上 下
179 / 210

本命くんと愛人さん 3

しおりを挟む
 仕事が終わり、急いで退勤登録をして会社を出る。

 今日は青が帰ってきたら、出張の事言わなきゃなんねーし、夕飯、あいつの好きな和食にしとかねーと!
 えーと、冷蔵庫に何あったけ?豚肉とあとは・・・

「りょーおたっ」

 背後から聞こえるこの声は・・・
 少し遅れてビルから出てきた雄大さんが軽い足取りで追い付いて来る。

「同じとこ帰るんだから置いてくなよ。まじツンばっかいらないんだけど。デレもくれよ」

「雄大さんと一緒にいると ろくな事なんないんで、極力避けようかと・・・」

「おまっ、今のかなり傷付いたぞ、俺。出張だってせっかく2人だと思ってたのに、店舗組と一緒だなんてな~」

 並んで歩きながら雄大さんはガックリと肩を落とした。

「まあ、什器設置もあるから2人じゃキツいし、しょうがないけどな」

 ほんっと雄大さんと2人じゃなくてよかった。

 マンションのエレベーターに乗って、8階のボタンを押す。

「そういえば雄大さん、高いトコ苦手なんですよね?よくあの部屋に住むことにしましたね」

 前にうちに来た時にビビってなかったっけ?

「これも愛の力ってやつなんだなーって実感しながら、窓には近付かないようにしてるよ」

「はあ・・・そっすか・・・」

 聞かなきゃよかった。

「じゃあ、お疲れ様でした」

「青くんに」

 部屋に入ろうとドアノブに手をかけたオレは、雄大さんの口から出た青の名前に振り返る。

「青になんですか?」

「報告するんだろ?一緒に出張行くこと」

「はい」

 言わなきゃぶっ殺されちゃうんで。

「・・・そ。楽しみにしてる。じゃあお疲れ」

 ひらひらと手を振って隣の部屋に入っていく雄大さん。

 何を楽しみにしてるんだ?雄大さんて、とことん何考えてるかわかんねぇ。





「涼太、なんかあった?」

 テーブルに並んだ料理を見た青が、オレの顔を横から覗き込んでくる。

「え?なんで?」

「豚大根とうどん入りの茶碗蒸し・・・俺が好きなメニューの時は、お前の機嫌が良いか、俺の機嫌取りたいかだろ」

 ・・・読まれている。

「とりあえず食おーぜ!」

 オレを訝しげに見ながら、テーブルを挟んで座った青が食べ始める。

「うまいよ、大根めっちゃ味染みてるし。・・・で、どうした?佐々木になんかされた?」

「圧力鍋のポテンシャル舐めんなよ。・・・いや、されてない。えと、明後日から3泊4日で出張行ってくる」

 箸を持つ青の手がピタッと止まって、良からぬ想像をしているのが伝わってくる。

「青が予想してる通り雄大さんと一緒。けど!店舗から来るスタッフが2人いるから、4人で行くし心配すんな」

「・・・そっか。まあ、ふたりきりじゃねぇなら」

 ホッ。よかった。青を怒らせたくも悲しませたくもないし・・・

「つって、俺がそれだけ言って終わるわけねーの、わかってるよな?」

「え?まだなんかあんの・・・?」

 説教・・・とか?

「今日は俺が先風呂入るから。お前は後でちゃーんと、中キレイにしてから上がってこいよ?」

「なか?湯船?言われなくてもちゃんと洗って来・・・」

「ケツん中だよ。明日もな」

「ケツ・・・え、って明日も!?平日に2日連チャンはちょっと・・・」

「嫌なら縛って犯しても・・・」

「わかったよ!」

 くっそぉ~!
 青がそれで納得するなら、やるけど・・・

 隣に聞こえないように気を付けねーと!
 それだけが心配だな・・・。



 なんて思ってみても、いざ始まると雄大さんの事なんかどうでもよくなって、青の事しか考えられなくなってしまう。

 幸い、2日間とも青のベッドで抱かれたため、オレの声は雄大さんに聞こえてないはず。・・・たぶんだけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたに誓いの言葉を

眠りん
BL
仁科一樹は同棲中の池本海斗からDVを受けている。 同時にストーカー被害にも遭っており、精神はボロボロの状態だった。 それでもなんとかやっていけたのは、夢の中では自由になれるからであった。 ある時から毎日明晰夢を見るようになった一樹は、夢の中で海斗と幸せな時を過ごす。 ある日、他人の夢の中を自由に行き来出来るというマサと出会い、一樹は海斗との約束を思い出す。 海斗からの暴力を全て受け入れようと決意してから狂いが生じて──。

義理パパと美少年のエッチ

リリーブルー
BL
さびしい少年が、義理パパにエッチなことをせがんでしまう。パパは社長さん!? ライバルは秘書!

ゴミ捨て場で男に拾われた話。

ぽんぽこ狸
BL
 逃げ出してしまった乎雪(こゆき)にはもう後が無かった。これで人生三回目の家出であり、ここにきて人生の分岐点とも思われる、苦境に立たされていた。    手持ちのお金はまったく無く、しかし、ひとところに留まっていると、いつの間にか追いかけてきた彼に出くわしてしまう。そのたびに、罵詈雑言を浴びせられるのが、心底いやで気力で足を動かす。  けれども、ついに限界がきてそばにあった電柱に寄りかかり、そのまま崩れ落ちて蹲った。乎雪は、すぐそこがゴミ捨て場であることにも気が付かずに膝を抱いて眠りについた。  目を覚まして、また歩き出そうと考えた時、一人の男性が乎雪を見て足を止める。  そんな彼が提案したのは、ペットにならないかという事。どう考えてもおかしな誘いだが、乎雪は、空腹に耐えかねて、ついていく決心をする。そして求められた行為とペットの生活。逃げようと考えるのにその時には既に手遅れで━━━?  受け 間中 乎雪(まなか こゆき)24歳 強気受け、一度信用した人間は、骨の髄まで、信頼するタイプ。  攻め 東 清司(あずま せいじ)27歳 溺愛攻め、一見優し気に見えるが、実は腹黒いタイプ。

少年売買契約

眠りん
BL
 殺人現場を目撃した事により、誘拐されて闇市場で売られてしまった少年。  闇オークションで買われた先で「お前は道具だ」と言われてから自我をなくし、道具なのだと自分に言い聞かせた。  性の道具となり、人としての尊厳を奪われた少年に救いの手を差し伸べるのは──。 表紙:右京 梓様 ※胸糞要素がありますがハッピーエンドです。

【完結】王弟殿下と赤痣の闘士

ゆらり
BL
――綺麗な手だ。触られると気持ちが良い。自分からも触ってみたい。  顔の半分を覆う赤い痣を持つリィは、ある日に裏路地で襲われていた端正な容貌を持つ青年を助けた。忌み嫌われてきた醜い異相を持つ自分に、手放しの好意を向けてくる彼に振り回されながらも、いつしか強く惹かれていく。  ――いつまでも自分だけを見て、好きだと言ってくれたらどんなに良いか……。  無邪気な年上青年と異相持ちで元虐められっ子な闘士の物語。  閲覧・お気に入り・エール有難うございます。18禁描写は※印付きです。主人公が虐め等を受ける描写があります。そういった題材が苦手な方には閲覧をお勧め致しません。

純粋な男子高校生はヤクザの組長に無理矢理恋人にされてから淫乱に変貌する

麟里(すずひ改め)
BL
《あらすじ》 ヤクザの喧嘩を運悪く目撃し目を付けられてしまった普通の高校生、葉村奏はそのまま連行されてしまう。 そこで待っていたのは組長の斧虎寿人。 奏が見た喧嘩は 、彼の恋人(男)が敵対する組の情報屋だったことが分かり本人を痛めつけてやっていたとの話だった。 恋人を失って心が傷付いていた寿人は奏を試してみるなどと言い出す。 女も未体験の奏は、寿人に抱かれて初めて自分の恋愛対象が男だと自覚する。 とはいっても、初めての相手はヤクザ。 あまり関わりたくないのだが、体の相性がとても良く、嫌だとも思わない…… 微妙な関係の中で奏は寿人との繋がりを保ち続ける。 ヤクザ×高校生の、歳の差BL 。 エロ多め。

イケメン教師陵辱調教

リリーブルー
BL
生徒に、校長に、調教師に、日夜犯されるイケメン教師。彼には人に言えない秘密があった。大人のBL 今後の更新予定 2024年9月14日〜年内は毎週更新❣️ 土曜夜21:10 連載8周年ありがとうございます✨ ・公開後も適宜推敲(増量)しています。 ★special thanks★ ◆ミヤセ様@3388se 表紙イラスト・挿絵(2021)◆ ◆枯無様 1頁漫画化(生徒編)(2021)◆ ◆さやいんげん様 現在プロの漫画家さんになられました! 1頁漫画化(2017/12/10)◆ ◆奏陽様 小坂先生のSS(2018)◆ とりあえずエ.....エロイです.....////ドMで気弱な小坂さん最高です!!!!プライドは高いのに身体はエロイとかやばいっす!!!!(コタツ様) /えむっけのイケメンってだけでも萌えるのに、妻子ある校長先生っていうキャラとあの話し方、 素晴らしいです!! (sethna様) /耽美/切ない/シリアス/官能/羞恥/スカトロ/ドS/年の差/教師受け/淫乱受け/SM/高校/学校/過去あり/溺愛/執着/総受け/R18/エロ/ML/ヤンデレ/禁断/輪姦/玩具/女装/言葉責め/生徒会/モブ攻め/モブレ/総受け/小スカ/大スカ/自慰/撮影/ 【登場人物】 小坂 愛出人(こさか おでと)高校教師 2年2組担任 27歳 神崎 総一郎(かんざき そういちろう)校長 麓戸 遥斗(ろくと はると)調教師 村田 悪照(むらた おてる)高2 2組 宮本 桜児(みやもと おうじ)高2 2組級長 水瀬 慈育(みなせ じいく)生徒会長 高3 伊東 不離(いとう ふり)風紀委員長 高3 池井 櫂(いけい かい)他校の先輩教師。研修会で小坂を世話。 池井 慶(いけい けい)麓戸の高校時代の後輩 ★フリー素材写真 一部挿絵・写真加工/リリーブルー (以前の表紙Cover photo by S. Hermann & F. Richter) エックス @lilymetroblue twitter.com/lilymetroblue 主人公総受け。生徒会長と級長は襲い受けなので先生が攻め。 受け攻め度↓ 校長>調教師麓戸>不良村田>風紀委員長>先輩教師池井>主人公イケメン教師小坂先生>生徒会長>級長宮本 ※本作品はフィクションであり実在する団体・組織等とは関係ありません。

[R-18] 奴隷のレッスン:騎士団所属の末っ子王子は、イケメン奴隷に身も心も奪われる

山葉らわん
BL
【縦読み推奨】 ■ 第一章(第1話〜第9話)  アラディーム国の第七王子であるノモクは、騎士団長ローエの招きを受けて保養地オシヤクを訪れた。ノモクは滞在先であるローエの館で、男奴隷エシフと出会う。  滞在初日の夜、エシフが「夜のデザート」と称し、女奴隷とともにノモクの部屋を訪れる。しかし純潔を重んじるノモクは、「初体験の手ほどき」を断り、エシフたちを部屋から追い返してしまう。 ■ 第二章(第1話〜第10話)  ノモクが「夜のデザート」を断ったことで、エシフは司祭ゼーゲンの立合いのもと、ローエから拷問を受けることになってしまう。  拷問のあと、ノモクは司祭ゼーゲンにエシフを自分の部屋に運ぶように依頼した。それは、持参した薬草でエシフを治療してあげるためだった。しかしノモクは、その意図を悟られないように、エシフの前で「拷問の仕方を覚えたい」と嘘をついてしまう。 ■ 第三章(第1話〜第11話)  ノモクは乳母の教えに従い、薬草をエシフの傷口に塗り、口吻をしていたが、途中でエシフが目を覚ましてしまう。奴隷ごっこがしたいのなら、とエシフはノモクに口交を強要する。 ■ 第四章(第1話〜第9話)  ノモクは、修道僧エークから地下の拷問部屋へと誘われる。そこではギーフとナコシュのふたりが、女奴隷たちを相手に淫らな戯れに興じていた。エークは、驚くノモクに拷問の手引き書を渡し、エシフをうまく拷問に掛ければ勇敢な騎士として認めてもらえるだろうと助言する。 ◾️第五章(第1話〜第10話)  「わたしは奴隷です。あなたを悦ばせるためなら……」  こう云ってエシフは、ノモクと交わる。 ◾️第六章(第1話〜第10話)  ノモクはエシフから新しい名「イェロード」を与えられ、またエシフの本当の名が「シュード」であることを知らされる。  さらにイェロード(=ノモク)は、滞在先であるローエの館の秘密を目の当たりにすることになる。 ◾️第七章(第1話〜第12話)  現在、まとめ中。 ◾️第八章(第1話〜第10話)  現在、まとめ中。 ◾️第九章(第一話〜)  現在、執筆中。 【地雷について】  「第一章第4話」と「第四章第3話」に男女の絡みシーンが出てきます(後者には「小スカ」もあり)。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。  「第二章第10話」に拷問シーンが出てきます。過度な描写にならないよう心掛けていますが、地雷だという読者さまは読み飛ばしてください(※をつけています)。

処理中です...