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「え、加藤課長が辞める?」
まさに青天の霹靂。
その事実を知った佐々木は、何があっても絶対辞めなそうな人なのに、なぜ今の時期に?と不思議に思った。
「まぁ……俺は知ってたんだけど。」
「そうなんですか?でもなんで急に……」
「……佐々木がパワハラ受けてる時に、加藤さんの親父さんが来たんだよ。偶然。」
話そうか悩んだ結果、望月は教えてくれた。
「そしたら親父さんが激怒してな。社会人として最低だ、辞めさせる!ってなって、色々手続きとかあって今になったんだ。」
だがその理由を聞いて、自分のせいでは?と思ってしまった佐々木。それをすぐに察した望月は、佐々木のせいではないと、背中を撫でフォローしてくれた。
正直、加藤がいなくなりほっとしている自分もいる。これでパワハラもなくなるんだと。
しばらくすると、加藤は退職した。何事も無かったかのように、まるで自分の意思で辞めるのだと言わんばかりに、最後まで威厳を保ったまま辞めていった。
佐々木は加藤が辞めて良かったと思っていた。思っていたはずなのだが。
(最近望月さんに声をかけられることが減った……)
加藤がいなくなり、フォローされることがめっきりなくなった佐々木。元気になるどころか、望月不足で打撃を受けていた。
(もともと忙しい人だもんな。逆に今まですごくフォローしてくれてたんだ……)
感謝しかない。でも逆にフォローされる以外に話しかけられることはないと思うと寂しい。それだけの関係だったんだと言われているみたいで。
そして望月のことを考えると、必ず社員旅行の夜を思い出す。あの夜のことが気になるけど、未だに聞けないでいる。
しかし、最近ある噂が飛び交っている。
「えっ!あの望月さんと森山さんが!?」
「望月さん狙ってたのに~!あ~でもお似合いかもね。」
「最近頻繁に会いに行ってるみたいよ~」
「あらぁ、結婚も見えてきたかしら?」
「望月さんも、もうアラフォーだものねぇ。」
そう、望月と森山が付き合っているのではないかと言う噂だ。女子社員の中ではこの噂でもちきりだ。佐々木はパワハラがなくなったというのに、毎日ズーンと沈み、耳がダンボのようになってしまっている。
(やっぱり付き合っているのか……いやでも本人からは聞いてないし……)
「お疲れ様~!」
噂をすれば望月。何も知らない望月は、真っ先に佐々木のデスクにいき声をかける。
「お疲れ。順調?」
「あ、はい……」
望月がせっかく声をかけてくれているのに、ぎこちなくなってしまう佐々木。本当は嬉しいのに、どう接したら良いのか分からなくなってしまっているようだ。
「なんか……久しぶりだな。」
「そうですね、望月係長忙しいから。もう加藤課長もいないし、フォローして頂かなくて大丈夫ですよ。定時に帰れることも増えましたし。」
違う、こんなことを話したい訳じゃないのに。天邪鬼だと自分でも思う。そんな自分が卑屈で悲しくなる。
「俺がお前と話したいの。」
望月はそう言うと、ポンッと頭を撫でオフィスの1人1人に声をかけに行ってしまった。
(~~~っ。)
本当は真っ先に声をかけてくれたことが嬉しいくせに、素直になれない自分。拗ねた子供みたいだと、情けなくて泣けてくる。
「佐々木さ~ん!ここ教えてください~!」
ひ~んと泣きながら瀬戸が佐々木のデスクにきた。いつもと変わらない瀬戸に安心してしまう。
「ん~?あ、ここね……ってか、もうこんな難しいのやるようになったんだ……」
書類をみて関心する佐々木。瀬戸の成長は著しい。そのうち抜かれるのでは?と心配になるくらいだ。
「そうなんですよ!褒めてください!」
ふんすふんすとする瀬戸は、相変わらずパタパタとする耳と尻尾がみえる。
(ホントに同一人物か?)
あの夜の、あの時の雄の顔は微塵も感じない。と、思いつつも頭を撫でてやる佐々木。自分にとっては、やはりかわいい後輩の1人で。
(あの顔は恋人だけが見れる特権なんだろうな。)
そして、フられたからといって、いつまでも自分のようにウジウジしない態度に感心した。本当に良い奴だとは思うが、でもそれだけで、恋愛感情はないと思う。
(1番好きな人と結婚するより2番目に好きな人と結婚した方が幸せになれるって言うし……瀬戸を好きになれれば幸せになれるのかな。)
(……また頭撫でてる。)
遠くから見ていた望月は、2人の行動にモヤモヤとしていた。
(まったく……会社でいちゃついて……)
会社ではなるべく明るく振る舞いたいのだが、さすがにふぅっとため息がでてしまう。最近、佐々木の態度もすこぶる冷たい。佐々木と瀬戸が仲良くする度、望月もまた、社員旅行の夜を思い出していた。脳裏に焼き付いた抱き合っている2人。
(やっぱりあれって……そーゆーことだよなぁ……)
自分の席に戻ると椅子に座り、自然と腕を組んでいた。
「望月係長、何か考え事ですか?」
鈴木が声をかけるが、いや、たいしたことじゃないんだけどと、何処か上の空な様子。
(望月さんのこの態度は相当悩んでるぞ……はっ!もしかしてプロポーズのこととか考えてる!?)
完璧に勘違いをしている鈴木。こうしてまた、根も葉もない噂が広がっていった。
まさに青天の霹靂。
その事実を知った佐々木は、何があっても絶対辞めなそうな人なのに、なぜ今の時期に?と不思議に思った。
「まぁ……俺は知ってたんだけど。」
「そうなんですか?でもなんで急に……」
「……佐々木がパワハラ受けてる時に、加藤さんの親父さんが来たんだよ。偶然。」
話そうか悩んだ結果、望月は教えてくれた。
「そしたら親父さんが激怒してな。社会人として最低だ、辞めさせる!ってなって、色々手続きとかあって今になったんだ。」
だがその理由を聞いて、自分のせいでは?と思ってしまった佐々木。それをすぐに察した望月は、佐々木のせいではないと、背中を撫でフォローしてくれた。
正直、加藤がいなくなりほっとしている自分もいる。これでパワハラもなくなるんだと。
しばらくすると、加藤は退職した。何事も無かったかのように、まるで自分の意思で辞めるのだと言わんばかりに、最後まで威厳を保ったまま辞めていった。
佐々木は加藤が辞めて良かったと思っていた。思っていたはずなのだが。
(最近望月さんに声をかけられることが減った……)
加藤がいなくなり、フォローされることがめっきりなくなった佐々木。元気になるどころか、望月不足で打撃を受けていた。
(もともと忙しい人だもんな。逆に今まですごくフォローしてくれてたんだ……)
感謝しかない。でも逆にフォローされる以外に話しかけられることはないと思うと寂しい。それだけの関係だったんだと言われているみたいで。
そして望月のことを考えると、必ず社員旅行の夜を思い出す。あの夜のことが気になるけど、未だに聞けないでいる。
しかし、最近ある噂が飛び交っている。
「えっ!あの望月さんと森山さんが!?」
「望月さん狙ってたのに~!あ~でもお似合いかもね。」
「最近頻繁に会いに行ってるみたいよ~」
「あらぁ、結婚も見えてきたかしら?」
「望月さんも、もうアラフォーだものねぇ。」
そう、望月と森山が付き合っているのではないかと言う噂だ。女子社員の中ではこの噂でもちきりだ。佐々木はパワハラがなくなったというのに、毎日ズーンと沈み、耳がダンボのようになってしまっている。
(やっぱり付き合っているのか……いやでも本人からは聞いてないし……)
「お疲れ様~!」
噂をすれば望月。何も知らない望月は、真っ先に佐々木のデスクにいき声をかける。
「お疲れ。順調?」
「あ、はい……」
望月がせっかく声をかけてくれているのに、ぎこちなくなってしまう佐々木。本当は嬉しいのに、どう接したら良いのか分からなくなってしまっているようだ。
「なんか……久しぶりだな。」
「そうですね、望月係長忙しいから。もう加藤課長もいないし、フォローして頂かなくて大丈夫ですよ。定時に帰れることも増えましたし。」
違う、こんなことを話したい訳じゃないのに。天邪鬼だと自分でも思う。そんな自分が卑屈で悲しくなる。
「俺がお前と話したいの。」
望月はそう言うと、ポンッと頭を撫でオフィスの1人1人に声をかけに行ってしまった。
(~~~っ。)
本当は真っ先に声をかけてくれたことが嬉しいくせに、素直になれない自分。拗ねた子供みたいだと、情けなくて泣けてくる。
「佐々木さ~ん!ここ教えてください~!」
ひ~んと泣きながら瀬戸が佐々木のデスクにきた。いつもと変わらない瀬戸に安心してしまう。
「ん~?あ、ここね……ってか、もうこんな難しいのやるようになったんだ……」
書類をみて関心する佐々木。瀬戸の成長は著しい。そのうち抜かれるのでは?と心配になるくらいだ。
「そうなんですよ!褒めてください!」
ふんすふんすとする瀬戸は、相変わらずパタパタとする耳と尻尾がみえる。
(ホントに同一人物か?)
あの夜の、あの時の雄の顔は微塵も感じない。と、思いつつも頭を撫でてやる佐々木。自分にとっては、やはりかわいい後輩の1人で。
(あの顔は恋人だけが見れる特権なんだろうな。)
そして、フられたからといって、いつまでも自分のようにウジウジしない態度に感心した。本当に良い奴だとは思うが、でもそれだけで、恋愛感情はないと思う。
(1番好きな人と結婚するより2番目に好きな人と結婚した方が幸せになれるって言うし……瀬戸を好きになれれば幸せになれるのかな。)
(……また頭撫でてる。)
遠くから見ていた望月は、2人の行動にモヤモヤとしていた。
(まったく……会社でいちゃついて……)
会社ではなるべく明るく振る舞いたいのだが、さすがにふぅっとため息がでてしまう。最近、佐々木の態度もすこぶる冷たい。佐々木と瀬戸が仲良くする度、望月もまた、社員旅行の夜を思い出していた。脳裏に焼き付いた抱き合っている2人。
(やっぱりあれって……そーゆーことだよなぁ……)
自分の席に戻ると椅子に座り、自然と腕を組んでいた。
「望月係長、何か考え事ですか?」
鈴木が声をかけるが、いや、たいしたことじゃないんだけどと、何処か上の空な様子。
(望月さんのこの態度は相当悩んでるぞ……はっ!もしかしてプロポーズのこととか考えてる!?)
完璧に勘違いをしている鈴木。こうしてまた、根も葉もない噂が広がっていった。
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