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私の誕生パーティーから早いものでもう2ヶ月がたった。
あの日のあの胸のモヤモヤは多分初めて出来た友達を取られるかもしれない寂しさだったのだろう。
しかし相手は皇太子殿下。私のようにいつまでもお一人様でいるわけにはいかないだろう。王妃様からも
「あの子好きな子がいるようなの。ミリア、誰か心当たりは無い?」
と聞かれた。
勝手に話す訳にもいかず あの日のご令嬢の事は言っていないが早く王妃様に紹介すれば良いのに。 ついでに私にも紹介して欲しい。
……友達なんだから。
むぅー。なんかモヤモヤするな。
こんな時は気分転換だ!
私はかつての引きこもりルックに着替え街へと繰り出した。
やっぱりこの格好は落ち着く。

こうして街へと出るのは久しぶりだ。私は色んな店を見てまわる。
「やっぱりこの格好は楽!」
誰に見られることもなく気楽なものだ。
「う~ん。買い食いしちゃおっかな?」
流石にご令嬢に転生?してから買い食いなんてしたことはないのでドキドキするがさっきから良い臭いがたくさんで……もう我慢出来ない! 
近くにあるソーセージの店を目指す!
大きな釜で沢山のソーセージが茹でられていてもう良い匂い過ぎる!
大きなソーセージを一本貰う、あぁこの艶!今にもはち切れんばかりのぷりぷり感!
……じゅるり。はっ!いけない!ヨダレが!
でわ。いただきまーす。
プチッ!じゅわぁ。肉汁~!うま~い。はぁ、幸せ~!
私は口いっぱいに幸せの味を頬張った。

ちょっと休憩。広場の噴水のへりに腰掛ける。
ぼーっと行き交う人々を眺める。お昼だけど良い感じにほろ酔いのおじさん、手を繋いで買い物している母娘、屋台の元気なおばさん。あぁこれが平和なんだなって思う。

「皇太子様どうやらお好きな方がおられるらしいよ」
「へぇ、じゃあもうすぐご結婚かねぇ。めでたいねぇ」
どこからともなく噂話が聞こえる。
うぅ、気分転換に出て来たのにまたこの話。しかしこんなに皆が知ってること言うことは関係が大分進んでいると言うことだろう。殿下の周りにそんな感じのご令嬢見たことなかったケド……。私に内緒で愛を育んでいたのか。しかし何で私は気付かない?鈍いのか?……いや!王妃様も知らない感じだったし殿下が隠すのが上手なんだろう。そうだ、そう思おう!
……今度会ったらちょっと聞いてみようかな?友達だしいいかな?それとも殿下のお相手だしギリギリまで隠しておくのかな?嫉妬とかされそうだしな。私にまで色々言って来た人がいたぐらいだしな。いいな大事にしてるんだな。
私もそんな風に思ってくれる人が欲しい!
「よしっ!」
こうなれば私も頑張ってお相手を探そう!もう、お父様の事は無視だ!
私は決意も新たに屋敷へと帰るのだった。
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