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コロン様の様子がおかしくなってきたのは婚約してから暫く経ってから。
最初のうちは、本当に毎日と言う程私に会いに我が家に来ていたコロン様だったが、次第にその頻度は下がって行った。
頻繁に共にしていた夜会にも忙しいから出席しないと断られる事が続き、私もコロン様が行かないのならばと出席を控えていたのだが、どうしても行かなければならない懇意にしている家での夜会に一人で出席した。そこの家の娘とは友人だから事情を説明したら断れるかと思っていたのだが、何故か今回は絶対に出席して欲しいと熱心に誘われた……何かあるのだろうか。
「ローゼ!久しぶり!」
夜会会場で一人佇む私に声を掛けてきたのはこの夜会の主催者である侯爵家の娘であり、私の友人であるベルガモットだった。
「本当に!久しぶりね」
そうして私達は久しぶりの再会を手を取り合って喜んだ。
コロン様のいない夜会に少し不安を感じてもいたがやっぱり出席して良かったと思う。
「ローゼ、貴女最近全然夜会にもお茶会にも出席しないのだから。どうしているのか心配していたのよ!」
「そうだったの、ごめんなさいね。コロン様が一人で出席するようなお茶会には心配だから行かないで欲しいと仰られて…夜会も自分と一緒に行くもの以外は断って欲しいと……その、美しく着飾った私を他の男に見られたくないからって!もう!こんな恥ずかしい事言わせないでよ!」
私が浮かれながらそう言うとその場の雰囲気が一気に氷点下に下がったのかと思う程空気が冷たくなった。
「そう……あの婚約者がね………」
「……ベルガモット……どうしたの?」
「ローゼ……悪いことは言わないわ!あの婚約者はやめておきなさい」
「えっ?……どうしたの、ベルガモット……。貴女だって婚約が決まった時はあんなに喜んでくれたのに」
「…………………………」
ベルガモットは苦虫を噛み潰したような顔をして俯いたまま口を閉ざしてしまった。
「ベルガモット………。確かに私はコロン様の事が好きだし、友人であるベルガモットにそんな事を言われて悲しいわ……でも私はベルガモットも大好きなの、だからなんの理由も無くベルガモットがそんな事言うとは思っていないわ」
私がそう言うとベルガモットは意を決したように顔を上げた。
「本当は…貴女が何も知らず傷つかずに終わってくれたらって思っていたのだけれど………こっちに来て」
そう言ってベルガモットは私の手を引いて会場の隅へと移動した。
柱の影に隠れるようにして「あそこを見て」とベルガモットに言われるままそちらを見るとそこには他の招待客と楽しそうに話をするコロン様の姿。
もしかして私が一人で出席した事を両親から聞き追いかけて来てくれたのにだろうかと嬉しくなりコロン様の側へ行こうと動き出そうとした私の手を掴みベルガモットは静かに首を振った。
「もう少し見てて」
早くコロン様の近くへ行きたいという気持ちもあったがベルガモットの唯ならぬ様子に私はそのまま暫くコロン様の様子を眺めていた、するとやがてコロン様の隣に現れる美しい女の人。
あれは確かコロン様の伯爵家と親しくしている子爵家の娘だったはず。
幼馴染のような関係だと一度偶然会った夜会で紹介して貰った。
するとその彼女は自然にコロン様の腕に自分の腕を絡めその身体をしなだれかけた。
その光景に私は呆然とするしか出来ない。
それでも幼馴染なんだからそんな事もあるのかもしれないと無理矢理納得させた…しかし次見た二人は連れ立って人気のないバルコニーへと移動するところだった。
ベルガモットが私の手を引きその後を追いかける。
そしてカーテンの後ろからこっそりと覗く私達が見たのは抱き合い口付けを交わす……まるで想いあった婚約者同士であるかのような二人の姿だった。
最初のうちは、本当に毎日と言う程私に会いに我が家に来ていたコロン様だったが、次第にその頻度は下がって行った。
頻繁に共にしていた夜会にも忙しいから出席しないと断られる事が続き、私もコロン様が行かないのならばと出席を控えていたのだが、どうしても行かなければならない懇意にしている家での夜会に一人で出席した。そこの家の娘とは友人だから事情を説明したら断れるかと思っていたのだが、何故か今回は絶対に出席して欲しいと熱心に誘われた……何かあるのだろうか。
「ローゼ!久しぶり!」
夜会会場で一人佇む私に声を掛けてきたのはこの夜会の主催者である侯爵家の娘であり、私の友人であるベルガモットだった。
「本当に!久しぶりね」
そうして私達は久しぶりの再会を手を取り合って喜んだ。
コロン様のいない夜会に少し不安を感じてもいたがやっぱり出席して良かったと思う。
「ローゼ、貴女最近全然夜会にもお茶会にも出席しないのだから。どうしているのか心配していたのよ!」
「そうだったの、ごめんなさいね。コロン様が一人で出席するようなお茶会には心配だから行かないで欲しいと仰られて…夜会も自分と一緒に行くもの以外は断って欲しいと……その、美しく着飾った私を他の男に見られたくないからって!もう!こんな恥ずかしい事言わせないでよ!」
私が浮かれながらそう言うとその場の雰囲気が一気に氷点下に下がったのかと思う程空気が冷たくなった。
「そう……あの婚約者がね………」
「……ベルガモット……どうしたの?」
「ローゼ……悪いことは言わないわ!あの婚約者はやめておきなさい」
「えっ?……どうしたの、ベルガモット……。貴女だって婚約が決まった時はあんなに喜んでくれたのに」
「…………………………」
ベルガモットは苦虫を噛み潰したような顔をして俯いたまま口を閉ざしてしまった。
「ベルガモット………。確かに私はコロン様の事が好きだし、友人であるベルガモットにそんな事を言われて悲しいわ……でも私はベルガモットも大好きなの、だからなんの理由も無くベルガモットがそんな事言うとは思っていないわ」
私がそう言うとベルガモットは意を決したように顔を上げた。
「本当は…貴女が何も知らず傷つかずに終わってくれたらって思っていたのだけれど………こっちに来て」
そう言ってベルガモットは私の手を引いて会場の隅へと移動した。
柱の影に隠れるようにして「あそこを見て」とベルガモットに言われるままそちらを見るとそこには他の招待客と楽しそうに話をするコロン様の姿。
もしかして私が一人で出席した事を両親から聞き追いかけて来てくれたのにだろうかと嬉しくなりコロン様の側へ行こうと動き出そうとした私の手を掴みベルガモットは静かに首を振った。
「もう少し見てて」
早くコロン様の近くへ行きたいという気持ちもあったがベルガモットの唯ならぬ様子に私はそのまま暫くコロン様の様子を眺めていた、するとやがてコロン様の隣に現れる美しい女の人。
あれは確かコロン様の伯爵家と親しくしている子爵家の娘だったはず。
幼馴染のような関係だと一度偶然会った夜会で紹介して貰った。
するとその彼女は自然にコロン様の腕に自分の腕を絡めその身体をしなだれかけた。
その光景に私は呆然とするしか出来ない。
それでも幼馴染なんだからそんな事もあるのかもしれないと無理矢理納得させた…しかし次見た二人は連れ立って人気のないバルコニーへと移動するところだった。
ベルガモットが私の手を引きその後を追いかける。
そしてカーテンの後ろからこっそりと覗く私達が見たのは抱き合い口付けを交わす……まるで想いあった婚約者同士であるかのような二人の姿だった。
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