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邪魔者 1

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 俺の、突然のキスにも顔色ひとつ変えないタケルくん。

 そりゃそうか・・・。

 動揺させることすらできないんだ。俺じゃ・・・

「ごめん。ちょっと、チャンスかな、なんて思って・・・。なわけないよね~」

 タケルくんからパッと離れる。

「俺、言いませんでしたっけ?」

「え?」

「どうでもいいヤツは抱き潰して黙らすくらいはするって」

「・・・言ってたね」

「涼太さん以外は、どうでもいいヤツらです。のぞむさんも、そのうちの一人ですよ」

 それって、つまり・・・

「男との経験はあるんですか?」

「・・・ない、けど」

 少しは、自分でなんとかできるようにはなったはず。

「俺は、抱くことしかできませんよ」

 俺とは目を合わさずにタケルくんが淡々と話す。
 
 俺を見てくれなくてもいい。その他大勢のうちの一人でもいい。心の中にいるのが涼ちゃんでも構わない。

 俺は、好きになった人と、繋がってみたい。

「それでも、タケルくんと、したい」





 そのまま、何も話すこともないまま俺のアパートへと辿り着く。

 ドアを開ける手が少し震えて、自分が緊張しているのがわかる。
 今まで、何人女を抱いても、震えることなんかなかったのに・・・

「無理してるなら帰ります」

「無理してない!ただ、ちょっと緊張しちゃって」

 勢いでドアを開けて、タケルくんを招き入れる。

「しゃ、シャワーとか浴びた方がいいよね?」

「別に、俺はどっちでも」

「あ・・・じゃあ、適当に座ってて」

 コートを脱いで、バスルームに向かおうとする俺の腕をタケルくんに引っ張られる。

「めんどくさいの嫌なんで、早く終わらせましょう」

 そのまま腕を引かれて、部屋の奥にあるベッドに押し倒される。

 覆いかぶさったタケルくんが上から俺を見下ろす。

 わ・・・。女の子の目線て、こんな感じなんだ・・・。支配されてるみたいな感覚。

「涼太さんの代わりとか思わないでくださいね」

 「うん」

 わかってる。タケルくんにとって、涼ちゃんの代わりになれる人なんて、いない。

 唇が重なってすぐに舌が絡んで、深いキスになる。

 口付けながら、タケルくんがジャケットを脱ぐ仕草にぞくっとした。

 今ここに、涼ちゃんと山田みたいな甘い雰囲気はひとつも無くて、ただ、欲望しかない。

 それでも俺は、タケルくんの服を脱ぐ仕草に、晒された骨格や筋肉に、いちいち胸が騒がしくなって、勘違いしちゃいけない体の熱さに溺れそうになる。

「のぞむさん、本当に初めてなんですか?」

 表情ひとつ変えないタケルくんが俺の中にいる。

「あ・・・誰かを、入れたのは・・・初めて、かな」

 ローション使ったとはいえ、意外とすんなり入った・・・?がんばって開発しといて良かった!

「後ろだけでイケないと思うんで、前は自分で弄ってください」

「・・・わかった」

 タケルくんの動きが速くなって、さっきまで変わらなかった表情が少し崩れて、息があがってくる。

 俺でも、こんな顔になってくれるんだ・・・。

 堪らなくなって、思わずタケルくんの首に腕を回すと、答えるようにキスを返してくれる。

 俺に気持ちが無いってわかってるけど、それでも好きな人とひとつになれるって、こんな気持ちよかったんだ。

 次は無いかもしれないけど・・・。

 それでも、俺にこんな気持ちを教えてくれて、ありがとう、タケルくん。

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