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今日は久しぶりに侯爵夫人と会うことになっていた。
侯爵夫人とは実はあの初夜の次の日以降一度も会ってはいなかった。
私は私の好きにさせていてくれれば勿論文句なども無く用事も無い。
流石にあの日突きつけられた内容で現実を知り私に何も言って来なくなった侯爵夫人をわざわざ虐めるような気もないしそんな事をする時間も勿体ない。
お互いに気に入らなければ近づかなければ良い、それだけの事だ。
そうして今日までは穏やかに過ごして来たのだが……先日手紙が届いた。
と、言っても同じ屋敷で生活しているから使用人を通じて手紙が届かられたのだが、それは私とお茶をしたいという云わばお茶会の招待状であった。
怪訝に思いはしたもののこちらは別に特別侯爵夫人に恨みがある訳でも、ましてや顔を見るのも嫌な程嫌っていると言うことがある訳でも無いので……まあ向こうがどう思っているかは知らないが…。まあ兎に角そんなこんなで断る理由も見つからずこうしてお茶会に招待される事になった。
「今日はこうしてお茶の誘いに応じてくれて…ありがとう」
そうして私は侯爵夫人に勧められて茶会の席に着く。
「いいえ、この度はご招待ありがとうございます」
なんとも奇妙でぎこちない茶会が始まった。
暫くは無言でお茶を啜る音だけが聞こえる……まぁしょうがないか、別に恨んではいないが和やかにお茶をするような間柄では絶対に無い、かと言ってこのまま無言でお茶を啜っていてもしょうがない、時間も無駄だし何よりなんの生産性も無い。
「今日はどうされたのですか?」
一先ず軽ーく探りを入れてみる。
嫁いだ先の家でこんな腹の探り合いの様な事をしなければならないのは少々虚しくも有り、煩わしくも有るが、元々が普通の結婚では無いのだからそれも受け入れざるを得ないのだろう。
「…特に用事があった訳では無いのだけれど………っ……」
そこまで言うと侯爵夫人は黙ってしまったが…何やら言いたい事があるらしいと言うことだけは分かった。
それから私は侯爵夫人から話し出すのを根気よく待った。
相手がフランツなら言いたい事があるならさっさと言って欲しいと言ってしまうところだが、そこはやはり婚家のお義母様でもあるので言わない事にする。
すると思いもかけない言葉が侯爵夫人の口から発せられた。
「あの時は………いえ、婚約が決まってから今まで……本当にごめんなさい」
そうして侯爵夫人は私に向かって頭を下げた。
………目の前にいるこの方は本当にあの侯爵夫人と同一人物なのだろうか。
侯爵夫人とは実はあの初夜の次の日以降一度も会ってはいなかった。
私は私の好きにさせていてくれれば勿論文句なども無く用事も無い。
流石にあの日突きつけられた内容で現実を知り私に何も言って来なくなった侯爵夫人をわざわざ虐めるような気もないしそんな事をする時間も勿体ない。
お互いに気に入らなければ近づかなければ良い、それだけの事だ。
そうして今日までは穏やかに過ごして来たのだが……先日手紙が届いた。
と、言っても同じ屋敷で生活しているから使用人を通じて手紙が届かられたのだが、それは私とお茶をしたいという云わばお茶会の招待状であった。
怪訝に思いはしたもののこちらは別に特別侯爵夫人に恨みがある訳でも、ましてや顔を見るのも嫌な程嫌っていると言うことがある訳でも無いので……まあ向こうがどう思っているかは知らないが…。まあ兎に角そんなこんなで断る理由も見つからずこうしてお茶会に招待される事になった。
「今日はこうしてお茶の誘いに応じてくれて…ありがとう」
そうして私は侯爵夫人に勧められて茶会の席に着く。
「いいえ、この度はご招待ありがとうございます」
なんとも奇妙でぎこちない茶会が始まった。
暫くは無言でお茶を啜る音だけが聞こえる……まぁしょうがないか、別に恨んではいないが和やかにお茶をするような間柄では絶対に無い、かと言ってこのまま無言でお茶を啜っていてもしょうがない、時間も無駄だし何よりなんの生産性も無い。
「今日はどうされたのですか?」
一先ず軽ーく探りを入れてみる。
嫁いだ先の家でこんな腹の探り合いの様な事をしなければならないのは少々虚しくも有り、煩わしくも有るが、元々が普通の結婚では無いのだからそれも受け入れざるを得ないのだろう。
「…特に用事があった訳では無いのだけれど………っ……」
そこまで言うと侯爵夫人は黙ってしまったが…何やら言いたい事があるらしいと言うことだけは分かった。
それから私は侯爵夫人から話し出すのを根気よく待った。
相手がフランツなら言いたい事があるならさっさと言って欲しいと言ってしまうところだが、そこはやはり婚家のお義母様でもあるので言わない事にする。
すると思いもかけない言葉が侯爵夫人の口から発せられた。
「あの時は………いえ、婚約が決まってから今まで……本当にごめんなさい」
そうして侯爵夫人は私に向かって頭を下げた。
………目の前にいるこの方は本当にあの侯爵夫人と同一人物なのだろうか。
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