22 / 32
21
しおりを挟む
仕事が終わり、佐々木は会社のエントランスにいた。
(もう21時か……もしかして直帰だったかな……)
定時である17時半に終わり、今までずっと望月を待っていたが、全く現れる様子がなく疲弊する。
(てか……会ってどうすればいい?ここで告白するの?どっか店に誘う?でも俺、前に断ったし……断られるかも……そしたらどうすれば……)
ごちゃごちゃと頭の中で考えるが、マイナスな事しか出てこない佐々木。もう帰ってしまおうかと思った時、女性と男性の声が聞こえた。
(はっ!望月さんの声か?)
パッと顔を上げると、望月と森山が歩きながら佐々木の方へ向かってきた。楽しそうに談笑しながら。格好からしてもう帰るところみたいだが、これからご飯にでも行くのだろうか。
(うわっ、タイミング悪っ!どうしよう……)
2人で来ることは全く想定しておらず、挙動不審になってしまう佐々木。そんな様子に望月は気づき、駆け寄る。
「佐々木!どうしたんだよこんな時間に。何かあったか?」
佐々木は、望月が彼女を差し置き心配そうに話しかけてきてくれることが、つい嬉しくなってしまう。
「あ、すみません……森山さんといるのに。これから2人でご飯ですか?」
「ん?ただの仕事の打ち合わせだよ。もう終わって帰るところだから大丈夫。」
「あの……えっ、と……」
急すぎて心の準備が出来ていなかった佐々木は、モゴモゴしてしまう。その脇を森山はお疲れ様ですと、にこやかに帰って行った。
(空気読んで帰ってくれたのかな……これからデートだったのかもしれないのに森山さんに申し訳ないことした……)
「ふっ、どうしたんだよ。ちょっと歩くか?」
ずっと黙ったままの佐々木に、ここにいてもいつもの佐々木にはならないと思い、外を歩くことを提案する望月。
昼間と違い、人通りが少ない夜道を歩く。望月は佐々木から話すのを待っているのか、ただ隣を歩いていた。
「……先日のお誘い、断ってすみませんでした。言いたいことって異動のことだったんですか?」
「そう。佐々木には先に言っておきたくて。実は……パワハラを理由に社長に直談判して、佐々木と同じ課にしてもらったんだけどさ……パワハラ問題が解決したらすぐさま異動とか……コマだよなぁ。」
ははっと苦笑いをする望月。パワハラ問題解決のために来たのは間違いないが、自ら解決しようと動いてくれていたことがわかり、嬉しくなってしまう。
「組織ですからね、仕方ないです。でも……望月さんがいなくなるのは……」
寂しい。
立ち止まってしまう佐々木。
「すみません、俺……最近態度酷かったですよね。望月さんみてると……苦しくて。」
振り返る望月の顔を見れず下を向いてしまう佐々木は、心臓のあたりをギュッと掴んで今にも泣きそうだ。
「え?俺、なんかしたか!?」
「しました。」
何をしてしまったのかと焦りながらも佐々木の背中を心配そうに撫でる望月に、嘘ですと返すと、俺をからかったなとおでこを軽くコツンとされた。コツンとされた場所をさすりながら佐々木は続ける。
「違うんです。最近、俺おかしくて。望月さんと森山さんを見てると……なんて言ったらいいのか……」
急に森山の名前がでて、「?」が顔に出てしまっている望月。本当に何も心当たりがないのかと、意を決して佐々木が聞いた。
「付き合ってますよね?」
「え?付き合ってないよ?」
「……え?」
「……ん?」
お互い顔を見合せ、しばらく間が空いてしまった。佐々木は思考が追いついていないようだ。
(もしかして……俺の勘違い?勝手に付き合ってるって思って冷たくあたってたってこと?恥ずかしすぎるし申し訳なさすぎる……)
かぁぁっと顔を真っ赤にする佐々木に、望月は勘づく。
「もしかして、ヤキモチ妬いてくれたの?」
「ヤ、ヤキモチ!?や、えっ、ちっ違くてっ!ヤキモチ!?」
「違うの?残念。」
真っ赤になりながらあたふたとする佐々木をみて、今までどこか緊張してたけど、それがほぐれたと笑う望月。そしてその佐々木の反応をみて、瀬戸とは付き合ってないと気づき、安心したようだ。
「でも良かった。佐々木が瀬戸と付き合ってなくて。」
(俺と瀬戸が付き合ってなくて良かった?)
良かったとはどういう事かと考えている佐々木の正面に、勇気がでたと、ピシッと立つ望月。
「佐々木悟。俺は……悟が好きだ。」
突然の告白に、何を言われているのかと佐々木は固まってしまった。
「じょっ、冗談……」
まさかそんなことがあるはずないと震える佐々木を抱きしめる望月。
「冗談でこんなことしないよ、俺は。」
真っ直ぐに見つめる視線に雄を感じてしまう佐々木。望月はゆっくりと唇を重ねた。
(~~~っ心臓が壊れるっ!)
「悟、俺の嫁になってくれ。」
「嫁!?すっ飛ばしすぎです!」
「そうか?本気なんだけど。」
笑う望月の顔を見て、やっぱり好きだと思う佐々木。好きな人に好きだと伝えて貰うだけで、ふわふわと夢心地になる。
「あ、の……和也さん、俺もあなたが好きです。和也さんとお付き合いしたいです。ずっと一緒にいたい!」
真っ赤になりながらも頑張って気持ちを伝えてくれた佐々木のあまりの可愛さに、かたまってしまった望月。
「会った時から、ずっと好きでした。」
佐々木の告白に、望月は嬉しくてぶわわっと震え、離さないと言わんばかりにきつく佐々木を抱きしめる。
「キスしていい?」
恥ずかしそうにコクンと頷く佐々木を見つめ、キスをする望月。ここが外だということは忘れ、お互い深く求め合う。
結ばれた2人は、これからゆっくりと愛を重ねていくことになるだろう。
【おわり】
(もう21時か……もしかして直帰だったかな……)
定時である17時半に終わり、今までずっと望月を待っていたが、全く現れる様子がなく疲弊する。
(てか……会ってどうすればいい?ここで告白するの?どっか店に誘う?でも俺、前に断ったし……断られるかも……そしたらどうすれば……)
ごちゃごちゃと頭の中で考えるが、マイナスな事しか出てこない佐々木。もう帰ってしまおうかと思った時、女性と男性の声が聞こえた。
(はっ!望月さんの声か?)
パッと顔を上げると、望月と森山が歩きながら佐々木の方へ向かってきた。楽しそうに談笑しながら。格好からしてもう帰るところみたいだが、これからご飯にでも行くのだろうか。
(うわっ、タイミング悪っ!どうしよう……)
2人で来ることは全く想定しておらず、挙動不審になってしまう佐々木。そんな様子に望月は気づき、駆け寄る。
「佐々木!どうしたんだよこんな時間に。何かあったか?」
佐々木は、望月が彼女を差し置き心配そうに話しかけてきてくれることが、つい嬉しくなってしまう。
「あ、すみません……森山さんといるのに。これから2人でご飯ですか?」
「ん?ただの仕事の打ち合わせだよ。もう終わって帰るところだから大丈夫。」
「あの……えっ、と……」
急すぎて心の準備が出来ていなかった佐々木は、モゴモゴしてしまう。その脇を森山はお疲れ様ですと、にこやかに帰って行った。
(空気読んで帰ってくれたのかな……これからデートだったのかもしれないのに森山さんに申し訳ないことした……)
「ふっ、どうしたんだよ。ちょっと歩くか?」
ずっと黙ったままの佐々木に、ここにいてもいつもの佐々木にはならないと思い、外を歩くことを提案する望月。
昼間と違い、人通りが少ない夜道を歩く。望月は佐々木から話すのを待っているのか、ただ隣を歩いていた。
「……先日のお誘い、断ってすみませんでした。言いたいことって異動のことだったんですか?」
「そう。佐々木には先に言っておきたくて。実は……パワハラを理由に社長に直談判して、佐々木と同じ課にしてもらったんだけどさ……パワハラ問題が解決したらすぐさま異動とか……コマだよなぁ。」
ははっと苦笑いをする望月。パワハラ問題解決のために来たのは間違いないが、自ら解決しようと動いてくれていたことがわかり、嬉しくなってしまう。
「組織ですからね、仕方ないです。でも……望月さんがいなくなるのは……」
寂しい。
立ち止まってしまう佐々木。
「すみません、俺……最近態度酷かったですよね。望月さんみてると……苦しくて。」
振り返る望月の顔を見れず下を向いてしまう佐々木は、心臓のあたりをギュッと掴んで今にも泣きそうだ。
「え?俺、なんかしたか!?」
「しました。」
何をしてしまったのかと焦りながらも佐々木の背中を心配そうに撫でる望月に、嘘ですと返すと、俺をからかったなとおでこを軽くコツンとされた。コツンとされた場所をさすりながら佐々木は続ける。
「違うんです。最近、俺おかしくて。望月さんと森山さんを見てると……なんて言ったらいいのか……」
急に森山の名前がでて、「?」が顔に出てしまっている望月。本当に何も心当たりがないのかと、意を決して佐々木が聞いた。
「付き合ってますよね?」
「え?付き合ってないよ?」
「……え?」
「……ん?」
お互い顔を見合せ、しばらく間が空いてしまった。佐々木は思考が追いついていないようだ。
(もしかして……俺の勘違い?勝手に付き合ってるって思って冷たくあたってたってこと?恥ずかしすぎるし申し訳なさすぎる……)
かぁぁっと顔を真っ赤にする佐々木に、望月は勘づく。
「もしかして、ヤキモチ妬いてくれたの?」
「ヤ、ヤキモチ!?や、えっ、ちっ違くてっ!ヤキモチ!?」
「違うの?残念。」
真っ赤になりながらあたふたとする佐々木をみて、今までどこか緊張してたけど、それがほぐれたと笑う望月。そしてその佐々木の反応をみて、瀬戸とは付き合ってないと気づき、安心したようだ。
「でも良かった。佐々木が瀬戸と付き合ってなくて。」
(俺と瀬戸が付き合ってなくて良かった?)
良かったとはどういう事かと考えている佐々木の正面に、勇気がでたと、ピシッと立つ望月。
「佐々木悟。俺は……悟が好きだ。」
突然の告白に、何を言われているのかと佐々木は固まってしまった。
「じょっ、冗談……」
まさかそんなことがあるはずないと震える佐々木を抱きしめる望月。
「冗談でこんなことしないよ、俺は。」
真っ直ぐに見つめる視線に雄を感じてしまう佐々木。望月はゆっくりと唇を重ねた。
(~~~っ心臓が壊れるっ!)
「悟、俺の嫁になってくれ。」
「嫁!?すっ飛ばしすぎです!」
「そうか?本気なんだけど。」
笑う望月の顔を見て、やっぱり好きだと思う佐々木。好きな人に好きだと伝えて貰うだけで、ふわふわと夢心地になる。
「あ、の……和也さん、俺もあなたが好きです。和也さんとお付き合いしたいです。ずっと一緒にいたい!」
真っ赤になりながらも頑張って気持ちを伝えてくれた佐々木のあまりの可愛さに、かたまってしまった望月。
「会った時から、ずっと好きでした。」
佐々木の告白に、望月は嬉しくてぶわわっと震え、離さないと言わんばかりにきつく佐々木を抱きしめる。
「キスしていい?」
恥ずかしそうにコクンと頷く佐々木を見つめ、キスをする望月。ここが外だということは忘れ、お互い深く求め合う。
結ばれた2人は、これからゆっくりと愛を重ねていくことになるだろう。
【おわり】
10
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。




お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら
夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。
テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。
Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。
執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

愛人は嫌だったので別れることにしました。
伊吹咲夜
BL
会社の先輩である健二と達哉は、先輩・後輩の間柄であり、身体の関係も持っていた。そんな健二のことを達哉は自分を愛してくれている恋人だとずっと思っていた。
しかし健二との関係は身体だけで、それ以上のことはない。疑問に思っていた日、健二が結婚したと朝礼で報告が。健二は達哉のことを愛してはいなかったのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる