思うし、私を誘う暇があるなら好きな人の姿を見に行けばいいと思う。

とある日、今日はまたフランツにお茶に誘われたのでテーブルを挟み向かいあっている。
何故か嬉しそうにニコニコとしているフランツを見るとこんなに懐かれているのは雛が最初に見た人を親と思う気持ちに似ているのかもしれないと思う。
まともな教育をされず今まで近しい女の子もいなかったフランツの前に現れた嫁である私……フランツからすれば初めての身内以外の近しい女であり師匠のような存在、そんな相手に依存してしまうような気持ちも分からないでは無いが、このままでは良く無いだろう。
「フランツ…以前言っていた好きな人とはその後どうなの?」
「……どうしてそんな事を?」
「いえ、私も人の恋愛事に首を突っ込む気はないけれど貴方と私は一応夫婦ではあるのだし心配はしているのよ。好きな人がいると言っている割にその人に会いに行っている様子もないし、どうなっているのかと思って。私に構っている場合ではないわよ、本当のこの家の嫁になる方になるかもしれないのだし大切にしなければ」
「あーーそう………なんだが……その好きな人は………アマンダ!君の事なんだ!」
思いもよらなかったその告白に一瞬冗談かと思ったが………目の前で顔を真っ赤にするフランツを見るとどうやらこの告白は本当の事らしい。

えー?どうすればいいのかしら。
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