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幼なじみ
1良太郎サイド
しおりを挟む(今日も翔真君はカッコイイなぁ。)
僕は良太郎。
高校2年のクラス替えで、幼なじみの翔真君と同じクラスになった。
翔真君はイケメンで、勉強も運動も出来るし、クラスでは常に友達に囲まれているような人だ。
そんな翔真君が好きなのだけど、お前ごときが好きになるなと言われてしまうほど、僕はノロマで要領が悪く、友達もいない。
(見てるだけならいいよね……)
いつから好きなのかと言われるともう忘れてしまった。気がついた時にはもう好きになっていたのだから。
「太郎くん、ごめん。私今日日直なんだけど、ちょっと用事があって……黒板消しといてくれる?」
同じクラスの人に話をかけられたと思ったら、雑用を押し付けられた。話をかけられる=雑用の方程式が出来上がっているんだ。
いいよとだけ答え黒板を消すけど、僕は知っている。彼女たちは僕の事を裏では気持ち悪いと言っていることを。
(別にいいけど……)
いいのだけど、黒板の上の方がなかなか届かなくて困る。低身長の俺に頼むなと思うけど、休み時間やることもないし、いい暇つぶしだと思うしかない。
(ん~上の方消せないな……)
背伸びをして消そうとしている僕の真後ろに、誰かが立っている気配がした。
だいたい誰かわかるけど。
「上は俺がやるよ。」
(翔真君だ……)
落ち着いた低い声で言われ、ドキドキしてしまう。
困ってる時はいつも助けてくれる。
「えー翔真君、日直じゃないのに黒板消しやらなくて大丈夫だよー?」
「手、汚れちゃう~」
これを女子が見たら嫉妬するのではと思っていたけど案の定。それを見た女子がごちゃごちゃ言ってくる。僕はいいのかと突っ込みたくなるけど、余計なことは言わない。
「良太郎、今日日直じゃないじゃん。」
「頼まれたんだ、用事があるって言ってたから。」
「そんなの嘘だよ。さっきアイツ彼氏といたよ。」
「わかってるよ。」
「イヤだってちゃんと言わないと。」
人が良すぎだと、嫌がらせを受けている僕以上に怒ってくれる翔真君。
本当に良い奴なんだよな。
でも、困った人は助けるのよと、亡くなったお母さんに言われたから……
頼まれたらイヤとは言いずらい。
それに翔真君も守ってくれるし。
「ただいまー……」
家に帰ると大抵誰もいない。
お父さんは僕のために夜遅くまで働いてくれている。だから仕方がないと自分に言い聞かせるけど、寂しいものは寂しい。
家事をして寂しさを紛らわす。
今日はお父さんが好きな生姜焼きにしようとメニューを決めて夜ご飯を作る。
2人分作っても、食べるのはいつも1人で。
(一人で食べても美味しくないんだよな……)
ほぼ一人暮らしの広い家。
隣の家が翔真君のお家なのだけど、たまに楽しそうな声が聞こえてくる。
(……いいなぁ。)
僕は毎日頑張って早起きして、自分とお父さんの弁当を作っている。
お父さんの朝は出社の準備で忙しく、なかなか話すことはないけれど、ありがとうと言って貰えるのが嬉しい。
お父さんが出かけたあとは自分の準備を整えるけど、あまりに朝早く起きているから登校まで時間がある。
ぼんやり朝のニュースをみてるけど、いつの間にか学校に行きたくないなぁって考えでいっぱいだ。
「太郎の弁当不味そうだな!」
「どれどれ……うわ、まずっ!」
「腐ってんじゃね?捨てた方がいいよ。」
クラスの男子には毎回飽きもせずバカにされる。
苦笑いしか出来ない僕は、本当にダメなやつなんだと思ってしまう。
(お父さんも美味しくないって思ってるのかな……)
そう思うと悲しくなる。
食べてる途中の弁当をまとめて、教室をでた。
最初から誰もいないところで食べれば良かったと思いながら、人通りのない階段でお弁当を食べることにした。
(……美味しくはないかもだけど、食べれる。)
ただひたすらパクパクと食べていると、いた、と翔真君が現れた。
一緒に食べようと思ったのに居なかったからと、わざわざ探してくれたらしい。
迷惑だからと思って一人で食べているが、いつも同じこの場所で食べている。
本当に1人になりたいなら、毎回見つかるような同じ場所で食べたりしない。
本当は見つけて欲しいんだ。
だって寂しいから。
(僕が女子なら……)
女子なら翔真君に甘えることが出来たのかな。
告白だって出来たかもしれない。
もちろんフラれるだろうけど、気持ち悪いと思われることはないはずだ。
男の僕が告白するのと違って。
自分の好きと言う気持ちをずっと隠さなければならないのも辛いなと思った。
「今日良太郎んち行っていい?」
「今日?うんいいよ、ウチはいつでも遊びに来て大丈夫だよ。」
昔は良くお互いの家を行き来していた。
中学校にあがると翔真君は部活が忙しくなって、その頻度は減ったけど。
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