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「あっ!」
「森山さん大丈夫?」
転びそうな森山の手を握り支える望月。無理やり連れてこられた佐々木は、それを見ないようにずんずん先へと進む。
「おーい、佐々木。おじさんをもっと労わってくれ。」
どこかムスッとした佐々木を追いかけ手を掴もうとするも、スカッと掴めず、望月は苦笑い。
「知りません。望月さんが来たいって言ったんじゃないですか。」
「なんで怒ってんの?」
(……確かになんで怒ってんだ?)
別に望月が告白されようと、森山と付き合おうと関係ない。むしろ喜ばしいことではないか。好きならば望月が選ぶ道を心から祝福してあげなければならないはずなのに。
(俺にはそんな寛大な心はないのか……)
山を登ると、ひらけた場所にでた。
「ここじゃない?」
「うわぁ!上見て上!星すごっ!」
「わぁ!こんなにハッキリ見えるんだ!」
先に到着した佐々木以外のメンバーは星空を見上げ、その美しさに興奮している。
「はぁ、はぁっ……」
1人息を切らしながらやっと到着する佐々木。若者の体力はもちろんだが、望月の体力にも驚いた。
「やっとついた……」
死にそうな顔をしている佐々木に、瀬戸が上を見てくださいと声をかける。そう言われ見上げる星空のすごさに、佐々木の目も星空のようにキラキラと輝いているように見えた。
「きれい……」
思わず呟く佐々木をみて、無理やりにでも連れてきて良かったと思う望月。
「な!来て良かっただろ?佐々木と見れて嬉しいよ。」
「はい……」
設置してあったベンチに腰掛け、みんなで星空を見上げる。あの星は何座だろうとか、流れ星はどこだとか、みんな楽しそうだ。
「都会じゃこんなの見れないよな~」
「あ!流れ星!」
しばらく眺めていると、不意に星が流れた。何を願えばとアワアワしている佐々木の横で、美山が念仏のように彼女と繰り返し言っており、思わず笑ってしまう。
「何言ってんの美山。佐々木さん笑わすとかすごいな。」
「彼女欲しいって願ったんだよ。」
ワイワイとしている中、いつの間にか望月がいなくなっていることに気づいた佐々木。
(森山さんもいない……まさか……)
ドキドキと心臓の音が早くなる。いても立っても居られなくなり、佐々木もふらっとその場から消えた。それをチラッと横目で追う瀬戸。
(いや、望月さんが告白されたって自分には関係無いことだ……関係……)
佐々木の頭には、今まで優しく接してくれた望月がうかぶ。本当は望月が誰かのものになるなんてイヤだと、涙が溢れそうになる。自然と縁結びスポットと言われる方へ足が向かう。案の定、望月と森山の姿が見えた。
「っっ」
心臓がギュッと痛くなる。こんな所に2人ということは、考えるまでもなく告白しているのだろう。
そこには笑顔の望月が……。
その顔を見て、佐々木は察した。
(バカだなぁ、俺なんかが好きになったところで何も出来ないのに。)
恋人になるなんて叶うはずもない。優しくされて、もしかして望月も自分を好いてくれているのかもしれない、可能性があるのではと、少しでも思った自分が恥ずかしい。
(望月さんはいい人だから全てを受け止めてくれたけど、それは上司としてだったんだ。誰にでも優しいし、俺はその他大勢の1人にすぎない。)
そう思うと、涙が溢れてしまった。分かりきっていたことなのに、いざその場面に直面すると、想像以上に辛く苦しい。
(これじゃぁみんなのとこ戻れないよな……)
ふらふらその場から離れる佐々木は、どうしようかと考えている間に人気がないところに来てしまっていた。
「佐々木さん。」
「わぁっ!」
誰もいないはずなのに急に肩を叩かれ、驚く佐々木。叩いた本人も佐々木の驚き具合に驚いたようだった。
「なんだ、瀬戸か!」
「すみません、1人じゃこんな所危ないと思って……」
そう言われれば黙ってきてしまったと反省する。ごめんと苦笑いする佐々木をジッとみつめ、動かなくなった瀬戸。どうしたのかと思っていると、瀬戸は佐々木の顔を両手で包み、涙のあとを親指で拭った。
「せ、瀬戸?どうしたの?」
いつもと様子の違う瀬戸に、戸惑う佐々木。
「あの、佐々木さん。1人で抱え込まないでください。辛い時は俺がそばに居ますから。」
「え?」
瀬戸は急に何を言っているのかと、頭が追いつかない。
「今、すごく辛そうです。笑ってても、俺にはわかります。無理に笑わないでください。俺は……まだまだ実力不足な所もいっぱいあります。けど、佐々木さんを守りたいです。幸せにしたい。本当の笑顔でいて欲しいんです。」
必死な様子の瀬戸に、今言っていることは本心なのだと感じ、幸せにしたいと言われ、ドキドキしてしまっている。瀬戸は佐々木の両手をそっと握り、胸元まであげる。
「あなたが好きです。」
瀬戸はニコッと笑うと、佐々木の手の甲にキスをした。ストレートに好きと言われ、まさか瀬戸が自分に好意を持っていてくれたとはと驚く佐々木。
「俺、好きって、抱きしめたりキスしたりしたいっていう好きですから。」
もちろんそれ以上もね、とイタズラっぽく耳元で囁く瀬戸に、ずるいと思う。こんな時ばっかり男の顔になって。抱きしめてくる瀬戸を抵抗せず受け入れる佐々木。
告白された後みんなの所へ集合したのだが、佐々木と瀬戸がおらず美山に聞くと、先に帰ったとのことだった。そうかと、望月も美山に帰る旨伝えた。
(なんだ……佐々木帰っちゃったのか……)
出来れば2人で……と考えてた望月はため息をつき歩き始めた。帰る途中、ふと人がいるのが見えた。
(あれ……佐々木と瀬戸だよな……)
佐々木が抱きしめられている様子を見てしまった望月。
(なんだよ……アイツらってああ言う関係だったのか?)
こんな気持ちになるなんて、と、望月は自分の気持ちに気づいたようだが、何も言えずその場を立ち去った。
「瀬戸、ありがとう。嬉しいよ……でも……」
(でも俺は……瀬戸がこんなに想ってくれていても、望月さんを諦められないなんて……)
黙ってしまう佐々木に、瀬戸は笑顔でわかってますと一言。
「みんな心配してるかも。帰りましょう。」
「森山さん大丈夫?」
転びそうな森山の手を握り支える望月。無理やり連れてこられた佐々木は、それを見ないようにずんずん先へと進む。
「おーい、佐々木。おじさんをもっと労わってくれ。」
どこかムスッとした佐々木を追いかけ手を掴もうとするも、スカッと掴めず、望月は苦笑い。
「知りません。望月さんが来たいって言ったんじゃないですか。」
「なんで怒ってんの?」
(……確かになんで怒ってんだ?)
別に望月が告白されようと、森山と付き合おうと関係ない。むしろ喜ばしいことではないか。好きならば望月が選ぶ道を心から祝福してあげなければならないはずなのに。
(俺にはそんな寛大な心はないのか……)
山を登ると、ひらけた場所にでた。
「ここじゃない?」
「うわぁ!上見て上!星すごっ!」
「わぁ!こんなにハッキリ見えるんだ!」
先に到着した佐々木以外のメンバーは星空を見上げ、その美しさに興奮している。
「はぁ、はぁっ……」
1人息を切らしながらやっと到着する佐々木。若者の体力はもちろんだが、望月の体力にも驚いた。
「やっとついた……」
死にそうな顔をしている佐々木に、瀬戸が上を見てくださいと声をかける。そう言われ見上げる星空のすごさに、佐々木の目も星空のようにキラキラと輝いているように見えた。
「きれい……」
思わず呟く佐々木をみて、無理やりにでも連れてきて良かったと思う望月。
「な!来て良かっただろ?佐々木と見れて嬉しいよ。」
「はい……」
設置してあったベンチに腰掛け、みんなで星空を見上げる。あの星は何座だろうとか、流れ星はどこだとか、みんな楽しそうだ。
「都会じゃこんなの見れないよな~」
「あ!流れ星!」
しばらく眺めていると、不意に星が流れた。何を願えばとアワアワしている佐々木の横で、美山が念仏のように彼女と繰り返し言っており、思わず笑ってしまう。
「何言ってんの美山。佐々木さん笑わすとかすごいな。」
「彼女欲しいって願ったんだよ。」
ワイワイとしている中、いつの間にか望月がいなくなっていることに気づいた佐々木。
(森山さんもいない……まさか……)
ドキドキと心臓の音が早くなる。いても立っても居られなくなり、佐々木もふらっとその場から消えた。それをチラッと横目で追う瀬戸。
(いや、望月さんが告白されたって自分には関係無いことだ……関係……)
佐々木の頭には、今まで優しく接してくれた望月がうかぶ。本当は望月が誰かのものになるなんてイヤだと、涙が溢れそうになる。自然と縁結びスポットと言われる方へ足が向かう。案の定、望月と森山の姿が見えた。
「っっ」
心臓がギュッと痛くなる。こんな所に2人ということは、考えるまでもなく告白しているのだろう。
そこには笑顔の望月が……。
その顔を見て、佐々木は察した。
(バカだなぁ、俺なんかが好きになったところで何も出来ないのに。)
恋人になるなんて叶うはずもない。優しくされて、もしかして望月も自分を好いてくれているのかもしれない、可能性があるのではと、少しでも思った自分が恥ずかしい。
(望月さんはいい人だから全てを受け止めてくれたけど、それは上司としてだったんだ。誰にでも優しいし、俺はその他大勢の1人にすぎない。)
そう思うと、涙が溢れてしまった。分かりきっていたことなのに、いざその場面に直面すると、想像以上に辛く苦しい。
(これじゃぁみんなのとこ戻れないよな……)
ふらふらその場から離れる佐々木は、どうしようかと考えている間に人気がないところに来てしまっていた。
「佐々木さん。」
「わぁっ!」
誰もいないはずなのに急に肩を叩かれ、驚く佐々木。叩いた本人も佐々木の驚き具合に驚いたようだった。
「なんだ、瀬戸か!」
「すみません、1人じゃこんな所危ないと思って……」
そう言われれば黙ってきてしまったと反省する。ごめんと苦笑いする佐々木をジッとみつめ、動かなくなった瀬戸。どうしたのかと思っていると、瀬戸は佐々木の顔を両手で包み、涙のあとを親指で拭った。
「せ、瀬戸?どうしたの?」
いつもと様子の違う瀬戸に、戸惑う佐々木。
「あの、佐々木さん。1人で抱え込まないでください。辛い時は俺がそばに居ますから。」
「え?」
瀬戸は急に何を言っているのかと、頭が追いつかない。
「今、すごく辛そうです。笑ってても、俺にはわかります。無理に笑わないでください。俺は……まだまだ実力不足な所もいっぱいあります。けど、佐々木さんを守りたいです。幸せにしたい。本当の笑顔でいて欲しいんです。」
必死な様子の瀬戸に、今言っていることは本心なのだと感じ、幸せにしたいと言われ、ドキドキしてしまっている。瀬戸は佐々木の両手をそっと握り、胸元まであげる。
「あなたが好きです。」
瀬戸はニコッと笑うと、佐々木の手の甲にキスをした。ストレートに好きと言われ、まさか瀬戸が自分に好意を持っていてくれたとはと驚く佐々木。
「俺、好きって、抱きしめたりキスしたりしたいっていう好きですから。」
もちろんそれ以上もね、とイタズラっぽく耳元で囁く瀬戸に、ずるいと思う。こんな時ばっかり男の顔になって。抱きしめてくる瀬戸を抵抗せず受け入れる佐々木。
告白された後みんなの所へ集合したのだが、佐々木と瀬戸がおらず美山に聞くと、先に帰ったとのことだった。そうかと、望月も美山に帰る旨伝えた。
(なんだ……佐々木帰っちゃったのか……)
出来れば2人で……と考えてた望月はため息をつき歩き始めた。帰る途中、ふと人がいるのが見えた。
(あれ……佐々木と瀬戸だよな……)
佐々木が抱きしめられている様子を見てしまった望月。
(なんだよ……アイツらってああ言う関係だったのか?)
こんな気持ちになるなんて、と、望月は自分の気持ちに気づいたようだが、何も言えずその場を立ち去った。
「瀬戸、ありがとう。嬉しいよ……でも……」
(でも俺は……瀬戸がこんなに想ってくれていても、望月さんを諦められないなんて……)
黙ってしまう佐々木に、瀬戸は笑顔でわかってますと一言。
「みんな心配してるかも。帰りましょう。」
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