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「王妃、私はまだ結婚する気なんてありませんよ。」
殿下は苦笑まじりにそう言った。
「貴方、そうは言うけどそろそろ婚約者ぐらいは決めなさい。毎日のように候補者の上申書が届くでしょう?良い条件の方は沢山いるはずよ。」
「それですよ、私は条件などで相手を決めたくは無いんです。恋愛結婚とまでは言わなくても、せめて尊敬しあえる相手と結婚したいと思っています。」
殿下は強い眼差しでそう言った。
「殿下のお妃になられる方は幸せですわね」
私は気付くとそう言っていた。
多分これは私の本音だった。前世の男運の悪さから恋愛なんてもう無理だ!と今や思っている私もかつては好きな人がいたりもしてそんな想い想われ幸せな恋愛をしたい
 と憧れていた。まぁ叶わなかったケド。
「ミリア孃は婚約者などはおられないのですか?大体の貴族の婚約などは王家が把握しておりますが、マクシミリアン家はそういった話は出ていないようですが」

「ええ、わたくしは結婚などは考えておりませんわ。家の事を考えましたら婿養子を取るのが一番なのでしょうが、見た目もこの通り地味でございますし。誰からも見初められることも無いと思いますので。その代わりといってはなんですが一人でも生きて行けるようこうして職を持ちましたの、これでマクシミリアン家に養子を貰ってわたくしが邪魔になったとしまして、家を出される事になっても大丈夫ですわ!」
私は胸を張って答える。
「…ふっ…くっくっくっ」
「何でしょうか…」
突然笑いだした殿下に少しはムッとしてたずねる。
「いえ、失礼しました。あまりな内容をあまりにも堂々とおっしゃられるもので。少々驚いてしまいました…ふっ」
「……」
「でもマクシミリアン様でしたらミリア孃を追い出すなんて心配はいらないと思いますけどね。そんな事をおっしゃられるとお父上が悲しまれますよ」
「そうですわね。こんな娘でも父も母もとても大事にしてくれていることは分かっています」

私はお父様とお母様を想い思わず微笑んでいた。その場の空気が柔らかくなったような気がした。

「ミリア孃は素敵なお嬢さんね」
王妃様にそう言われ私は嬉しいような恥ずかしいような。
「是非、うちの息子のお友達になって頂戴!」
ん?????
聞き間違いか?お友達?
向かいの殿下の顔も思わぬ発言にポカンとしているようだ。あぁ、王子様もこんな顔するんだなぁ。    
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