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「お母様…」
私が逃亡生活を送る屋敷にまさかのお母様が現れた。
「…久しぶりですね…ところで貴女はどうして1人でここに?」
「……少し体調が優れなく、私だけこちらに療養に…」
「それが嘘な事は分かっています。嘘を付くという事は自分が堂々と人に言えない事をしていると自覚しているのですね」
何もかも見透かしたような目でお母様がこちらを見る。
なんでわかったのだろう…そう思っていると。
「何故わかったのかという顔をしていますね」
そこ言葉にギクッとする。するとお母様が立つ場所の後ろにある扉が開き人影が飛び出してくる。
「おかあさまぁ!」
「リアム!」
私に向かい走って飛びついて来るリアムを腕に抱き留める。
「貴女の夫である侯爵が我が家に来たのです、リアムを連れて。その時に全ての事を聞きました…なので次は貴女の番ですよ。何があって子供を置いて出て行くような無責任な事をしたのか……全てお話なさい」
お母様のその言葉に部屋の温度が一気に下がる 。



全て話し終えて私が入れたお茶をお母様が飲む。
「本当にあの男は貴女に何も言っていないのね」
「…どういう…」
「私の口からは言えません。真実を知りたいのであれば貴女が自身であの男と話をなさい」
「…ですが、こんなにご迷惑をお掛けしてしまってもう合わせる顔がありません。それに私はもう二度と旦那様にはお会いしないという思いでここに来たのです」
「駄目です。しっかりと話をしなさい」
「っ!お母様には私の気持ちなんて分からないからそんなの事が言えるのよ!夫から愛されない妻の気持ちなんて!」
「ええ、分からないわ。でも分かりたくも無いわ夫と向き合いもしないで逃げてばかりで悲劇のヒロインぶって嘆く事しかしない、そんな情けない娘の気持ちなど分かりたくも無い」
「!」
「何を甘えた事を言っているの?そもそも貴族同士の政略結婚なんてそんなものなのよ。この世の中にはそんな夫婦腐るほどいます。それでもこんなに情けない妻は貴女だけでしょう」
「……」
「元々夫から好きな人がいると言われていたのでしょう?それが分かっていて結婚した、違いますか?」
私はお母様のあまりの正論に首を振るしか出来なかった。
「貴女も辛かったのだと思います、ですが今1番辛い思いをしているのは一体誰ですか?貴女はもう母親なのですよ」
お母様のその言葉にはっとする。
私の隣で眠る息子…。
「っリアム…っ」
「貴方が泣いてどうするのです」
そう言って私の頬を撫でてくれたお母様の手が優しくて涙はなかなか止まらなかった。


「先程も言いましたが私からは詳しい事は言えません…分かりますね?」
「はい」
「ならば貴女が今何をするべきか…分かりますね?」
「はい」
「…リアムは置いていきます。ここの事はあの男には言っていません暫く2人で過ごしなさい」
「ありがとうございます」
「しっかりするのですよ。リアムを守れるのは貴女だけなのですから」
「はい!」
そうしてお母様は帰っていった。
そうだわ、逃げてばかりいられない。
旦那様の話を聞くのは怖いけれど…お母様が言った通り私は初めから夫には好きな人がいると分かっていて結婚したの。いい加減はっきりさせなければ。


「お母様、ありがとうございます」
背中を押してくれたお母様に感謝した。

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