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너를 관리! 3
しおりを挟む「・・・り、万里っ!起きてってば!」
ん・・・?
シウに肩を激しく揺さぶられ、俺は目を覚ます。
「・・・シウ、どうした」
「なんか知らない人達が勝手に入って来てるんだよ!ねえ、泥棒じゃ無いよね!?」
シウはカーテンの切れ目に顔を突っ込んで、二階にある寝室の窓から外を見る。
隠れて見てるつもりか?向こうからはシウの顔が丸見えだぞ。
と冷静に心の中でツッコミを入れてから、俺はカーテンを開ける。
知らない人達?勝手に入って来てるって・・・
窓から見下ろすと、沢山の花や食材を別荘の中に運び入れている配達員らしき人物が数名。泥棒ではなさそうだ。
「何やってんだ?つーか俺、昨夜鍵掛け忘れたっけ?」
「もお!ちゃんと確認してから寝ろよな、マンションと違ってオートロックじゃないんだぞ」
はっ、これってまさか親父の仕業か?シウの誕生日祝いを盛大にしようって魂胆か。
「シウ、おまえ親父となんか話したか?」
昨日聞けずじまいだった事をシウに聞いてみる。
「えっ?特に何も・・・。あっ、そう言えば、秘書さんから遊園地のチケット貰って・・・だから俺ここに来たいって昨日 万里に言ったんだ」
「・・・なるほど」
シウが単純だという事と、俺がシウの我儘を聞くって事を、親父は分かってたってワケか。
まあ、今回は親父もシウにサプライズしてやりたかっただけだろうし、悪い事じゃないから素直に騙されてやってもいいか。
「警戒しなくても良さそうだぞ。きっと親父からの誕生日プレゼントだ」
「えっ!? そうなの? やったぁ!」
シウは不安そうな顔を一瞬で笑顔に変えて両手を高く上げる。
「じゃあ、シャワーして遊園地行く準備しなきゃだね!」
「ああ。先にシャワーしてろ。その間にコンビニ行って下着買ってくるから。服は 車に昨日のコレクションが数着あるしそれでいいだろ」
階段を降りて一階へ行くと、リビングの飾り付けをしている業者に指示を出していた親父の秘書が俺たちに気付く。
「おはようございます。昨日はお疲れ様でした。お早いお着きだったんですね」
「はい。お陰様で・・・。誕生日の祝いにしては大掛かりですね」
玄関からリビングまで、色とりどりの花やバルーンで飾り付けられ、庭では屋外用キッチンが準備されシェフまでいる。
「ええ。ゲストも招いていますし、河森家として恥ずかしくないようにと社長から言付かっていますので」
河森家って・・・シウに金持ち自慢でもするつもりなのか親父は。つくづく何考えてるかわかんねえオッサンだな。
「着替えも準備してありますので、心配いりませんよ」
にっこり笑って、バスルームの方に手を差し出す秘書。
完璧過ぎかよ。こうじゃなきゃ親父の秘書なんか務まらないんだろうけど。
「一緒にシャワーして来いって意味かな?」
シウがシアン色の瞳をキラキラと輝かせる。
「んなワケあるか!こんなに外に人がいんのに風呂場でイチャつく勇気さすがにねーわ!」
「だよねぇ。じゃあ俺 先入ってくるね」
シウは残念そうに、トボトボとバスルームへ入っていく。
下着を買いに行く手間が省けたのはいいが、こうも人が出入りしてるんじゃ落ち着かない。
手持ち無沙汰な俺は庭へ出て外の空気を吸う事にした。
「坊、おめでとうなぁ」
「え・・・店長?なんで」
声を掛けられて振り返ると、親父行きつけの焼肉屋の店長が庭にいたシェフだと気付く。
「なんでって、そりゃ・・・」
「ちょっとぉ!! あなたが『万里』!?」
店長が言いかけた言葉を、甲高い女性の声で遮られてしまう。
再び振り返ると、チマチョゴリを着た中年女性が物凄い形相で近付いて来る。
「えっ、俺?」
「そう!あなたが『万里』ね!?」
「そうですけど・・・。すみません、どなたか存じ上げませんが・・・」
「シウの母です!」
「ええっ!?」
シウの母親だって!?
そう言われれば何処と無く面影が重なるような重ならないような・・・。うーん、綺麗な夫人ではあるけどあまりシウに似てないな。
「失礼しました。日本でシウさんのマネージャーをさせて頂いております河森です」
まさか恋人だなんて言えるはずがない。
「マネージャー、ですって?うちの大事なひとり息子をたぶらかしておいて、それ以上の挨拶はないの!? こんな失礼な・・・しかも、男なんかに、シウは・・・っ」
シウの母親は少しぎこちない日本語で責め立ててくる。
誑かす・・・男なんかに・・・。それは、俺達の関係を知っているということだ。
「すみません。シウからお聞きになっているとは知らずに、浅はかにも、隠し通すつもりでいました。申し訳ないです。
こうなったのは全て俺の責任です。シウの事は真剣に愛しています。許して頂けるとは思っていませんが、どうか、いい加減な気持ちではないという事だけはわかってください」
突然 現れたシウの母親に動揺しつつも、自分が今思う気持ちを正直に話すしかなく、他に為す術がない。
「わかって・・・っ、あげられたら、どんなに・・・」
庭の芝生の上に座り込んで泣き出してしまうシウの母親。
いつか、シウの家族にこんな風に辛い思いをさせてしまう日が来るのを俺は何度も想像して来た。どうしたら許してもらえるのかを頭の中で何度もシュミレーションして・・・。
けれどいざその時が来て、何も出来ない自分を思い知って、涙が出そうなほど悔しくて情けない。
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