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あんなに王子に嫌われたいと意気込んだのに何も出来なかった自分が悔しかった。
あの場で笑顔のひとつでも返せていたら…「やはりつまらない」なんて言われることも無かったのかもしれないが。
あの王子の顔を想像しながら笑顔を作ろうとすると表情が凍りつき頬が引き攣るのを感じた。
多分…私はもう王子の前では笑えない……。




「ロゼ様お綺麗になられましたねぇ」
ロゼが帰った後の城。私に付く側近はそう言った。
「そうか?」
「ええ!そうですよ。装いが変わられたからか今までの可愛い雰囲気からお綺麗になられて」
「ふぅん」
「王子だけですよ、ロゼ様に無関心なのは。ご自分で選ばれた婚約者様なのに…どうされたんですか?」
「私は良い婚約者だろう?興味も関心も無いつまらない婚約者に優しくしてやっているのだから 」
「………王子…何故ロゼ様を選ばれたのですか?」
「理由なら以前も言ったはずだが?」
「大人しそうという理由ですか?」
「ああ、そうだ」
「こう言ってはなんですが…このままではロゼ様がお可哀想ですよ」
私は生意気な口をきく側近をじろりと睨む。
まあ、こんな事をしてもこいつには効きはしないが…。
「えらくロゼの肩を持つな…」
「ロゼ様は良い方ですよ。どんな身分の人にも穏やかでお優しくて…いつでも微笑みながらお礼を言って下さいますし」
微笑みながら…か。想像出来ないなアイツが微笑んでいる所など…。
「アイツは私の前ではニコリともしない…どうせアイツも権力に目が眩んだクチだろ」
「そんな事……」
「あー!もういい!アイツの話をしていたら不愉快だ」
側近を下がらせてベッドに横になる。
目を閉じるとロクに話もせず無表情でこちらを見下すように見ているつまらない婚約者の顔が浮かぶ。
「チッ!」
勢い良く起き上がる。
「ふん!まあいい。私の邪魔をせず今のまま大人しくしているのならばお前の欲している王妃の座はくれてやるさ!お飾りだがな、一生私の隣でそのお綺麗な顔を見世物にしていてくれればいいさ。お前にはその位しか出来る事が無いのだからな」
私は窓から婚約者の屋敷がある方を見て笑った。権力を欲していると誤解している自らの婚約者が婚約破棄を望んで頑張っていることも知らず…。





あの屈辱のお茶会から1ヶ月。
あれからも王妃教育で度々登城したが王子に会うことは1度も無かった。
私が王子のあの話を偶然聞いてしまってからはこの位会わないのは珍しくもない。
会わない間にも出来る事をしておかないといけない。
王子に婚約破棄をされた後私はこのまま家にいることは無理だろう。
どんな理由であれ婚約破棄されたご令嬢にその後の行き場など無い。そんな事は分かっているがそれを分かった上であの王子とは無理だと思ったのだ。
かと言ってあんな男の為に私が不幸になるのも絶対にごめんだ。
婚約破棄した後の身の振り方を考えておかないと。
私に何が出来るだろうか…。これから生き抜いて行くためにもまだまだやらないといけない事は沢山あるなと思い知らされた。
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