初恋は実らない

Hiiho

文字の大きさ
上 下
6 / 56

崩れゆく平凡

しおりを挟む
榛に「虐めてやる宣言」されてからも、校内の至る所でヤツを探している俺。
だけど、決して、トゥンクするために探しているのではない。ヤツの姿が見えたら、絶対に見つからないよう、もし見つかっても即座に逃げれるように、だ。

しかし、部活ではそういうわけにも行かない。
とりあえず、今のところは避けに避けまくって危険を回避している状態。
幸い、学年も違うし、二人きりになる状況が無いのが救いだ。

「今日は1年チームと2年チームでミニゲームやってもらうからなー。各学年のスタメンは前に出ろー」

キャプテンの合図で、それぞれのメンバーがコートに並ぶ。

俺の向かいに榛が並んでいて、一瞬目が合うが、俺は光速で目を逸らす。

あっぶねぇ!目が合ったら死んじゃうとこだったろうが!なんでこっち見んだよ、こえーよ!

ピーーーー!

ホイッスルと共にゲームが始まり、2年が得点をリードする試合運びになっていた。

バシッ

俺はゴール下でパスを受け、シュートしようと振り返ったその時、背後から榛がディフェンスしているのが目に入る。

くっそ、邪魔なんだよでけーのが!見てろよ、先輩の意地見せてやっから・・・

「あんなあからさまに避けられたら傷つくんだけど」

え?

間近に榛のさみしそうな顔があって、ぎょっとする。
その一瞬をつかれ、ボールを奪われてしまった。

「なにやってんだよ、あき!ボサっとすんな!」

チームメイトの怒号が飛ぶ。
その後の俺は、榛の寂しそうな声と顔が頭から離れず、ゲームに集中できなかった。


ピーーーー!
「ハイ、おつかれー、2年チームの勝ちー。次、控えチーム整列ー!」

「あき、途中からどーしたんだよ、動き悪かったぞ?」
「ごめん、なんかぼーっとしちゃってさ。寝不足かな」
「お前、ちゃんと寝ろよ~!寝る子は育つんだぞ?だからお前の成長止まってんだよ」

チームメイトで同じクラスの松田が、そういって両手で俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてからかう。

松田にぐっちゃぐちゃにされた髪を直していると、ばちっ、と榛と目が合った。

なんで、こっち見てんだよ!

すぐに目を逸らしたが、まだ榛の視線を感じ、おそるおそる榛の方を向く。

え?なんでそんな悲しそうな顔すんだよ・・・

明らかにしょぼんとしている。榛は、寂しそうに今度は自分から目を逸らし、膝の間に頭を項垂れて壁際に座った。

え、なんなの・・・?俺が悪いみてぇじゃん。

いや、そもそも、ガキの頃虐めてた俺が悪いのか?
傷ついた、って言ってたよな、あいつ。
俺、昔の事、ちゃんと謝ってないじゃん・・・

よし!

「榛」
「なんすか・・・」

項垂れる榛の頭上から声をかける。

「あのさ、今日、部活終わったらなんか食ってかねぇ?」

さっきまで寂しそうだった榛が、バッと顔を上げ、ニッコニコになる。

「行きます!」

きゅん・・・
いやいやいやいや、きゅん・・・じゃねえよ!
おさまれ心臓!

榛も、もしかしたらやりすぎたって思ってるかもしれないしな。
よし、ラーメンでも食って仲直りしよう!



その時の俺は、知らなかった。
あのニッコニコの裏側に潜んでいるものがあったことを。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

そんなお前が好きだった

chatetlune
BL
後生大事にしまい込んでいた10年物の腐った初恋の蓋がまさか開くなんて―。高校時代一学年下の大らかな井原渉に懐かれていた和田響。井原は卒業式の後、音大に進んだ響に、卒業したら、この大銀杏の樹の下で逢おうと勝手に約束させたが、響は結局行かなかった。言葉にしたことはないが思いは互いに同じだったのだと思う。だが未来のない道に井原を巻き込みたくはなかった。時を経て10年後の秋、郷里に戻った響は、高校の恩師に頼み込まれてピアノを教える傍ら急遽母校で非常勤講師となるが、明くる4月、アメリカに留学していたはずの井原が物理教師として現れ、響は動揺する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

処理中です...