5 / 37
5
しおりを挟む
あんなに王子に嫌われたいと意気込んだのに何も出来なかった自分が悔しかった。
あの場で笑顔のひとつでも返せていたら…「やはりつまらない」なんて言われることも無かったのかもしれないが。
あの王子の顔を想像しながら笑顔を作ろうとすると表情が凍りつき頬が引き攣るのを感じた。
多分…私はもう王子の前では笑えない……。
「ロゼ様お綺麗になられましたねぇ」
ロゼが帰った後の城。私に付く側近はそう言った。
「そうか?」
「ええ!そうですよ。装いが変わられたからか今までの可愛い雰囲気からお綺麗になられて」
「ふぅん」
「王子だけですよ、ロゼ様に無関心なのは。ご自分で選ばれた婚約者様なのに…どうされたんですか?」
「私は良い婚約者だろう?興味も関心も無いつまらない婚約者に優しくしてやっているのだから 」
「………王子…何故ロゼ様を選ばれたのですか?」
「理由なら以前も言ったはずだが?」
「大人しそうという理由ですか?」
「ああ、そうだ」
「こう言ってはなんですが…このままではロゼ様がお可哀想ですよ」
私は生意気な口をきく側近をじろりと睨む。
まあ、こんな事をしてもこいつには効きはしないが…。
「えらくロゼの肩を持つな…」
「ロゼ様は良い方ですよ。どんな身分の人にも穏やかでお優しくて…いつでも微笑みながらお礼を言って下さいますし」
微笑みながら…か。想像出来ないなアイツが微笑んでいる所など…。
「アイツは私の前ではニコリともしない…どうせアイツも権力に目が眩んだクチだろ」
「そんな事……」
「あー!もういい!アイツの話をしていたら不愉快だ」
側近を下がらせてベッドに横になる。
目を閉じるとロクに話もせず無表情でこちらを見下すように見ているつまらない婚約者の顔が浮かぶ。
「チッ!」
勢い良く起き上がる。
「ふん!まあいい。私の邪魔をせず今のまま大人しくしているのならばお前の欲している王妃の座はくれてやるさ!お飾りだがな、一生私の隣でそのお綺麗な顔を見世物にしていてくれればいいさ。お前にはその位しか出来る事が無いのだからな」
私は窓から婚約者の屋敷がある方を見て笑った。権力を欲していると誤解している自らの婚約者が婚約破棄を望んで頑張っていることも知らず…。
あの屈辱のお茶会から1ヶ月。
あれからも王妃教育で度々登城したが王子に会うことは1度も無かった。
私が王子のあの話を偶然聞いてしまってからはこの位会わないのは珍しくもない。
会わない間にも出来る事をしておかないといけない。
王子に婚約破棄をされた後私はこのまま家にいることは無理だろう。
どんな理由であれ婚約破棄されたご令嬢にその後の行き場など無い。そんな事は分かっているがそれを分かった上であの王子とは無理だと思ったのだ。
かと言ってあんな男の為に私が不幸になるのも絶対にごめんだ。
婚約破棄した後の身の振り方を考えておかないと。
私に何が出来るだろうか…。これから生き抜いて行くためにもまだまだやらないといけない事は沢山あるなと思い知らされた。
あの場で笑顔のひとつでも返せていたら…「やはりつまらない」なんて言われることも無かったのかもしれないが。
あの王子の顔を想像しながら笑顔を作ろうとすると表情が凍りつき頬が引き攣るのを感じた。
多分…私はもう王子の前では笑えない……。
「ロゼ様お綺麗になられましたねぇ」
ロゼが帰った後の城。私に付く側近はそう言った。
「そうか?」
「ええ!そうですよ。装いが変わられたからか今までの可愛い雰囲気からお綺麗になられて」
「ふぅん」
「王子だけですよ、ロゼ様に無関心なのは。ご自分で選ばれた婚約者様なのに…どうされたんですか?」
「私は良い婚約者だろう?興味も関心も無いつまらない婚約者に優しくしてやっているのだから 」
「………王子…何故ロゼ様を選ばれたのですか?」
「理由なら以前も言ったはずだが?」
「大人しそうという理由ですか?」
「ああ、そうだ」
「こう言ってはなんですが…このままではロゼ様がお可哀想ですよ」
私は生意気な口をきく側近をじろりと睨む。
まあ、こんな事をしてもこいつには効きはしないが…。
「えらくロゼの肩を持つな…」
「ロゼ様は良い方ですよ。どんな身分の人にも穏やかでお優しくて…いつでも微笑みながらお礼を言って下さいますし」
微笑みながら…か。想像出来ないなアイツが微笑んでいる所など…。
「アイツは私の前ではニコリともしない…どうせアイツも権力に目が眩んだクチだろ」
「そんな事……」
「あー!もういい!アイツの話をしていたら不愉快だ」
側近を下がらせてベッドに横になる。
目を閉じるとロクに話もせず無表情でこちらを見下すように見ているつまらない婚約者の顔が浮かぶ。
「チッ!」
勢い良く起き上がる。
「ふん!まあいい。私の邪魔をせず今のまま大人しくしているのならばお前の欲している王妃の座はくれてやるさ!お飾りだがな、一生私の隣でそのお綺麗な顔を見世物にしていてくれればいいさ。お前にはその位しか出来る事が無いのだからな」
私は窓から婚約者の屋敷がある方を見て笑った。権力を欲していると誤解している自らの婚約者が婚約破棄を望んで頑張っていることも知らず…。
あの屈辱のお茶会から1ヶ月。
あれからも王妃教育で度々登城したが王子に会うことは1度も無かった。
私が王子のあの話を偶然聞いてしまってからはこの位会わないのは珍しくもない。
会わない間にも出来る事をしておかないといけない。
王子に婚約破棄をされた後私はこのまま家にいることは無理だろう。
どんな理由であれ婚約破棄されたご令嬢にその後の行き場など無い。そんな事は分かっているがそれを分かった上であの王子とは無理だと思ったのだ。
かと言ってあんな男の為に私が不幸になるのも絶対にごめんだ。
婚約破棄した後の身の振り方を考えておかないと。
私に何が出来るだろうか…。これから生き抜いて行くためにもまだまだやらないといけない事は沢山あるなと思い知らされた。
31
お気に入りに追加
4,529
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
下げ渡された婚約者
相生紗季
ファンタジー
マグナリード王家第三王子のアルフレッドは、優秀な兄と姉のおかげで、政務に干渉することなく気ままに過ごしていた。
しかしある日、第一王子である兄が言った。
「ルイーザとの婚約を破棄する」
愛する人を見つけた兄は、政治のために決められた許嫁との婚約を破棄したいらしい。
「あのルイーザが受け入れたのか?」
「代わりの婿を用意するならという条件付きで」
「代わり?」
「お前だ、アルフレッド!」
おさがりの婚約者なんて聞いてない!
しかもルイーザは誰もが畏れる冷酷な侯爵令嬢。
アルフレッドが怯えながらもルイーザのもとへと訪ねると、彼女は氷のような瞳から――涙をこぼした。
「あいつは、僕たちのことなんかどうでもいいんだ」
「ふたりで見返そう――あいつから王位を奪うんだ」
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる